専門誌では読めない雑学コラム
木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第46回

 これまで、たくさんのプロやレッスンプロにゴルフを教わってきましたが、誰もが非常に個性的でエネルギッシュでした。そうしたみなさんに教わったことは、技術的な素晴らしさ以上に、俄然やる気が出たことが大きかったと思います。

 それら数あるレッスンの中でも、「究極」と思えるものがいくつかありましたので、今回はそれらを紹介していきましょう。

 まずその前に「究極のレッスン」とは何ぞや、といった話から。

 例えば、プロ野球の巨人軍終身名誉監督である長嶋茂雄氏の指導にまつわるエピソードは、まさしく「究極」のヒントと言えます。

 長嶋さんと言えば、毎年キャンプに訪れて、選手を指導するのは恒例行事となっています。その中で、長嶋さんにあることをされたら"伸びる"という伝説があります。それは、長嶋さんに"触られた"選手です。

 長嶋さんは熱血指導のあまり、つい選手の肩や肘などに触れてしまうのですが、そうやって接触された選手は「成長する」というのです。いやはや、もはや"神様"といった扱いですよね。

 実はそんな"神様"的な扱いの方が、ゴルフ界にもいます。それは「世界の」青木功プロです。

 2年ほど前、沖縄のカヌチャゴルフコースに行ったとき、ちょうど青木プロがジュニアのレッスンをしていたのですが、オーナーの計らいで、私も間近で見させてもらったんです。それはもう、とにかくすごかったですね。すべてのクラブにカバーがしてあるんだもんって、そこかぁ〜、驚くのは!?

 青木プロのレッスンは、普段の気さくな語り口調で、実際に打ちながら解説していきます。アイアンを手にしてグリーンに向かって打つや、ピン方向にまっしぐら。ナイスオンかと思いきや、ちょっとショートしたりすると、すかさず「あれでショートかぁ。いやぁ〜、歳は取りたくないね」とぼやきます。

 パターは、フェースを立てる独特の打ち方ですが、これがまた、カップ目がけてシャープな転がりを見せます。長いパットゆえ、カップ手前で止まりそうになるや、すでに歩き出して「だから(グリーンが)重いって言っただろ」と、ひとり解説ショーです。

 いやぁ〜、素晴らしいですね。もう"生"の青木プロのプレー姿を見ただけで、うまくなった気分になりそうです。きっとジュニアのみなさんも、いい思い出になったことでしょう。

 世界的なプロと言ったら、タイガー・ウッズも外せません。全盛期のタイガーが成田でレッスン会を開催し、私はそれを見に行ったのですが、そのときもすごかったですね。

 レッスンの際、タイガーはインカムをつけて、最初からずっと喋りっぱなしでした。実技レッスンでは、30ヤードぐらいのアプローチから練習を開始すると、「次は50ヤード。次は100ヤード」と次第に距離を伸ばしていって、そう言っている矢先に、50ヤード、100ヤードの地点にボールがたまっていくのには驚きました。まるで、そこに整理して置いたみたいに、きっちりとボールが並んでいましたからね。

 ドライバーも強烈でした。当然のごとく、めちゃくちゃ飛びますから。しかしそれ以上に圧巻だったのは、短いアプローチです。

 50〜60ヤードのアプローチは、「通常60度のサンドウェッジでスピンをかけて、低く打ちながら2バウンド、あるいは3バウンドさせてピンにつけます」と言いながら、実際にポンポンと打って、ボールを2、3バウンドさせながら、カップの1m以内にすべて寄せていったのです。この人は、ロボットなの?

 おそらく、こういう人を見て、プロを目指したり、逆にプロをあきらめたり(世界の壁の厚さに呆然とした場合)するのでしょう。当然ながら、私は「アマチュアでよかった。ゴルフは趣味として楽しむだけにしよう」と悟りましたね。

 最後は、テレビの"名レッスン"でも有名だった故・林由郎先生(※)のレクチャーを少々。
※戦後復興期のゴルフ界を支えたプロゴルファー。日本オープン2勝、日本プロ4勝など。後進の育成にも尽力し、その門下生には、青木功やジャンボ尾崎らがいる。1970年代〜1980年代にかけては、アマチュアゴルファー向けのゴルフレッスン番組などで活躍。2012年、89歳で亡くなった。

 晩年の林先生は、習志野カントリークラブ キング・クイーンコースにいて、フロントに行けば、会えることが多かったです。気軽にサインをしてくださり、「クイーン(習志野CCの距離の短いコース)なら、まだ30台を出せるよ」と言っていました。

 レッスン取材にも気軽に応じてくれて、自慢の「打ったら、引く」アプローチを見せてくれました。そして、「脇は開かない。昔は脇に五銭玉を挟んで、それを落とさないように練習したんだ」と先生。しかし五銭って、いつの話ですか......。

 林先生は几帳面な性格で、トッププロのスイングを集めたスクラップブックまで作成していました。そしてその写真を見ながら、いろいろと解説してくれました。それには我々も「ほうほう、なるほど」と、感心して聞き入っていたものです。

 すると、スクラップブックの最後のほうに、当時の美人ゴルファー、ローラ・ボーの写真が出てきました。最初は「先生は女子選手のスイングも解説しているのか」と思っていたのですが、さらにページをめくると、またローラ・ボーの写真が......。

 それでこちらが、「ちょっとローラ・ボーの写真、多くないですか?」と聞くと、先生は照れながら「へっへ、これはサービスカットだな(笑)」と。そんなお茶目なところもありました。先生の長生きの秘訣はこれだったんですね。

 というわけで、「究極のレッスン」とは、それを見たり、触れたりするだけで、ご利益を賜れそうなもの。まさしく"神様ゴルファー"によるレッスンですね。現在のゴルフ界ならば、さしずめイ・ボミ選手といったところでしょうか。

 じゃあ、早速スクラップブックでもこしらえて、老後の楽しみにしましょうかね(って、それは話が違うような......)。

木村和久(きむら・かずひさ)
1959年6月19日生まれ。宮城県出身。株式をはじめ、恋愛や遊びなど、トレンドを読み解くコラムニストとして活躍。ゴルフ歴も長く、『週刊パーゴルフ』『月刊ゴルフダイジェスト』などの専門誌で連載を持つ。

木村和久●文 text by Kimura Kazuhisa