1945年に台湾に「進駐」してきた国民党が、民衆の信望を急速に失った大きな理由が「金に対する汚さ」だった。(イメージ写真提供:123RF)

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 台湾を長年に支配し、1月16日の総統選と立法院(国会)選挙では敗れたとはいえ、現在も台湾における一大政治勢力である国民党は、「世界一の金満政党」とされる。発端は、第二次世界大戦終了後に接収した日本関連の資産を「国家のもの」とせずに“着服”したことだった。国民党は現在の資産を166億台湾ドル(約573億4000万円)と公称しているが、現在進行中の主席(党首)選に立候補した李新却氏は、「実際には2300億ドル(約7944億7000万円)」と主張し、国民全員に1万台湾ドルずつ配分せよと主張した。

 1945年に台湾に「進駐」してきた国民党が、民衆の信望を急速に失った大きな理由が「金に対する汚さ」だった。日本の官僚などは撤収する際に、「ボールペン1本」まで帳簿を残したとされる。「役人とはそういうもの」との感覚があった戦前からの台湾住民は、やって来た国民党関係者に接して仰天した。本来は「当局の資産」であるはずのものを、構わず私物化していったからだ。

 そして国家、つまり中華民国のものになるべき資産の多くが、国民党の資産となった。国民党は1971年になると、資産運用会社の中央投資公司を設立した。同社は1995年に株式を上場したが、2007年には改めて全株式を買い取り上場を廃止した。つまり、同社の財務状況、ひいては国民党の資産状況は改めて分かりにくくなった。

 国民党は資産運用で得た利益を政治資金として使っている。国民党の政治資金は、台湾の他のすべての政党の政治資金の合計額の2倍以上はあるとされる。

 非国民党勢力からは、国民党が資産を不正に形成したとの批判が続いている。2000年に発足した陳水扁・民進党政権は国民党の資産清算を進めようとしたが、それほど成果は出せなかった。民進党政権ではあったが、立法院(国会)の与党は国民党だったという「ねじれ現象」があったからと考えてよい。

 今年(2016年)1月16日の総統選で、当選した蔡英文陣営は2015年の時点で、当選した場合には国民党の資産清算を進めると公約していた。しかも、国会選挙でも民進党の当選者は68人、国民党は35人だった。しかも、同問題で民進党に同調する可能性の高い新政党「時代力量」の当選者は5人、一方、国民党に同調する可能性の高い親民党の当選者は3人にとどまった。蔡英文新総統が国民党の資産問題に着手すれば、国民党はさしたる抵抗ができない可能性が高い。

 資産問題で「窮地」に立ちそうな国民党だが、3月16日になって「身内からの爆弾宣言」が発生した。党首選で出馬した李新却氏が、蘋果日報と聯合新聞という台湾二大紙に「国民党の資産は、実際には2300億台湾ドル。国民1人当たり1万ドル台湾ドルを配布して清算せよ」と主張する意見広告を掲載したのだ。

 「国民1人当たり1万ドル台湾ドル」とは、台湾の人口が約2300万人であることを念頭に置いた数字だ。国民党の資産の公称額については、疑問視する声も多かったが、2300億台湾ドルとまで言い切った人物、しかも国民党員はいなかっただけに、李氏の発言は注目を集めることになった。

 李氏の意見広告について、台湾メディアの自由時報は、インターネットでは「実現すればよいことだが、実現できるかね」、「そうは言っても国民党員が許さないよ」、「(主席)選挙に当選できないからね。苦し紛れに言い出したのさ」などと、否定的な書き込みが続いたと報じた。ただし、「2300億台湾ドルもあるはずがない」と主張する人は、あまり見当たらないようだ。(編集担当:如月隼人)(イメージ写真提供:123RF)