米女子ツアー今季6戦目となるファウンダーズカップ(3月17日〜20日/アリゾナ州)が現地3月17日に開幕する。

 アジアシリーズが終了し、アメリカ本土に戻ってきた米女子ツアー。今季で本格参戦11年目を迎える宮里藍は、「今年こそ、勝ちたい」と4年ぶりのツアー優勝を目標に掲げ、復活を誓う。

 昨季の宮里は、賞金ランキング77位。ツアー終盤に粘りを見せて、賞金ランク80位以内までの選手が得られる今季のシード権を土壇場で獲得した。昨年はそのシード権を逃して(一昨年、賞金ランク86位)、2012年に挙げた「1シーズン2勝」という資格でツアーに参戦していた。だが、その資格も昨季まで。もし80位以内を再び逃していたら、最終予選会に回らなければいけなかっただけに、実力でシード権を得た意味は大きい。宮里自身の自信にもつながったはずだ。

 さて、宮里が最後にツアー優勝を飾ったのは、2012年6月のアーカンソー選手権(アーカンソン州)。以降、およそ4年という長い期間、勝ち星から遠ざかっている。その原因となったのは、宮里のゴルフを支えてきたパッティングの不調だ。ここまでの間も、試行錯誤を繰り返しながら、なかなか浮上のきっかけがつかめなかった。

 しかし今季、シーズン開幕を前にして、宮里の表情は明るかった。苦しい状況が続いていた昨年9月、メジャー最終戦のエビアン選手権(2015年9月10日〜13日/フランス)で浮上のきっかけをつかんだからだという。

 振り返れば、昨季も苦しいシーズンだった。序盤戦ではまずまずの結果を残しつつも、中盤以降は5試合連続予選落ちを喫するなど、苦悩の時間が長く続いていた。

「昨年のテーマは、パッティングで自信を取り戻すことだったんです。でも、そのことを含めて、そもそも目標設定が曖昧でした。そのため、序盤戦では予選を通過していい方向にいっていたので、とにかく早く結果を残そうと、自分をどんどん追い込んでしまったように思います」

 だがそんなとき、「ふと気づいたことがあった」と宮里は言う。それは、「ゴルフは楽しむべき」ということだ。そして彼女は、その本来あるべき姿にもう一度立ち返ろうと決心した。それがちょうど、エビアン選手権の前だった。

 迎えたエビアン選手権、宮里は第一に「楽しむこと」を気持ちの支えとしてプレーした。するとそこで、自分らしくプレーするプロセスを再発見できたという。その結果、6試合連続の予選落ちを回避。38位タイという成績を残して、最終戦の出場権も獲得した。

 それからは、どん底の状態から完全に脱して、最終戦のCMEグループ・ツアー選手権では14位タイと健闘。今季のシード権を確保した。この実績がなければ、今季の米ツアーに宮里の姿はなかったかもしれない。そう思うと、宮里にとって、まさに昨季のエビアン選手権は"転機"だった。そして、そこで得られたものは計り知れないほど大きかった。

 浮上への手応えをつかんだ宮里はこのオフ、前年中にはアメリカに戻って、例年よりも早く始動。コーチで父の優(まさる)氏も合流して、アリゾナで2度目のキャンプを実施した。

 そのオフの調整で重点的に取り組んだことは、「原点に戻る」こと。つまり、ショートゲームを徹底的に磨くことだった。ここ数年のパットの不調は、得意のアプローチにも影響を及ぼしていたからだ。

「パッティングに不安を抱えているから、アプローチの際にも『寄せたい』と、余計にプレッシャーがかかってしまっていたんです。それに、日頃からパットの練習に時間を割く分、アプローチが下手になったような気もしてしまって......」

 昨季、好調なドライバーは飛距離も伸びて、フェアウェーキープ率は77%強をマーク。ツアー全体の26位と、非常に高い安定感を誇っていた。パーオン率も67%強と、ショットの精度は悪くなかった。とすれば、パットを含めたショートゲームに課題があることは、数字的にも明らかだった。

 遡(さかのぼ)れば、宮里が年間5勝を挙げた2010年、優勝への原動力となっていたのは、アプローチだった。絶妙なアプローチによって、勝利を手にした試合がいくつもあった。

 グリーン周りの、寄せ、パッティングは、まさしく宮里のゴルフの"要"なのである。ゆえにこのオフは、改めてショートゲームの練習を重ね、宮里本来の精度の高いアプローチを取り戻していった。

「パットが入らなかったとしても、アプローチでしのいで、ゲームを組み立てていくことは、すごく自分の中で落ち着くというか、これがやっぱり自分の"原点"だなって思います」

 2016年シーズンが開幕し、宮里はここまで4戦を消化。すべて50位台といまだ上位には食い込めていない。宮里が言い訳をすることはないが、そこには今季から『プレーヤーディレクター』を任されたことが、いくらか影響しているのではないだろうか。

 プレーヤーディレクターとは、ツアーの運営にも直接的に関わっていく選手のこと。昨秋、宮里はその立場に選手会の全会一致で選出され、年明けから本格的にその役目を果たしている。実はこの仕事に、宮里は思った以上に時間を取られている。これまでのトーナメント中にも、練習指定日にプレーヤーディレクターのミーティングが開催され、思うように練習ラウンドをこなせないことがあった。

 ともあれ、宮里自身に焦りはない。先のHSBCチャンピオンズ(3月3日〜6日/シンガポール)では、2日目にツアー2度目のホールインワンを達成するなど、復調への"予兆"を思わせる出来事もあった。

 まもなく始まるファウンダーズカップは、2012年、2013年と、2年連続で2位となった相性のいい大会だ。「プレーを楽しむこと」、そしてショートゲームの精度を上げることによって、原点回帰を果たした宮里藍なら、結果は自ずとついてくるはずである。それだけの期待が、今季はできる。

武川玲子●文 text by Takekawa Reiko