日本とドイツ、フランスが三つどもえの受注合戦を展開しているオーストラリアの次期潜水艦建造計画には、中国という「影の主役」がいる。イメージ写真。

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2016年3月15日、オーストラリアの次期潜水艦建造計画の共同開発先をめぐり、日本とドイツ、フランスが三つどもえの受注合戦を展開している。日本が選ばれれば、14年に安倍政権が定めた「防衛装備移転三原則」に基づく本格的な武器輸出の第1弾となる。日本政府が力を入れているのは、そのためだが、この受注合戦には「影の主役」がいる。中国だ。

次期潜水艦建造計画は、メンテナンス費用などを含め総額500億豪ドル(約4兆円)にも上る大型プロジェクト。現在運用中のコリンズ型潜水艦が老朽化し、2020年代半ば以降に退役時期を迎えることから、新たに潜水艦8〜12隻を調達する計画だ。

日本が売りこんでいるのは、海上自衛隊の「そうりゅう」型潜水艦をベースにした共同開発。三菱重工業などが建造する水中排出量4200トンの「そうりゅう」は、ディーゼル機関の通常動力型で、世界最高水準の静粛性を誇る。非大気依存推進(AIP)を搭載し、2週間の長期潜航も可能という。

三菱重工業の宮永俊一社長は先月、現地を訪問してトップセールスを展開。さらに地元有力紙に全面広告を出すなど、PRに務めている。海上自衛隊も4月、同型の潜水艦を訓練の一環として初めて豪州に派遣する。

これに対し、独造船大手TKMSは既存の2000トン級潜水艦「214」型の大型化を提案している。豪政府が長い航続距離を可能にする4000トン級の潜水艦を求めているためだ。「214」型は韓国でも採用されており、潜水艦輸出の実績や海外生産経験の豊富さも強みだ。

仏政府系の造船企業DCNSは、5000トン級の攻撃型原子力潜水艦「バラクーダ」の転用案を提示。「世界最先端」のステルス潜水艦技術を移転するとも申し出ている。ロイター通信は14日、「受注獲得に向け、ここ20年ほどで最大となる仏企業の代表団が派遣される」と報じた。

日独仏の受注合戦に割って入ったのが中国の王毅外相。中国メディアなどによると、2月17日、ビショップ豪外相との会談後に記者会見し、共同開発相手として日本も含め検討していることについて、「日本との軍事協力では歴史的な背景を考慮し、アジア各国の国民感情に配慮してほしい」とけん制した。太平洋戦争の旧敵国から武器を買うなどもってのほか、と言わんばかりだ。

「中国カード」はメルケル独首相も、いち早く使ったことがある。独メディアによると、同首相は昨年1月にアボット豪首相(当時)と会談した際、「日本が中国との関係を悪化させているのに対し、ドイツは政治的に中立の立場を維持できる」と語り、優位性をアピールした。仏政府高官も同様に日本の「チャイナリスク」を指摘したと伝えられている。

豪州にとって、南シナ海で着々と軍事拠点化を進める中国は、安全保障上の最大の脅威。中国を念頭に米国との軍事協力を深め、12年からは北部ダーウィンに米海兵隊がローテーションを組んで常駐している。その一方で、中国は鉄鉱石や石炭などの資源を輸出する最大の貿易相手国でもある。

豪政府は今年半ばには共同開発先を決める予定。しかし、単純に兵器としての性能だけでは選べない要素も多い。独仏側は、いずれも「現地生産方式を」を前面に打ち出しており、雇用創出を期待する豪国内の世論が後押ししている。中国の存在も無視できず、決定までには複雑な駆け引きが続きそうだ。(編集/日向)