あらゆる抗生物質が効かない耐性菌?

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あらゆる抗生物質が効かない不死身の病原菌が大流行する危機が目前に迫っている。世界の抗生物質の半分を中国が使っているが、中国国内でも最近、過剰摂取が批判されるほど使用量が増えているからだ。

抗生物質の使い過ぎは、やがて薬が効かない耐性菌の出現を招く。実際、中国南部ではあらゆる薬が効かない「スーパー耐性菌」が出現したという報道もある。世界保健機関(WHO)は2014年4月に「このまま手を打たないと、世界はペニシリンがなかった時代に逆戻りする」と警鐘を鳴らしていた。

児童約1500人の8割から複数の抗生物質検出

2016年2月下旬、中国の各メディアは、上海の復旦大学が発表した「子どもの抗生物質の過剰摂取」の実態報告を大々的に報道した。それによると、浙江省や上海市の小学校の児童約1500人の尿を調べた結果、全部で21種類の抗生物質が見つかり、うち約8割の児童から複数の抗生物質が検出された。

中国の抗生物質の使用量は、2013年の時点で年間16万2000トン。その時点で世界の半分を占めたが、現在はもっと多いとみられる。うち、家畜の疫病対策として飼料に配合される分が52%、人間の医療用が48%で、年間5万トン以上が水や土壌に排出されている。

復旦大学の研究者は「中国の子どもに肥満が多いのは、抗生物質を大量に摂取した家畜の肉を食べているからだ。尿の中の抗生物質の量が多い子どもほど肥満の度合いが高かった」と警告している。

もう1つの理由は、中国の医師が抗生物質を過剰に投与する傾向にあることだ。2014年4月にWHOがまとめた報告書によると、「中国人の約3分の2が抗生物質は風邪とインフルエンザの治療に有効だと考えており、また3分の1が頭痛にも効くと信じている」と嘆いている。ちなみに、風邪とインフルエンザはウイルスが原因だから抗生物質は、ホントは効かない。

同報告書はまた、「こうした抗生物質の乱用は、現在は治療可能な病気でも病原菌の薬に対する耐性が強くなるなど、世界的なリスクになる。(スーパー耐性菌が出現すれば)中国では、2050年まで年間の死者が最大100万人に達する予測もある」と中国政府に警告した。

肺炎や中耳炎、淋病の抗生物質が効かなくなった

実際、欧米では肺炎に効果があった抗生物質カルバネムが効かない耐性菌が増え、現在、一部の国では半数の患者に効果が出ない状態だ。また、淋病の治療に使うセファロスポリンも効かなくなり、世界的に淋病が急増する原因になっている。日本でも年間50万人がかかる中耳炎に耐性菌が増えた。

こうした中、2015年11月、国際医学誌「ランセット」が衝撃的な論文を発表した。中国・広州にある華南農業大学の劉建華教授らの研究チームが中国南部で、あらゆる抗生物質が効かない、非常に致死率の高い「スーパー耐性菌」を発見したというのだ。

抗生物質の中には「ポリミキシン」という「最終兵器」といわれる薬がある。ポリミキシンは、殺菌作用が非常に高い代わりに人体の細胞まで破壊するため、重い聴力障害や神経障害の副作用がある。ほかの抗生物質が効かず、命を救うにはこれしかないというギリギリの時まで使うことは稀だ。その「ポリミキシン」さえ無効にするパワーがあるという。

この細菌は、家畜市場の肉のサンプルから15〜20%、肺炎患者の便のサンプルから1.2%の割合で見つかった。中国の1地域に封じ込めることができるか、世界の運命がかかっている。