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◆今までとは一味違う最新の「AI」たち

 これまでも、AIは何回かブームになったことがある。人によっては「2001年宇宙の旅」の「HAL9000」を思い出したり、「AI将棋」のようなゲームソフトを思い浮かべたりするだろう。

 とはいえ、“人間の知能はコンピューターで再現/代替できる”という確信に基づいて研究が進められてきたAIは、しかし、これまではその期待を裏切ってきたのが現実だ。

 しかし、ここ最近の「AIブーム」で名前が登場するgoogleの「ドライバーレスカー」(自動運転カー)や、囲碁の名人を破った「AlphaGo(アルファ碁)」、あるいは人の感情を理解するロボット「Pepper」などを見ると、何かひと味違うものを感じる。これまでのAIを遥かに超える能力を感じさせ、これまでとは違う期待が膨らむのだ。

 そもそも、今回のブームの最初の火付け役は、IBMの「Watson」という人間の自然の言葉に応答するシステムだった。2011年2月16日、「Watson」はアメリカの早押しクイズ番組「Jeopardy!」で人間のクイズ王に勝利し、大きな話題になったのである。

 これらのAIは、従来のものと一体なにが違うのだろうか?

◆「総当り」ではない思考を可能にした

「Watson」は、微妙なニュアンスや風刺、謎かけなどが含まれる自然言語による出題者の質問を、正確に理解し、答えを瞬時に導き出すことができる。

「ドライバーレスカー」は、運転に必要なあらゆる情報(位置情報、周辺の車両、歩行者、信号/標識、障害物)を確認し、判断し、ハンドルやアクセル、ブレーキの操作を実行する。

「AlphaGo」は、一手ごとに250通りの選択肢が次々に展開される膨大な囲碁の打ち手の中から、最善に近いと考えられる打ち手を、総当り的な探し方ではない方法で導き出す。

 これらはまるで、人間だけが持つ、文脈や行間を読み取る能力、変化するさまざまな状況への柔軟な対応力、そして、勝負の形勢を変える妙手のひらめきのような直観力を、コンピューターが獲得したように見える。それもそのはず。これまでのAIのように、決まった枠組みや手筋を力任せにすべて試して答えを見つけ出す方法では、自然言語への応答や一般道路での自動運転、囲碁の名人を破ることはできないからだ。

◆学習を重ねて知恵の精度を上げていく

「Watson」も「ドライバーレスカー」も「AlphaGo」も、結局のところ、ビッグデータを検索し、見当をつけて、一番もっともらしい答えを超高速で導き出す。ということを行っている。

 ビッグデータは、過去の新聞記事や聖書や、現在の市場概況やインターネット上の“つぶやき”や、スマートメーターや車載端末などのセンサーから発信されるデータだったりする。「Jeopardy!」に出演したときの「Watson」の場合、書籍100万冊分の自然言語データを蓄え、そのデータを基に3秒以内に答えを導き出すことで二人のクイズチャンピオンを打ち負かした。

 重要な点は、決して全文検索をしているわけでも、すべての可能性を総当りで調べているわけでもなく、限られた時間内でもっとも“確からしい”答えを提示するという方法を取っていることだ。そして、応答の回数を重ねていくことで、その“確からしさ”を、どんどん向上させていく学習能力を持っているということなのだ。

 つまり、学習を重ねることで、知識を増やし、知識が増えることで、より良い知恵を生み出していく仕組みを持っているということだ。

◆進化の果てにあるもの

 自律的に学習を重ねていくことで、コンピューターは人間の関与がなくても、どんどん進化していくことが可能になった。

 常識推論が可能になったことで、AIは起こりうる可能性を無限に計算を続けなければならないという『フレーム問題』の呪縛から開放され、臨機応変に判断をしていくことができるようになった。