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●VIAの戦略も発表 - スマートフォンの次は自動車が中心に
台湾VIA Technologiesは3月14日、都内で記者説明会を開催し、JapanTaxiとの協業を発表した。VIAによる日本での発表会はかなり久しぶりの事で、それもあって本国からRichard Brown氏も来日して、改めてVIA自身の戦略まで含めての発表となった(Photo01)。

VIA TechnologiesがPCマーケットから撤退したのは、公式にはIntelとのクロスライセンスが失効した2007年となるが、実際には2004年頃あたりまでで新製品の投入を中止しており、2005年以降は既にPCマーケット向けの製品を投入していない。実はこれより前の2000年代前半から、同社はEmbedded向けに少しづつ方向転換を行っており、2005年以降はこれが前面に出てきた形だ。同社はもともとFablessでChipsetを製造していた会社だが、CyrixとCentaur Technologyを買収してCPUを、S3を買収してGPUをそれぞれ手にしており、更に2001年あたりからMini-ITXを初め各種の組み込み向けマザーボードを提供してきている。Embedded方向に転換後は、これらをベースにしたPlatform、それを利用したSystemや、これに対応したSoftwareを組み合わせ、現在はSolutionを提供する会社になっている(Photo02)。

その同社が最近注目しているのが自動車向け(Photo03)である。今はスマートフォンがマーケットの中心に居るが、今後は自動車がその中心に来る、という考え方である。ただ同社は、いわゆる自動車向けのシステム(ECUだったりEV/HVだったりADASだったりInfortaimentだったり)を直接手がけているわけでは無い。自動車業界といってもその裾野は広く、そして最近新しいトレンドが生まれつつある(Photo04)。

ここでBrown氏が指摘したのは、自動車の所有に関する問題である。UberやLyftを例に挙げるまでもなく、世界中でカーシェアあるいはライドシェアという、新しい車の使い方が急速に普及している(Photo05)。今後自動運転車などが登場するようになると、益々「自分で車を所有しない」事が加速して行くと考えられる、としている(Photo06)。

●周辺機器などを統合する車載向けシステム
さてここからはVIAのソリューションの話である。元々同社はCentaur Technology(x86)とWonderMedia(ARM)という2つのSoCメーカーを抱えており、最近はNXPのi.MX6シリーズも採用する形でラインナップを増やしているが、やはりSoCメーカーを抱えているというのはカーネルやドライバを扱う点で有利であり、この利点を生かした形でLinux/AndroidのBSPや、その上で様々なToolkit、あるいは最適化といったサービスを提供できるとしている(Photo07)。今回同社が発表したのは、AMOS-825という車両向けシステムである(Photo08,09)。車載向けということで本体と7inchタッチパネル付き液晶がセットになった形のモデルであり、更にWireless/BTや、将来的には3G/LTEの対応も可能としている。このモデルは現状ではJapanTaxi向け製品ということになるが、これとは別に同社は航空機やバス向けのエンターテイメントシステム、あるいは車両の運行管理システムなども既にソリューションとして提供しており、こうしたソリューションの経験が生かされた形になっている(Photo10)。今回はJapan Taxiとの協業で、これを生かす事ができたとした(Photo11)。

次に、そのAMOS-825の特徴をVIA Technology JapanのCody世羅氏(Photo12)が簡単に説明された。今回のシステムは、JapanTaxiの提供するIP配車システムとカーナビ、更にメーターやサイン、プリンタ/決済機などをまとめて接続できるだけの性能を、車載環境で利用できる様にしたものである(Photo13)。システムはPhoto14の様に必要なI/Fを全て搭載したファンレス構造である。ちなみにプロセッサはNXPのi.MX6Quad(1GHz)で、メモリは1GB、Storageは16GB(eMMC)が搭載されている。またGPSとWi-Fi/BTが利用可能で、将来は3G/LTEも搭載する事を考えているとの事。周辺機器(プリンタやサインなど)はUSB接続の形となっている(Photo14)。USBポートが全てロック可能、というあたりは振動の多い車載向けを考慮したとの事だった。

●音声認識も統合予定
これに続き、JapanTaxiの山本智也氏(Photo15)より、JapanTaxi側の開発意図が説明された。同社の親会社はタクシー会社の日本交通(株)であるが、この日本交通の子会社として情報部門に携わっているのがJapanTaxiである。同社が開発した有名なアプリが「全国タクシー」である(Photo17)。

さてこのJapanTaxiは単にアプリを作るだけでなく、タクシーの車載システムの開発も行っている。というか、こうしたものを自社で作ろう、というのがどうもJapanTaxiの設立の動機だったようだ(Photo18)。ご覧の通り様々な周辺機器やシステムが、これまでは個別に設置されて動作していたらしいのだが、これを統合しよう、ということでAIOS(All-In-One System)の開発を手がけたのだとする。先の記事にもある通り、全国タクシーそのものはWindows Azure上で動作しているので、タクシー側はクライアントとして様々なデータをAzureに送り出すと共に、Azureからのデータ(配車指示など)を表示する機能が必要になる(Photo19)わけだが、これを実行するのがAMOS-825という形だ。

ではそもそも何でAIOSを作ろうと思ったかというと、以前のタクシーの中身はこんな具合(Photo20)になっており、そもそも操作の統一性が無いとか、見た目にも汚いとか、色々問題が多かったとの事。またそれぞれの機器は別々のメーカーがそれぞれ設置してゆくだけで、コスト面でも高くついており、それであれば自分達で作れば、最悪金額が同じでもノウハウが貯まるのでやろう、という決断だったそうだ。実際には全部のシステムをまとめて、という訳でなく順次機能を追加する形になっており、タクシーメーターの統合までが現在完了、次は音声認識だそうである(Photo21)。

続いて同じくJapan Taxiの青木亮祐氏(Photo22)より、もう少し突っ込んだお話が聞けた。そもそも同社は全国タクシーと連動する形で、IP配車システムをAndroidをベースに開発した。操作性を考えるとAndroid Tabletになるのはまぁ当然で、当初はAIOSをTabletをベースに構築するつもりだったそうだ。ところが夏場になると、Tabletが熱暴走してしまうという問題がでたそうだ。そもそもコンソールパネルそばだからただでさえ夏場は暑い上、アプリケーションをフルに動かすからCPUの発熱も凄い。結果、夏場になると勝手に落ちる(Thermal Shutdownを発生する)とかいうことになり、これを何とかしないとまずいという話になった。そこで青木氏は色々なメーカーのTabletをあたったものの、やはり構造的にTabletでは無理があるという話になった。VIA TechnologiesもViega Tabletという産業向けTabletを提供しているが、これでも無理だったそうだ。ついでに言えば、AIOSを全部載せるには、性能的にも既存のTabletだとちょっと性能不足な面があったらしいが、性能を上げると更に発熱が増えるので、これ以上上げられないという問題もあった。

ところがVIA TechnologiesはViegaの代わりにセパレート方式での提案をJapanTaxiに行い(唯一VIA Technologiesだけがセパレート式の提案をしてきたそうだ)、これを検討したところ良さそうだという結論が出て、そこから僅か半年でシステムが完成したのだという。当初はAMOS-820ベースでの提案だったが、これでは処理性能が足りないということでDual CoreからQuad Coreに切り替えたことで処理性能も要求を満たしたし、液晶部はプロセッサなどを搭載しないので最大70℃までの温度範囲をカバーできる様になった事で、夏場の問題の解決の目処も立った。

また、細かいところでも同社のサポートには非常に満足だったという。当初使っていたTabletはAndroidそのままなので、ステータスバーをスクロールダウンしてカスタマイズしたり、ナビゲーションバーでタスクを切り替えたりホームに戻したり、なんて事が可能であり、実際そうした事をしたあげくIP配車アプリを消したり、自分のアプリケーションを登録したりなんて使われ方をした場合もあったそうだ。そこでステータスバーには輝度調整しか乗せない(しかも調整範囲も絞り込む)とか、ナビゲーションバーを無効にするなどの対応をVIA Technologiesの方で行ってくれたとの事。あるいはフォントを(デフォルトの中華フォントから)JapanTaxiが指定した独自フォントに差し替える作業も1日で済んだそうで、こうしたカスタマイズのきめ細やかさや反応の速さに非常に感謝しているとの事だった。

(大原雄介)