「中高年になると筋力の他に失われるのが、平衡感覚。よく何もないところでつまづいてしまうのも、体のバランスがうまく取れていない表れなのです」
 こう語るのは、医学博士の志賀貢氏。これまで様々なED解消法を紹介してきたが、実は最近の研究でセックスが“平衡感覚”と関係あることも分かってきたという。
 「特に男性は“上になる”ことが多いため、体のバランスが悪いと疲れやすく、動きもぎこちなくなってしまう。結果的に、中折れなどのEDを招いてしまうのです」

 付け加えると、昨今は若い男性の平衡感覚の低下も囁かれている。
 「平均台を上手く歩けない。片足立ちが長く続かないのです。今の子供はケンケンすら出来ない子が多いと聞きます。日本人は年々、身体のバランスが悪くなっているといっても過言ではありません」
 原因は色々考えられるが、やはり長時間のデスクワークやパソコンやスマホの使用により姿勢が悪くなり、筋力も低下していることが大きいという。

 では、平衡感覚を取り戻すにはどうすればいいのか。
 「一番簡単な方法は、バランスボールを使った運動です。運動といっても、筋トレのようにハードではありません。例えば、デスクワークも椅子ではなく、バランスボールに座りながら行うことで、自然と平衡感覚はよくなります」

 実際にやってみると分かるが、平衡感覚が低下していると、バランスボールの上に座っているだけで大変。なんとか姿勢を維持しようと、筋力も動員せざるを得ない。
 「バランスを取ろうとする自然な動きの中で筋力も使われるため、トレーニングになるんです。また、そうやってバランスボールの上で“いい姿勢”を保とうとするだけで、体幹も鍛えられているわけです」

 もしバランスボールがなければ、こんな方法もある。
 「テニスボールでも野球ボールでも構いません。片足立ちになりボールを数10センチほど宙に投げて、それをキャッチするのです。両足立ちなら簡単でも、片足になると難易度が増します。これも平衡感覚を鍛える訓練となります」

 身体のバランスがよくなると、姿勢もよくなり、セックスも強くなる。
 「その影響が最も現れるのは、正常位の時です。自分の両手で身体を支えて腰を使う、あの体位はまさに体幹、バランスを使う運動。若い頃は、正常位で激しくピストンできた方も多いと思います。それは平衡感覚に問題がなく、自分の身体を自分が思うように動かせたからです」

 逆に、加齢とともに平衡感覚が失われると、正常位の時、自分の身体がグラつきやすいのだ。
 「余計な体力も消耗してしまいます。精力が衰えているのに、正常位で無駄な動きが多ければ、なかなか射精まで至らない。結局、快感よりも先に身体が疲れてしまって、ペニスも勢いを失くしてしまうのです」

 精力を取り戻すことも大事だが、平衡感覚を養うことで楽にセックスをすることも、中高年向けのテクニックと言えるだろう。

志賀貢
医学博士。内科医として診療する傍ら、260作以上の小説やエッセイを執筆。また、性感研究の第一人者で『かなりHな夜の教科書』(河出書房新社)など、医学的見地に基づいたセックス&口説き術にまつわる著書も多数ある。