運動を毎日15分する人は死亡率が14%減る(shutterstock.com)

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 WHO(世界保健機関)の「世界保健統計2015」によれば、日本人の平均寿命は84歳で世界一、女性は87歳の第1位、男性は80歳の第6位だ。ウオーキングなどの適度の運動は、アンチエイジング(抗老化)の強力な推進力になる。

 セデンタリー(Sedentary)という言葉を知っているだろうか。座りっぱなしで身体を動かさないことだ。座っている時間が長い人は、病気になるリスクが高い。座りっぱなしは寿命を縮める。

 一方、適度の運動は、脂肪を減らし、筋肉を増やすので、さまざまな病気のリスクを下げ、ミトコンドリアの質を良くし、アンチエイジングに役立つ。1日わずか15分の軽い運動でも、寿命が延びる。そんな研究のエビデンスが次々と確認され、グローバルスタンダードになっている。

座っている時間が長い人ほど、がんになりやすい

 日経トレンディネット(2015年4月28日)によると、2014年にJ Natl Cancer Inst.は、406万8437人を対象に「がんとセデンタリーの因果関係」を詳しく調べた。発表によれば、セデンタリーが1日2時間増えるごとに、大腸がんの発症リスクが8%、肺がんの発症リスクが6%高くなることが確認された。

 米国のNHANES(全国健康栄養調査)を解析した研究によれば、1988年から2010年にかけて、BMI(体重を身長の2乗で割った肥満度指数)が毎年0.37%ずつ増え、米国人の肥満は年々進んだ。だが、この22年間で摂取カロリーは増えていないものの、体を動かさない時間は、女性が19.1%から51.7%へ、男性が11.4%から43.5%へと急増。また、摂取カロリーが同じでも、肥満の人ほど座っている時間が長かった。

 慶應義塾大学医学部の坪田一男教授(日本抗加齢医学会理事長)は「セデンタリーは、タバコと同じくらい身体に悪く、がんや心血管障害などの命にかかわる病気の原因になる。WHOは、2012年に1日10時間以上座っている人は4時間以下の人に比べて病気になるリスクが40%も高いと発表した。血行が悪くなれば、交感神経が緊張し、エネルギー消費が低下する」と指摘する。

 これらのエビデンスから明らかなように、長時間じっとしているリスクは計り知れない。 だが、毎日、デスクワークに追われ、運動不足に悩んでいる人は少なくない。対策はないだろうか?
1日15分、ウオーキングすれば、寿命が3年延びる!

 たとえば、米国のシリコンバレーの企業では、立ったまま仕事ができるスタンディングデスクが流行している。日本のオフィスにも少しずつ浸透しつつある。あなたも、近々スタンディングデスクに向かってパソコンを叩いているかもしれない。

 坪田教授は「NEAT(Non Exercise Activity Thermogenesis)、つまり運動以外の日常での活動量が大切。きちんとした運動でなくても、歩く機会を増やし、セデンタリーの時間を減らすだけでも肥満を防げる。少なくとも1〜2時間に1回は席を立ち、手足を動かしてほしい」と勧める。

 信州大学大学院医学系研究科スポーツ医科学講座の能勢博教授によると、「肥満、高血圧、糖尿病などの生活習慣病、がん、うつ病、認知症のリスクがすべて運動によって低下する」と話す。台湾の国家衛生研究院が41万6175人を対象に行なった調査でも、1日15分の運動で大きな効果が期待できることを確認している。

 また、2011年10月に医学雑誌『ランセット』は、運動で寿命が延びる事実を医学的に示す実証研究を発表した。研究によれば、ウオーキングやジョギングなどの中程度の運動を毎日15分する人は、運動しない人に比べて病気による死亡率が14%減り、寿命が3年延びる。1日90分までは、運動時間が15分増えるごとに死亡率が4%ずつ減り、毎日90分運動する人は運動しない人に比べて死亡率が35%も低い。

 さらに、細胞中のミトコンドリアの研究によると、運動不足は身体の老化を早めることが分かった。ミトコンドリアは、酸素を使ってATP(アデノシン三リン酸)という細胞を動かすエネルギーを作り出す。だが、運動不足になれば、細胞内でATPが過剰になるため、ミトコンドリアは酸素と反応して活性酸素を発生させる。つまり、運動不足によってATPのニーズが減ると、ミトコンドリアの数も減り、質が悪くなる。その結果、老朽化したミトコンドリアは、多くの活性酸素を発生させ、身体の老化が早まる。

 一方、適度の運動をすると、ATPが効率よく消費され、ミトコンドリアの新陳代謝が活発になる。ジョギングやウオーキングなど有酸素運動によって、酸素の消費が多くなるため、ミトコンドリアの質が良くなり、活性酸素が大幅に減るのだ。

 いくら忙しい人でも、たとえば家から駅まで速歩きで8分なら、往復で1日16分は歩ける。通勤ウオーキングをする時は「運動しているぞ!」と強く意識すれば、効果が高まるという研究もある。どうしても運動する時間なければ、エレベーターを使わず、階段を登るだけでもいい。マンションなどの非常階段を上り下りすれば、股関節のトレーニングにも最適だ。少しでもできることから身体を動かしてみよう。
(文=編集部)