経済成長が鈍化するなか、産業構造の転換を政府主導で大々的に進めている中国。急成長を支えた製造業も、これまでとは異なる形によって中国経済をけん引することが求められている。中国メディア・海外網は12日、中国が「製造強国からまだどれほどの距離にあるか」とする記事を掲載した。

 記事は、北京大学国家発展研究院の姚洋氏に対するインタビューを紹介。今年の「両会」(全人代と全国政治協商会議)で発表された「政府工作報告」を踏まえ、中国製造業が進むべき道についての姚氏による見解を伝えた。

 姚氏は、製造業が依然として中国経済の屋台骨となるとしたうえで、昨今急速に成長し、中国政府も重要な産業と位置付けているインターネット産業との関係について言及。「アリババや騰訊は素晴らしいが、それが中国のすべてではない。もし製造業を捨ててしまえば、中国は根幹を失うことになる」と論じている。

 そして、屋台骨であり続ける中国製造業の発展については、米国の「断崖のようなイノベーション」ではなく、ドイツの方式をモデルにすべきと提唱。「米国では1つの新たな発明が往々にして1つの業界を破壊し、雇用を消す。それゆえ、米国社会には少数の富裕者と大多数の貧困者という2極分化が生じた」とする一方、ドイツは「既存の技術的基礎に対する革新を続けて高みに立つ。そして、技術の進歩と同時に雇用が拡大し、分厚い中間層が生まれ、社会が安定するのだ」と評した。

 さらに、ドイツの製造業には「匠の精神を持った技術者」の育成という重要な経験があると指摘。「匠の精神」を提唱するうえで真っ先にやるべきことは「工業労働者の社会的地位を高めること」であり、社会的地位や給与水準を保障する等級制や、技術学校体系の整備が必要であるとした。また、「労働者を低レベルの職業とみなす国に希望はない」と論じ、「農民工」という言葉を使わないようにする動きを中央レベルから始めることを求めた。

 「匠の精神」を育むというドイツ製造業の方式に、中国製造業の未来を見出したことは誤りではないだろう。「モノなど作れて当然。大した仕事ではない」といった社会の見方を改め、モノづくりやモノづくりに携わる人へのリスペクトを生み出していくことは、彼らのモチベーション向上につながる。日本の「匠」にモノづくりの真髄を学ぶのもいい。

 ただ、社会主義市場経済という日本、米国、ドイツとは異なる「中国らしい」政治経済、社会体制のなかで、どうやって「匠の精神」を生む土壌づくりを進めていくかについてはよくよく議論をする必要があるだろう。今年の「両会」の政府報告書には「匠の精神」が盛り込まれた。これまではボリュームで世界に誇ってきた中国製造業が、文化的、精神的な面において「世界に誇れる中国のモノづくり」となる日は、やって来るだろうか。(編集担当:今関忠馬)(イメージ写真提供:123RF)