『カルト村で生まれました。』高田 かや 文藝春秋

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"カルト"という言葉を聞いた時どんなことが頭に浮かびますか?

 教祖様を崇め奉り、怪しい礼拝や、監禁、マインドコントロール......こういったものを連想する人が多いのではないでしょうか。本書『カルト村で生まれました』はカルト村で生まれ育ち、19歳の時に村を出て以来、"一般"(村以外のことをこう呼ぶ)で暮らす女性、高田かやさんがカルト村でのリアルな生活を優しいタッチのイラストで描いたコミックエッセイです。

 本書で登場する"村"とは農業を基盤とした生活共同体です。
村の大きな特徴は、以下の5つ。

子どもは親と離れた村で集団生活
食事は1日2食、昼と夜だけ
体罰は当たり前
なんでも共有
お小遣いがない

 食べ盛りの小学生時代、村のこどもは朝ごはんを食べないので学校で具合が悪くなることもしばしば。時には帰り道で咲いているツツジの花はもちろん、草むらで雨に濡れているお供えのお菓子を盗み食いしたこともあったといいます。

 朝食なしの生活に加え、叱られた時の罰として昼食・夕食抜きは当たり前、ひもじい思いをすることが多い一方、村の食堂で出される食材は村で生産されている無添加・有機栽培のものばかり。献立には季節の野菜が多く登場し、おやつのプリンは鶏舎で飼われている鶏の有精卵を使った贅沢なものであったそう。

 そして日常的に行われた体罰。世話係という子どもの面倒をみる大人に叱られるときはいつも平手打ちを受け、お風呂で騒いだ子は裸で道路に立たされます。「むかつく」、など汚い言葉遣いをした子は平手打ち&髪の毛を捕まれ壁に撃ちつけられることも。甘えたい盛りに親と離され頼れる大人もおらず、自律神経の乱れた高田さんは小学校卒業までおねしょが治らなかったそう。

 平成の話とは思えない衝撃的なエピソードが並ぶ中、一番印象的だったのは、ペット禁止の村に懐いてついてきたネコを高田さんが連れて帰ってきたときのこと。いつもニコニコ優しい村人のお兄さんに事情を話すと「ネコは鶏を食べるから村では飼えないんだよ」との答え。仕方なくそのネコを村人に託し、宿舎に戻る高田さん。後に友達から「あのあとお兄さんがネコの首を絞めてた、ネコがもがいてた」という衝撃の事実を知る高田さん。次の日その辺りを調べてみると血のあとのようなものが......それ以来村に動物を連れて帰ることは2度としなかったといいます。

 さて、悪い部分ばかりが印象的ではありますが、村の生活はお正月前のお餅つきや夏のお祭り、花火大会など四季の様々な行事を大切にしていました。著者の高田さんは村を出た現在も季節の移ろいや天候には敏感に反応し、手作りのものを多く食べる生活をしているといいます。そして子どものころは森に囲まれた自然豊かな村で探検や秘密基地の制作など、外遊びを存分に楽しんだそう。

 私たちが生活している"一般"では信じられないような価値観で、欲のない世界を目指し自給自足の共同生活を営んでいる"村"での生活。今現在もそうしたカルト村で暮らすこどもたちが日本各地に存在します。普段知ることが出来ないその内側を、ちょっと覗いてみませんか。