人vs人工知能。多くの関心を集めている、米グーグル傘下の人工知能(AI)開発ベンチャー「ディープマインド」(英国)の囲碁ソフト「アルファ碁(AlphaGo)」で、思わぬ現象が発生した。中国語での表記が「阿爾法狗」、つまり「アルファ犬」でほぼ定着した。いったい、どういうことなのか? (「〓」は「石」の下に「乙」)(写真は北方時空の12日付報道の画面キャプチャー)

写真拡大

 人vs人工知能。多くの関心を集めている、米グーグル傘下の人工知能(AI)開発ベンチャー「ディープマインド」(英国)の囲碁ソフト「アルファ碁(AlphaGo)」と、世界トップクラスの韓国人プロ棋士、李世〓(イ・セドル)九段の対戦だが、中国では「名称」について、思わぬ現象が発生した。「AlphaGo」の漢字表記が「阿爾法狗」、つまり「アルファ犬」でほぼ定着した。いったい、どういうことなのか? (「〓」は「石」の下に「乙」)

 中国では、外国語の固有名詞を表す際、漢字を用いて音訳する場合が多い(解説参照)。ギリシャ文字の「アルファ」は、「阿爾法」と書くことがすでに一般的。問題になったのは「Go」の部分だ。日本人ならば「碁」の英語表記とすぐわかる。そもそも、囲碁が西洋に広がったのは日本からだった。英語でも「Go」と書かれる。だからこそ「AlphaGo」の名称ができた。

 中国語で囲碁は「囲棋(ウェイチー)」と呼ばれる。「碁」はもともと「棋」の異体字(同じ意味の文字だが形が異なる)だった。日本では「碁」と「棋」が別の文字として扱われるようになったが、中国では「碁」の文字がすたれ「棋」に統一された。しかも、発音は「Go」とは大きく違う。そのため、「Go」が「囲碁」を指すとは気づかず、発音がほぼ一致する「狗(ゴウ)」で表記したようだ。

 中国起源、あるいは中国で基本が完成された文化が、日本経由で西洋社会に伝わった例はかなり多い。例えば「味噌」だ。英語では「Miso」。中国人はときおり「してやられた」と悔しさをにじませ、「起源は中国だ!」と指摘する。しかし、一方では「自分たちの文化をあまり重視していなかった。世界に広める努力も不足だった」といった反省の意見も、さかんに発表される。

 「阿爾法狗」と李九段の対局では、最初は「相手は犬か?」ということで「AlphaGo」を“見くびる”雰囲気もあったという。ところが李九段がまさかの3連敗。13日の第4戦で勝利したことで「人類」が雪辱をやや果たしたが、多くの中国人は「AlphaGo」の強さに舌を巻いた。

 「AlphaGo」が「犬」のように扱われたことで、北方時空のように記事に「犬の写真」を添えたメディアもある。ただし一部メディアは、対局が始まってから「日本語の『碁』」に由来する」、「以後は当初、欧米社会に『日本の国技』として紹介された」などと、「Go」についての解説を始めた。

**********

◆解説◆
 中国では囲碁の人気・関心が高い。古来から文化人のたしなみのひとつとされてきた。思考能力を使って対戦する競技を「マインドスポーツ」というが、中国にとって囲碁は、「マインドスポーツとしての国技」と言ってよい。「起源は中国」と誇りをもって語られることが多いが、それほど排他的な雰囲気はなく、むしろ日本や韓国で囲碁が盛んなことを歓迎し、プロの対局を楽しむなど、「心のゆとり」を感じさせる状況だ。
-------------
 中国語では外国の固有名詞が漢字を用いて音訳される場合が多いが、地名の場合には意訳も用いられる。太平洋にあるミッドウェー島は「中途島」と完全意訳。ニュージーランドは「新西蘭(シンシーラン)」と一部が意訳だ。(編集担当:如月隼人)(写真は北方時空の12日付報道の画面キャプチャー)