甘利前大臣の疑惑追及に“キレ気味”答弁の安倍首相(youtubeより)

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 「キレ気味社会」――。国会や演説の場で、やたらと声を荒げる最近の政治家を見ていると、そんな言葉すら思い浮かぶ。

 たとえば、2月3日の衆院予算委員会で、安倍晋三首相は、民主党の玉木雄一郎議員の財政再建に関する質問にヒートアップし、以下のような答弁をした。

 「ああいう話をしているから民主党政権は一銭も財政再建できなかったんですよ、みなさん! 我々は10兆円ですね、10兆円! 民主党が立党されてから随分たつんですが、議論して何か成果出ました? 何も出ていないんですよ!」

 毎日新聞も3月8日の夕刊で、この答弁のキレぶりについて紹介しているが、一国の長である首相がこのようにキレているのを見ると、社会における常識的な振る舞いの価値観が崩壊し、穏健な人が損をする社会に近づいているのではという気にすらさせられる。

 移民排斥を訴える米大統領選共和党候補のドナルド・トランプ氏や、元大阪市長の橋下徹氏もそうだが、このようなタイプの政治家が支持を集める背景には、一般大衆の「強権的な発言者に賛同することで、自分のストレスも解消させたい」という欲求が隠されているのかもしれない。

安倍首相は職務復帰の理想的なモデルケース?

 しかし、このキレ気味答弁、健康問題で短命に終わった第一次政権時代は気弱な印象だった、その姿と比べてみると、キレたいときはキレてしまえと開き直ったことが、安倍首相の精神衛生面にいい効果を及ぼし、政権の長期化に奏効している節もあるから、いっそう始末に負えない。

 うつ病の問題について多数の著書がある岩波明氏の『心の病が職場を潰す』(新潮新書)にも書いてある。

 第一次政権における安倍首相の健康状態は、2007年8月から周囲に隠せないほど悪化し、夜の会食の予定は「おかゆしか食べられない」と次々と取り消しに。同年8月19日から25日のアジア歴訪の際には、時間があればホテルで横になって点滴を受けて、目は虚ろ。帰国後も不眠のため、夜中に公邸の庭でひとり佇む姿も目撃されていたのだ。

 その状態から現在の意気軒昂とした調子への復活劇は実に見事で、いわば安倍首相は、「休職後の職務復帰の、理想的なモデルケースなのでは?」と思ってしまうほどだ。
 
他者の評価をあまり気にせずマイペースで仕事ができる人

 2012年に発足し、今年5年目となる第二次安倍政権――。定期的にゴルフをしたり、この年末年始には『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』や『杉原千畝 スギハラチウネ』などの映画を鑑賞するなど、「休む時は休む」スタンスが、ストレスの解消と健康維持につながっているのだろう。

 医学博士の松崎一葉氏の著書『御社に「うつ」が多い理由』(東洋経済新報社)によると、最もストレスに強いタイプは、自分を正しく評価できる適度な自信があり、他者の評価をあまり気にせずマイペースで仕事ができる人だという。

 安倍首相がまさにこのタイプだとすると、周囲の批判も気にせず、さらに長期政権を続けそうな気配だ。

 有無を言わさぬ改憲志向に危うさを覚える有権者も、体調悪化による辞任から人が変わったように復活したその「リワーク」ぶりだけは、大いに見習うべきなのかもしれない。
(文=編集部)