中国メディアの新浪網は、タイが中国から潜水艦3隻を購入することが事実上決まったと主張し、中国は「タイにとって最も重要な米国との同盟関係も破壊する」ことになると論ずる記事を掲載した。(イメージ写真提供:(C)Sujin Jetkasettakorn/123RF.COM。演習中のタイ海軍部隊)

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 中国メディアの新浪網は、タイが中国から潜水艦3隻を購入することが事実上決まったと主張し、中国は「タイにとって最も重要な米国との同盟関係も破壊する」ことになると論ずる記事を掲載した。

 記事は、中国が、NATOコードでは元級(元型)と呼ばれる039A型潜水艦のうち、S-26Tと呼ばれるタイプの潜水艦3隻をタイに売却すると主張。契約書のサイン、支払い、引き渡し、乗組員の訓練は残っているが、売却は実際には確定していると論じた。

 潜水艦の売り込みで「強力なライバル」になったのはドイツで、中国はドイツよりも低価格を提示したことが、「勝利」につながったとした。なお、タイは韓国からの潜水艦輸入も検討したとされるが、記事は触れなかった。

 タイは第二次世界大戦中に日本から潜水艦の提供を受けているので、購入が決まれば、歴史上2度目の潜水艦入手になる。記事は、中国とタイは軍事演習を繰り返すなど、関係がますます密接になっていると主張。

 さらに、非大気依存推進(AIP)機関(スターリング機関)を導入した039A型がはタイにとって最も適した潜水艦であり、しかも中国のAIP機関は技術が成熟していると強調。中国はタイの友好国として、おそらく価格面でも優遇したのだろうと論じ、現在の両国関係からして、タイが中国の潜水艦の秘密を米国に漏らす心配をする必要は絶対にないと主張した。

 S-26Tは基準排水量が約2300トン、水中では3600トンとの見方を紹介し、日本の「そうりゅう」型の水中3250-3300トンを抜いて、世界最大規模の通常動力攻撃型潜水艦と紹介。そして、「Y-6(魚-6)」魚雷と水中発射型の「CM-708UNA」ミサイルと搭載できると考えられるという。

(海上自衛隊によるとそうりゅうは基準排水量が2950トンで、S-26Tよりも排水量が大きい)

 記事は、中国は1隻3億ドルで、タイにS-26T型潜水艦を3隻売却すると紹介。米国が取りやめるよう圧力をかけると予想する人もいるが、「もう確定したこと」と主張し、タイの中国製潜水艦の購入で、中国はタイにとって最も大切だった米国との同盟関係を破壊することになると主張。

 さらに、インドネシアも中国製武器の購入に動いていることから、軍需品の売却を外交の手段に転じることでインドネシアやタイを「東南アジア諸国連合(ASEAN)における中国側のチームとして、ベトナムなどを防ぐのだ」と主張した。

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◆解説◆
 上記記事には「能天気」な部分も目立つ。タイが「中国の潜水艦の秘密を米国に伝えるはずは絶対にない」と論じているが、駐タイ関係が極めて密接であればまだしも、「絶対」とまでは言いきれないだろう。実際に、中国はパキスタンと共同開発の形式で手掛けた「FC-1」戦闘機で、パキスタンから米戦闘機の「F-16」の情報の提供を受けたことが確実視されている。

 タイとして現状では039A型潜水艦の購入が「合理的」と判断できたとしても、パキスタン外交にとって「中国一辺倒」にならねばならない理由は乏しい。

 タイ海軍は東南アジアでは有数の戦力を持つ。航空母艦(軽空母)も保有している(チャクリ・ナルエベト)。(編集担当:如月隼人)(イメージ写真提供:(C)Sujin Jetkasettakorn/123RF.COM。演習中のタイ海軍部隊)