「遺伝子組み換え蚊」は人類の敵か、味方か

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遺伝子を組み換えられたネッタイシマカ「OX513A」の実地試験がブラジル、ケイマン諸島、パナマ、マレーシアで行われている。米国の食品医薬品局(FDA)の予備的調査を通過したため、フロリダキーズでも実現するかもしれない。

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米国の規制当局が5年間審査してきた「遺伝子組み換え蚊」が、実地試験の承認までに残されたハードルのひとつを通過した。米国の食品医薬品局(FDA)が3月11日(米国時間)に発表した。

FDAは予備的調査の結果として、Oxitec社のネッタイシマカ「OX513A」は、同社が試験を申請しているフロリダキーズのコミュニティー、キー・ヘヴンの人や環境に対して重大な脅威は与えないという見解を発表した。環境評価による「影響なし」との最初の判断を受け、一般からの意見を30日間受けつけ、その後、FDAが最終的に判断する。FDAが予備的調査によるゴーサインを承認すれば、OX513Aはすぐに放たれる可能性がある。

OX513Aのオスは、当該地域の野生のネッタイシマカの数を激減させる目的で、致死遺伝子を組み込まれている。テトラサイクリン系の抗生物質を与えられなければ生きられないため、管理されたオスは野生のメスと交尾するまで生きられるが、交尾によって生まれた次の世代は生殖機能を持つ前に死ぬ(日本語版記事)。

米国では南東部に多いネッタイシマカは、ジカ熱(日本語版記事)、デング熱、黄熱、チクングンヤ熱などのウイルスを媒介する可能性がある。

OX513Aはすでに、ケイマン諸島、パナマ、マレーシア、ブラジルで実地試験が行われている。ケイマン諸島での実地試験は、ビル&メリンダ・ゲイツ財団の支援を受けて2009年から行われ、330万匹のOX513Aが放たれた。ブラジルでも2011年から大規模な実験が行われ、85%の減少を報告(日本語版記事)。2014年に規制当局から許可を受けた

フロリダ州キー・ヘヴンは、キー・ウエストから東に数kmに位置する500世帯足らずのコミュニティーだ。2009年から2010年にかけてデング熱大流行の被害があり、試験地に選ばれた。

ただし、キー・ヘヴンの住民全員が今回のFDAの判断を喜んでいるわけではない。キー・ヘヴンに住むミラ・デ・ミラーはCNNに対して、「人々はモルモットになることを望んではいません」と語っている。「コミュニティーのメンバーは容認していません。地方政府と連邦政府が、わたしたちとその願いを保障しないのであれば、最終の手段として司法制度を頼り、裁判所に訴えることになります。現在のところ法廷闘争はひとつの選択肢となっています」と同氏は言う(遺伝子を組み替えても一定の割合の蚊は何らかの形で生き残るため、生き残った蚊が生態系にどのような影響を及ぼすかが不明だという懸念の声がある)。

Oxitec社のハディン・パリーCEOはCNNへのコメントで、キー・ヘヴンからの全面的な支持が得られていないことを認めつつ、公衆衛生問題ではよくあることだとしている。パリー氏はまた、ジカ熱ウイルスが世界で拡大(日本語版記事)していることから、実地試験が緊急に必要だと述べている(Oxitec社は2014年7月、ブラジルにOX513Aを商業生産する世界初の新工場を開設したと報道されている。1週間当たり50万匹の「OX513A」を生産する能力があり、将来的には最高200万匹まで増産できるという)。

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