恨みつらみを乗り越えた田中智美さんが、女子マラソン選考の真のラスボス「天満屋」を1秒差で下してリオ代表入りの巻。
打倒・天満屋ついになる!

やった。やった。やった。何年越しの想いか。ついに女子マラソン界でつづく揉める選考レースを乗り越えました。13日に行なわれたリオ五輪女子マラソン最終選考レース・名古屋ウィメンズマラソン。制したのは昨年の世界選手権の代表争いを巡って、選考レースで優勝しながら落選した田中智美さん。日本人トップとなる全体2位、そして2時間23分台という好タイム。スッキリと3枠目に飛び込む会心のレースでした。

そして、田中さんがこのレースを制したことは、僕の心に積もる長年の選考揉め事を払拭するものでもありました。一般に女子マラソンの選考揉め事は「悪の陸連」による陰謀だと思われているフシがあります。それについては、以前の記事で「そんなことはない」という説明をしましたが、実はこの揉め事は二段階変身するタイプの魔王型ラスボスであり、悪の陸連を操る真のラスボスは別のところにいたのです。

選考揉め事の最終局面に立ちはだかり、揉め続けさせてきた真のラスボス、その名は「天満屋」。中国・四国地方に展開する百貨店という体裁で女子陸上界を席巻する天満屋陸上競技部は、女子マラソンでシドニー五輪から4大会連続で代表を輩出する強豪です。天満屋には悪気はありません。選考を揉めさせようなどという気は毛頭ない。ただ、4年後に向かって燻る火種を作りつづけてきました。「選考レースで人生最高のレースをやって、以降パッタリ」ということの繰り返し。出てくる選手出てくる選手がソレをやるものですから、選ぶ瞬間は納得妥当の選考でありつつ、4年後に振り返ると「前回は天満屋が」と燻る想いが甦る。

シドニー五輪代表となった山口衛里さん(天満屋)は、選考会となる東京国際女子マラソンで2時間22分12秒という、現在でも日本歴代6位に残る記録を出すも、本番では転倒もあって7位にとどまり、以降は怪我に悩まされ2005年に引退となります。アテネ五輪代表となった坂本直子さん(天満屋)は選考会となる大阪国際女子マラソンで優勝。30キロ地点からのスパートで築いた独走態勢は同じレースに出場した千葉真子さん・渋井陽子さん、ほかの選考会で失速した高橋尚子さんをも振り切るものでした。日本女子史上最高のスパートでつかんだアテネ代表でしたが、本番では切れ味鈍く7位入賞にとどまり、以降は怪我もあって伸び悩み2013年に引退となります。

北京五輪選考では世界選手権で内定を決めた土佐礼子さん、選考会優勝&実績面でアピールする野口みずきさんが2枠を占める中、残り1枠を森本友さん(天満屋)と中村友梨香さん(天満屋)が争う形に。最終的には中村さんが代表を勝ち取りますが、本番は13位完走、以降は自身の記録を更新することなく2014年に引退となります。そしてロンドン五輪代表争いでは重友梨佐さん(天満屋)が大阪国際女子優勝&好タイムで堂々の代表入りをはたしますが、本番は79位という結果に留まりました。重友さんは2015年世界選手権の代表争いで、再び2時間26分台の記録を出して代表争いを勝ち抜きますが、本番では14位と伸びを欠くレース。ちなみにこのとき競り落としたのが、13日の名古屋ウィメンズで日本人最上位となった田中智美さんでした。

「選考レースの期待感を本番で上回ったことがない」という天満屋の歴史が、日本女子マラソン界の揉め事の歴史でもあった、僕はそのように思っています。有森さん絡みのバルセロナ&アトランタの揉め事は、揉めることは揉めたけれど結果的に納得の本番になったわけじゃないですか。選考なんてのは大なり小なり揉めるものであり、その良し悪しを決めるのは結局本番。本番が良ければ選考も良かったことになるし、本番が悪ければ選考が間違っていたということになる。そんなものでしょう。

燻る想いの核にあるラスボスに競り勝った、その点において今回の選考は、たとえどんな結果に本番が終わろうとも、スッキリとしたものになることは間違いありません。「また」「何故」「いつもいつも」という想いを抱えずに済むのですから…!

ということで、追いすがる天満屋との死闘を制した田中智美さんの激走などについて、13日のフジテレビ中継による「名古屋ウィメンズマラソン」からチェックしていきましょう。

◆選考レースに人生のピークを合わせる天満屋の驚くべき調整力!

快晴の名古屋。リオ五輪代表争いを決着させる名古屋ウィメンズマラソンが始まります。今五輪の選考では、世界選手権で伊藤舞さんが内定、大阪国際女子で福士加代子さんが設定記録を突破する好走で事実上内定。残り1枠を争ってのレースとなります。主な出場選手は実績面抜群の野口みずきさん、前回大会代表の木良子さん、昨夏の世界選手権代表争いで涙を呑んだ田中智美さん、そして天満屋の小原怜さん。海外勢では2時間21分台の記録を持つ世界選手権3位のキルワが筆頭格となります。

女性だけが出場し、ゴールするとティファニーのアクセサリーがもらえるという同大会は、一般参加も含めて多くの参加者が集う大レース。ナゴヤドームの敷地から出るだけでも一苦労の大混雑のスタートとなります。そんな中、有力どころはしっかりと先頭集団を形成して5キロ過ぎへ。序盤から苦しいレースをつづけていた野口みずきさんを引き離しつつ、じょじょに人数を絞り込んでいきます。

↓ティファニーを目指す大集団が名古屋を駆ける!

福士:「ワシ代表争いとかどうでもええねん」
福士:「ティファニーが欲しいんや」
福士:「大阪はしがらみで出なアカンねん」
福士:「でもワシ、ティファニーが欲しいねん」
福士:「名古屋も出るーーー!」
福士:「絶対に名古屋も出るーーー!」
福士:「止めんでくれ、止めんでくれや!」
福士:「ティーファーニィーーーー!」

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「国際陸上競技連盟が認定するゴールドラベル」という自慢の連呼には何となくビールを、国歌斉唱を担当したという歌手・chayさんには何となくチャイを、とにかくドリンクのことを思い出させる中継。昨年のレースでの小原怜さんの転倒シーンやドリンクボトルやらが映し出されるなど、ドリンクまわりの情報がやたらと充実しています。「野口みずきは自分でスペシャルドリンクを提出にきました!」「田中智美も自分でスペシャルドリンクを提出にきました!」「この選手は水は飲まないそうです!」などと水回り情報で序盤は埋め尽くされます。

10名ほどの集団を形成して先頭グループは中間点へ。後半が伸びやすいというコース特性も加味すれば、2時間23分〜24分台という好記録が期待できそうなレース展開です。レースに動きが生まれたのはペースメーカーが外れた30キロ過ぎ、優勝候補のキルワがスパートをかける形で先頭に飛び出すと、それを田中智美が追走します。田中はハーフマラソンで日本歴代10傑に入るスピードの持ち主。キルワ相手でも一歩も退きません。

しかし、抜け出した両名にひたひたと食らいついてくる天満屋の影が。多くの有力選手が振り落されたスパートに、天満屋の小原さんが食らいついてきました。一時は15秒ほど離されるものの、ジリジリと差を詰めてきます。天満屋だ、またしても天満屋だ。昨夏の世界選手権代表争いで田中さんに煮え湯を飲ませた天満屋が、再び選考レースで最高の走りを見せてきた。

↓先頭はキルワ、2位に田中、そして後方から迫ってくる小原(天満屋)!振り向けば天満屋!


頑張れ田中!負けるな田中!

どっちでも別にいいんだけど、心は田中!

頼む、勝ってくれ!

↓田中さんが所属する第一生命も沿道の大応援団とCM提供で田中さんを後押し!


世間の印象は「天満屋presents名古屋ウィメンズマラソン」みたいな感じになってるけど、天満屋はスポンサーじゃないからな!

負けるなオフィシャルスポンサー!

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そして迎えた37キロ手前。ついに田中さんを小原さんがとらえます。ここからは両者が並走してのデッドヒート。すでに後続から追いすがる者はなく、記録もあるいは陸連の設定記録2時間22分30秒に届こうかというハイペース。この競り合いに勝ったほうは間違いなくリオ代表、記録次第では福士さんにも影響が出かねないほどの戦いとなります。

前に出る小原さん、追走する田中さん。沿道では前回大会の代表・尾崎好美さんが40キロ地点で待ち受け、そこから応援のために爆走を開始します。40キロの看板の横から猛スピードで飛び出し、自転車より速いスピードで駆け、一度は選手を抜き去ってしまった尾崎さんの姿は、田中さんに勇気を、世間には爆笑を与えるものでした。

↓何やかんやで1キロほど並走してきた尾崎さん、ブックブクなのに速いやないか!

これは心強い応援や!

頑張れ、田中!

勝負はラストスパートの速さ比べで決まるという様相。田中さん、小原さんは競り合ったままナゴヤドームの入り口に差し掛かります。残り400メートルという距離は、よくあるコースレイアウトなら競技場を周回している段階のもの。本当に最後の最後の直線まで競り合う、史上稀に見る激闘はスピードでわずかに上回った田中さんが1秒差で先着!長きに渡り立ちはだかってきた天満屋の壁を、ついに打ち破りました!

↓やったぞ田中さん!打倒・天満屋なる!

途中、一旦楽勝やと思ったけど、さすが選考会の天満屋は手強いな!

よく競り勝った!

↓キルワがメダル圏内の選手とすれば、そこから40秒差の2時間23分19秒は内容としても非常に期待感が持てる!


この期待感を本番で一段膨らませてくれよ!

「ここがゴールではなく、オリンピックがスタート」だからな!

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代表争いが決着し、和やかにわくナゴヤドーム。祝祭ムードの有終の美を飾るように野口みずきさんが飛び込んできます。タイム、順位は全盛期のそれには遠く及びませんが、しっかりと走り切って感涙のゴール。沿道の声援を「花道のようで」と表現し、泣き笑いで手を振りながらの走りは、偉大な選手のラストにふさわしいものでした。今年の名古屋は本当にいいレースになりました。

これで女子の代表争いも終了。内定済みの伊藤舞さん、名古屋後の会見で「事実上内定」と陸連も太鼓判を押した福士加代子さん、そして名古屋で勝った田中智美さんでスッキリ決着です。世界選手権での内定、好タイムでの事実上内定、そして天満屋に競り勝っての選出。個人的にも大納得の結果となり、本番が非常に楽しみです。期待感以上の結果、特に田中さんには出損ねた昨夏の世界選手権のぶんまで頑張ってもらいたいものですね。

次はティファニーよりも珍重なメダル獲得へ向かって、頑張れ田中さん!