日韓の懸案事項だった慰安婦問題は、昨年12月末の首脳会談で合意に達したが、韓国内の不満は根強い。火ダネはくすぶったままだ。写真はソウルの日本大使館前の慰安婦像。

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2016年3月12日、昨年12月末の日韓首脳会談で一応の決着をみた慰安婦問題。日韓合意を受け、日本政府はソウルの大使館前に市民団体が建てた少女像の撤去を改めて求めているが、撤去のめどは全く立っていない。「強制性」をめぐる日韓両国政府の見解は対立したままだ。韓国内には合意への不満も根強く、火ダネは依然としてくすぶっている。

首脳会談後の今年1月5〜7日に民間調査会社の韓国ギャラップが行った世論調査によると、日韓合意について「評価しない」が54%となり、「評価する」26%の2倍以上になった。否定的な回答の理由では「元慰安婦の意見を聞いていない」との指摘が最も多かった。

野党や一部の市民団体が要求している日本との慰安婦問題再交渉は「すべきだ」が58%、「すべきでない」は28%。日本政府が謝罪したと思うかどうかは「謝罪していない」が72%、「謝罪した」は19%だった。別の調査では世代別で20代、30代の7割が日韓合意に「反対」だったという。

少女像について、岸田文雄外相は昨年12月28日、韓国の尹炳世(ユン・ビョンセ)外相と慰安婦問題に関する合意事項を発表した後の記者会見で、「適切な移転がなされると認識している」と語った。一方の韓国政府は「関連団体との協議を行うということであって、撤去を明示的に約束したわけではない」とする立場だ。この時点で両国の認識は、すでに異なっていた。

少女像は公道を不法に占拠しているとされる。韓国側には、これを理由に撤去する選択肢もあるが、韓国ギャラップの世論調査によると、「合意内容を日本が履行するかどうかに関係なく移転すべきでない」が72%に達した。「日本が履行すれば移転してもよい」は17%だった。

市民団体が撤去を受け入れるはずもなく、世論を考慮すれば、とても手が着けられる状況ではない。それどころか、韓国内の慰安婦像は増え続け、中央日報は「釜山で1日、新たな慰安婦像を象徴する少女像の完成除幕式が行われ、同様の少女像は国内に40カ所となった」と報じた。

「強制性」に関して国連女性差別撤廃委員会で日本政府代表は2月、「政府が発見した資料には、軍や官憲による強制連行を確認するものはなかった」と説明した。これに対し、韓国側は 強制性は被害者の証言で裏付けられており、日本は1993年の河野洋平官房長官談話で明確にこのことを認めていると指摘。その上で「歴史の過ちを忘れず、(両国)合意をしっかりと実践して、未来の世代の教訓として記憶されるよう努力すべきだ」と反論した。「強制性」も両国の認識の違いを示す例の一つだ。

韓国内では2月24日、実話を基に韓国の慰安婦を描いた映画「鬼郷」が公開され、聯合ニュースなどによると、初日に15万人を超える観客を集め、公開5日目には100万人を突破した。政府レベルでは「不可逆的」に解決した慰安婦問題だが、韓国内の関心はなお極めて高く、強い反日感情も残る。問題の根が深いだけに、いつ“発火”するとも限らない危険をはらんでいる。(編集/日向)