しかし一方で、WHO(世界保健機関)が2013年に推定した資料によれば、世界で860万人が毎年新たに発症し、年間130万人が死亡。さらに結核治療薬が効きにくい多剤耐性結核の推定患者数は45万人で、年間約17万人が命を落としているという。
 結核感染者全体が減少傾向にある中で、この多剤耐性結核菌による死亡者だけが4年前より2万人以上増えているのだ。
 「そのためWHOは、“多剤耐性結核菌への対応の不備は、公衆衛生上の危機に当たる”として警告、治療薬の供給体制などを緊急に整える必要があると強調しています。日本でも死亡原因で1位から後退したとはいえ、新規の患者は年間約3万人。これは、WHOが警告しているように抗生物質が効かず、治療法がない感染が拡大しているからだと思います。ハイリスク集団として、結核の“高蔓延国”からさまざまな目的で日本に入ってくる外国人にも目を向けなければならなりません」(前出・医療ジャーナリスト)

 日本における結核の現状は、全国に蔓延していた時代から、都市部を中心とした高齢者に集中する時代に変わってきた。
 「現在の高齢者は、若い頃に結核流行時を経験している人が多い。“一度患うと感染しない”といった説もあるようですが、体力や免疫力が低下したときに、眠っていた菌が再び目を覚まして発病するとも言われている。逆に、若い世代は未感染のため菌を吸い込むと感染しやすく、比較的早い時期に発病します。ましてや、2万人を超えたとされるHIV感染者ともなると、体力が落ち込んでいるために結核菌に侵されやすく、命取りになる可能性が高くなります」(同)
 専門家の間では、「HIVと結核の合併は今後、大きな問題となる危険性を孕んでいる」と警戒感が強まっている。

 では、どうしたら結核から逃れられるのか。重要なポイントは、
 (1)睡眠を十分にとる。
 (2)適度な運動をする。
 (3)好き嫌いなくバランスの取れた食事を摂る。

 そして、次のような症状がある場合、専門医を受診すべきだという。
 (1)2週間以上の長引く咳。
 (2)痰が出る。
 (3)微熱が長引く。
 (4)倦怠感が長く続く(体がだるく活力がない)。
 (5)体重の減少。

 東京社会医学研究センターの大畑保氏は、次のように指摘する。
 「抗生物質が効かない結核が増え始め、感染の拡大につながっていることに加え、注目すべきは若い医師が結核を見逃してしまうケースが多々あること。日本では結核患者数が減ったことで、疑わない医師が増えているのです。また、めったに診ないので経験が積めない。結核は検査しても見つけにくいこともあるし、症状が風邪に似ているために放置される場合もありますので注意が必要です」

 “古くて新しい病気”とも呼ばれる結核。その落とし穴が、意外にも身近に存在することを意識しなければならない。