スギ花粉症の患者は推定3000万人以上(shutterstock.com)

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 春の風が花粉とともにやってくるこの季節。毎日、憂鬱に過ごしている人も多いだろう。アレルギーの中でも多いのがスギ花粉症で、日本人では推定3000万人以上、4人に1人がスギ花粉症であると考えられている。その治療法の選択をどう考えればいいのか?

 花粉症は体質を改善することが重要といわれており、整体や鍼灸、漢方薬といった本格的なものから、ヨーグルトを食べるなどの健康法などもある。

 なかでも最近、テレビなどで評判なのが、「鼻うがい」だ。専用器具を使い生理食塩水で行うと、痛みも無く鼻づまりも改善され爽快感が得られる。しかし、やり方を間違えれば、中耳炎を起こしたり、やりすぎることで鼻の粘膜機能を損なう可能性もある。

 鼻うがいで最もしてはいけないことは、水道水を使うこと。鼻の粘膜を傷つけるだけでなく、水道水の中にはわずかだが細菌やアメーバーが存在し、非常にまれだがアメーバー脳炎を発症することもあるというから、正しく行うことが肝心だ。

100年以上もの歴史のあるアレルゲン免疫療法

 このように、花粉症のシーズンになれば、患者たちはさまざまな方法を試すものであるが、対処療法ではない根本的な治療法はないのだろうか?

 そこで紹介したいのが「アレルゲン免疫療法」だ。減感作療法、免疫的脱感作療法、アレルゲン特異免疫療法とも呼ばれ、100年以上もの歴史のある治療法だ。

 そもそも免疫とは、体内に侵入した病原菌やウイルスなどの異物に反応し、抗体を作ることで、それらを排除しようとする仕組みである。だが、花粉やハウスダスト、特定の食べ物など、体に害のないものでも、害のあるものと体が勘違いし、免疫が働いてしまう。それこそがアレルギー反応である。

 アレルゲン免疫療法には「皮下免疫療法」や「舌下免疫療法」などがあり、どちらともアレルギーの原因となっているアレルゲンを、少しずつ体内にとりこみ、体を徐々に慣らし、アレルギー反応を起こさないようにしたり、緩和していくというものだ。

保険適用となった舌下免疫療法

 皮下免疫療法は、以前から保険適用となっており、溶液に水や溶媒を加えて薄めたアレルゲンを皮下に注射するというもの。治療の初期段階では週に1〜2回の通院を必要とし、注射の痛みも伴い、その治療が数年ほど続く。

 舌下免疫療法は、ようやく日本でも平成26年10月に保険適用となったが、ヨーロッパなどではすでに認可されている国が多く一般的な治療法だ。日本は認可も遅かったが、原則12歳以上にならないと治療を行うことができず、まだ普及には時間がかかりそうだ。

 だが、自宅で薬を摂取できるため、皮下免疫療法のように頻回に通院しなくても良く、月に1回程度の通院なので、忙しい人にも向いているというメリットはある。さらに皮下免疫療法とともにスギ花粉症に対する治療効果は高く、「完全もしくは症状が軽減された」患者が臨床データの8割にのぼる。

 だが、そんな夢のような治療法も万全とは言いがたく、他のアレルギーを持っていたり、花粉症からくる二次的症状、つまり、鼻をかみすぎて炎症を起こしてしまっているなどには効果が少なかったり、認められなかったりする。
 
 そして、アレルギーの元となるものを少量ではあるが摂取するという性質上、アナフィラキシーショックなどの重篤な症状を発する危険性もあるため、重度のスギ花粉症の患者には向かず、治療には細心の注意が必要だ。そのため、舌下免疫療法を行う医師は、国が指定した講習会を受け認定登録される。
舌下免疫療法はルーズな性格の人には向いていない

 スギ花粉症に対する舌下免疫療法の相談を受けることができる施設は、舌下免疫療法の治療薬「シダトレン」を製造販売している鳥居薬品のHPから検索できる。自分の花粉症が重度なのか軽度なのか、本当にスギ花粉症なのか、その治療に向くかどうかを調べるため、まず認定登録された医師に受診し治療前のアレルギー検査を行う必要がある。

 そのような治療法があると知って、今すぐ病院に行こうと思った人も多いだろうが、実は落とし穴もある。スギ花粉症の免疫療法は、スギ花粉が飛びまくっているシーズンに行うことができないのだ。治療を開始するのは、シーズンの2〜3ヶ月前、つまり11月頃から始めるのが一般的で、それ以前に検査を行う必要があり、治療期間は皮下も舌下も2年から5年はかかると言われる。

 さらに、毎日服用することが必要な治療法であるため、ルーズな性格の人には向いていない。花粉症が症状として現れていない時期に行う治療のため、つい面倒くさくなり、「まぁ、いいか」としてしまう要因のひとつだろう。

 毎日あれだけ辛かったのに、喉元すぎたら忘れてしまい、春を迎えてまた同じように苦しみ悩む――。そろそろ、その悪循環を断ち切ってはどうだろうか。
(文=編集部)