日中両国で「メディア統制」の動きが期せずして浮上した。高市総務相は放送局に電波停止を命じる可能性に言及。習近平共産党総書記は党への忠誠を強調した。そこには程度の差こそあれ、メディアをコントロール下に置きたいという為政者の思惑がうかがえる。イメージ写真。

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2016年3月11日、日本と中国で先ごろ、「メディア統制」の動きが期せずして浮上した。放送局に電波停止を命じる可能性に言及した高市早苗総務相の発言は尾を引き、中国では習近平共産党総書記(国家主席)が官製メディアを視察後、党への忠誠を改めて強調した。体制を異なる日本と中国を単純に比較できないが、そこには程度の違いこそあれ、メディアをコントロール下に置きたいという為政者の思惑が見て取れる。

「放送局が政治的な公正性を欠く放送を繰り返した場合」を理由とする高市発言に対しては、メディア関係者が「憲法や放送法の精神に反する」などと一斉に批判。民放テレビ局キャスターの田原総一朗氏ら7人は2月29日に記者会見し、「これほどメディアに攻勢をかけている政権はかつてなかった」(鳥越俊太郎氏)、「権力は絶対ではない。メディアはチェックし、暴走にブレーキをかけて止めなければならない」(岸井成格氏)などの声を上げた。

憲法学者らの「立憲デモクラシーの会」も今月2日、見解を発表。「総務大臣に指揮命令される形で放送内容への介入が行われれば、放送事業者の表現活動が過度に萎縮しかねず、権限乱用のリスクも大きい」などとした上で、「公平性に反すると判断するのが政党政治家たる閣僚であるという深刻な問題は依然として残る」と指摘した。

政治家、特に閣僚は自らの発言が、どんな影響を与えるかを計算して言葉を選ぶ。経済関係閣僚は不用意な発言がマーケットに混乱をもたらす恐れもあるため、慎重になる。計算できなければ、むしろ「政治家失格」だ。

高市総務相の発言は、2月8日の衆院予算委員会で飛び出した。「質問があったから」「法律にそう書いてあるから」では済まされない。安倍晋三首相も擁護し続ける高市発言は「メデイアを威嚇した」と勘ぐられても仕方ないところだ。

一方、中国メディアによると、習近平共産党総書記は2月19日、党機関紙・人民日報、国営通信・新華社、国営中央テレビを視察し、中国の宣伝に努め国際影響力を向上させるよう号令をかけた後、報道世論工作座談会を開催。「党・政府が管轄するメディアは宣伝の陣地であり、党を代弁しなければならない」と党への忠誠を命じた。

この習発言に対し、「物言う企業家」として政治経済・社会問題で発信を続ける任志強氏が中国版ツイッター「微博」(ウェイボー)で「『人民政府』はいつ、党の政府に変わったのか。メディアが人民の利益を代表しなくなる時、人民は隅に捨てられ、忘れ去られる」と疑問を呈すると、微博のアカウントを取り消された。

中国では1月、国家インターネット情報弁公室が管理を強化。一般大衆向けに情報を提供するすべてのアプリケーションの取材、編集、発信、転載のサービスやプラットホームの設置について、事前許可制を導入した。新たな「言論空間」でも締め付けは、ますます強まっている。(編集/日向)