日本の新規結核羅患率は、人口10万人当たり16.1人(2014年・厚労省調べ)で、実は10人以下の欧米先進国に比べ患者数は多く、世界の中では依然として“結核の中蔓延国”とされている。
 2013年10月、東京・八王子の40代の男性教諭が肺結核の発病に気づかず授業を続けていたため、他の教諭や生徒など15人が結核に感染した。また同月、滋賀医大に勤める30代の女性看護師が患っていることも判明。さらに徳島県の開業医が発病していることも分かり、改めてその脅威を知らされる事態となった。

 そもそも、なぜ結核は発生してしまうのか。
 東京医療センター呼吸器科の外来担当医は、こう説明する。
 「結核とは、“結核菌”という細菌が引き起こす“おでき”のようなものと考えていいでしょう。最初は炎症から始まり、患った場所が肺であれば肺炎のような症状が出ます。さらに悪化すると組織がダメになって化膿に似た状態になります。肺結核では、この状態がかなり長く続き、レントゲンなどに映る影の大半がこの時期の病巣です。その後、組織がドロドロに溶けて咳やクシャミと一緒に気管支を通って肺の外へ出され、病巣は空洞になる。ポッカリと空いた空洞なので、空気も肺からの栄養も十分にあり、結核菌には絶好の住家となって、菌がどんどん増殖するのです」

 そして担当医はさらに、その怖さを説く。
 「増殖した菌は肺の他の部分に飛び火したり、リンパや血液の流れに乗って他の臓器に対し悪さを始めることもあります。こうして、結核は肺全体、全身に拡がり、最後には肺の組織が破壊され、呼吸困難や他の臓器不全を起こして命の危機を招くことになります。ですから、咳や痰やクシャミが2週間以上続いたら、まず医療機関に診てもらうことが大事です」

 このように、結核が厄介なのは全身の至る所に病を作るという点だ。冒される臓器としてはリンパ節が最も多く、特に多いのが首の脇が腫れるもので、昔は“瘰癧”と呼ばれた。また、骨や関節にもできる。中でも背骨の脊椎カリエス、腎臓の腎結核が多く見られ、腎結核の場合は膀胱などを巻き込むこともよくあるといわれる。
 「その他、咽頭、腸、腹膜、眼や耳、皮膚、生殖器にまで広がることもあり、中でも最も怖いのは、脳に至ることです。結核菌が血管を通って全身にばらまかれ、脳を包んでいる膜(髄膜)にたどり着き、そこに病巣を作る。現在では、全身に結核菌がばら撒かれる粟粒結核の場合、早く発見できれば助かりますが、髄膜炎では治療が少しでも遅れると3分の1近くが命を落とし、治っても脳に重い後遺症が残る可能性があるのです」(健康ライター)

 また、あるベテランの医療ジャーナリストはこう語る。
 「結核で多くの人が亡くなっていた時代、死因は肺の大部分が結核菌に破壊されるケースと、腸の結核で栄養が取れずに死亡するケースとで、ほぼ半々でした。それが特効薬『ストレプトマイシン』などが登場し、結核菌による炎症の発達を止める効果を上げ、その後の病気の進行を抑えて治療への道筋をつけたのです」