『神々の山嶺 1 (集英社文庫―コミック版)』谷口 ジロー,夢枕 獏 集英社

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 3月12日に公開される映画『エヴェレスト 神々の山嶺(かみがみのいただき)』は、前人未到のエヴェレスト南西壁冬期無酸素単独登頂に挑むクライマーを描いた壮大なドラマ。

 作家・夢枕獏さんの原作は、世界最高峰のエヴェレストを舞台に、孤高の天才クライマー・羽生丈二と、羽生を追う山岳カメラマン・深町誠の2人の男の生き様を描き、山岳小説の最高峰との呼び声も高い作品です。

 女性ファンから圧倒的な支持を受けた<陰陽師>シリーズの印象が強い夢枕さんですが、実は大の山好き。かつて就職活動に失敗し、大学卒業後は北アルプスの山小屋でアルバイトした経験もあるほか、同作執筆の際はエヴェレストのベースキャンプまで登り、今回もまたロケ現場を訪れるために現地に行っていたそうです。

 映画の撮影にあたっては、実際に現地でロケを行い、極限の登攀(とうはん)シーンも、代役ではなく俳優本人が演じていますが、それを支えたのが"山ヤ"(登山家)たち。

 撮影隊には山岳監修を務めた日本山岳協会会長・八木原國明さんはじめ、山岳スタッフとして横山勝丘さん、宮城公博さんなど多数の現役クライマーも同行し、技術面はもちろん、精神的な面でも徹底的にサポートしたそうです。

 山に魅入られ、ストイックなまでに登攀にのめり込んでいく羽生と、羽生の生き様に引き寄せられていく深町は、正反対なように見えて、実は似た者同士にも見えますが、そんな2人の熱い関係に、「BL(ボーイズラブ)」的要素を見出す女性ファンも少なくないのだとか。メガホンを取った平山秀幸監督自身「この映画は、深町と羽生、2人の男の"生きる"ことの壮絶なラブストーリーだと思う」(同作公式サイトより)と述べているほどですから、その見方も、あながち間違いではないのかもしれません。

 山岳小説の金字塔を打ち立てた同作は、2000年には、『孤独のグルメ』で知られる漫画家・谷口ジローさんの手によって漫画化され、第5回文化庁メディア芸術祭マンガ部門「優秀賞」を受賞。

 夢枕さん自身「もしも、『神々の山嶺』を漫画する機会があったら、その書き手は谷口ジロー以外にはいないと前から考えていた」(『神々の山嶺』漫画版によせてより)と、かねてからラブコールを送っていた通り、谷口さんの精緻な画力と、圧倒的なスケールで描かれた同作は、読者の期待を裏切らない作品に仕上がっています。