撮影:熊谷仁男

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同名の名曲に基づくベストセラーを映画化した『桜ノ雨』で、高校の合唱部で熱唱するヒロインの未来(ミク)に扮し、映画初主演を飾った山本舞香さん。

泣ける!? 山本舞香の合唱シーンを見る【動画】

本作の彼女の歌声がなぜ多くの人の心を揺さぶるのか?

その秘密を、直撃インタビューで探ってみました。

『桜ノ雨』は、ボーカロイドで火がつき、いまや卒業ソングの定番でもある名曲から生まれた累計発行部数20万部突破の同名ベストセラーの映画化。

小さな港町を舞台に、合唱部に所属する歌うことと部長のことが大好きな17歳の少女、未来の恋と青春を描いた感涙の合唱ムービーになっています。

そして、本作でヒロインの未来を演じたのが山本舞香さん。

第14代リハウスガールとして注目を集め、『暗殺教室』『Zアイランド』、ドラマ『南くんの恋人〜my little lover』などの話題作に次々に出演。

「JR SKISKI」のCMにも起用された期待の新星の彼女ですが、その瑞々しい演技と美しい歌声は、ワールドプレミアとなった昨年の東京国際映画祭や試写会で早くも多くの観客の涙腺を破壊。

それにしても、なぜみんなそんなに涙するのか? それを知りたくて、本人を直撃しました。

まずは軽いジャブ。主演のオファーがあったとき、本作のもとになった初音ミクが歌うボカロの神曲「桜ノ雨」を知っていたのか聞いてみた。

「知らなかったんですよ。でも、マネージャーさんから“この歌、聴いてみて”って言われて聴いて。

それで“いい歌ですね”みたいな話をしていた数日後に、“あの曲から生まれた原作小説があって、その実写映画の主演の話が来ているんだ”って聞いたんです。

聞いたときはもちろん嬉しかったですよ。でも、プレッシャーもすごくありましたね」

それだけに、未来として生きることに尽力した。

「原作の未来に近づけようとは思わなかった。自分なりの、内気なミクを演じたいと思ったから。

でも、内気な役を演じるのは初めてだったし、あまり笑わない子だったので、演じているうちにどこで笑っていいのか分からなくなっちゃったんです(笑)。

そのときに、この子は本当に笑っちゃダメなのかな?ってもう一度考えて。

未来はロボットじゃないし、普通の子と同じように笑うんじゃないかな? と思ったから、『Fire Flower』をみんなで歌う花火のシーンでは笑いました。楽しんでいいような気がしたんです」

メガホンをとったのは、『リュウグウノツカイ』(14)で脚光を浴びた新鋭ウエダアツシ。

「監督は私がお芝居をしているときもずっとそばで見てくださって、アドバイスもしていただきました。私はこうしたいんですけど、監督はどう思いますか?って自分の考えをストレートにぶつけることができたのもよかったです。

最後の合唱をする前の舞台のそでで、部長に初めて自分の想いを言葉にするシーンでも、私の考えを伝えることができましたね」

本作の最大の見どころは何と言っても合唱のシーンだが、「合唱の練習で何がいちばん大変でした?」と聞くと、「声!」という思いがけない言葉が返ってきた。

「歌はもともと得意じゃなくて。高い声を出すとたまに裏返っちゃうんです(笑)」

しかも、「南くんの恋人〜my little lover」の撮影と重なったために、共演者のみんなとの合唱の練習にはあまり参加することができなかった。

「でも、足を引っ張りたくないから個人レッスンをお願いして。

皆さんに追いつこう、追いつこうって必死だったんですけど、その個人レッスンの先生には本当にお世話になりました。

そしたら、その先生が東京国際映画祭の六本木ヒルズのアリーナで合唱を披露するときの指揮をしてくださって。あのときはみんなとまた歌えたっていう嬉しさもあったけど、先生の顔を見た途端に、安心したのか、なぜか泣いちゃったんですよね(笑)」

エンディングではソロで歌うパートも。

「あの日も先生がそばにいてくださいました。ただ、カラオケでは歌うけど、自分ではみんなに聴いてもらえるような歌声ではないと思っていたので、ソロで歌うところは恥ずかしかったし、すごく緊張しました」

だが、たぶんその状態だったら、聴く人の心には届かなかったに違いない。

劇中にも「人を楽しませるには、自分が楽しまなきゃ」という印象的な台詞が出てくるので、それに絡めて「楽しめるようになりました?」と聞くと、「はい。楽しかったです!」と笑顔が帰ってきた。

「慣れてきたら、すごく楽しかったです。途中から恥ずかしがらずに歌うことができました」

本作は合唱シーンだけではなく、未来の激しくざわめく感情を自身の肉体運動と表情だけで伝えるシーンがいっぱいある。中でも、携帯にかかってきた父からの電話で入院中の母親の病状が急変したことを知り、夜の商店街を全力で走るシーンは観る者の胸に迫る。

「あのシーンは並走する車から撮影しているんですけど、もう大変でした。何回走ったんでしょう? すっごい走った(笑)。

気持ちもなんだか大変なことになっているし、体力的にもしんどいし。でも、あそこは未来がいちばん自分自身と葛藤しているところなので、いいシーンになったなと思います」

そして、ちょっと間をおいて…。

「でも、やっているときは伝わってないんじゃないか? という心配の方が大きかったです。完成して、観てくれた人があのシーンのことを話してくださるので、伝わったんだ、よかったって思いました」

それにしても、彼女の“想い”をきちんと伝えるお芝居のベースにはいったい何があるのだろう? いよいよ核心に迫ってみよう。

「デビューしたての頃はモデルのお仕事の方が可愛い洋服をいっぱい着られたから楽しくて、お芝居にはあまり興味がなかったんです。

でも、お芝居はこういう人がいるんだよっていうことを伝えられるし、今回の映画の歌にしても気持ちを届けられますよね。

演技を通じていろいろなことを伝えられるところが素敵だし、演じること自体が楽しいなと思えるようになったので、いまは女優の仕事が楽しいです」

演じることが好きになったきっかけは?

「私のファンの女の子で、小学生なんですけど、手術をした子がいて。しかも、それは目にメスを入れる手術だったから、彼女は“手術が怖い!”って言っていたんです。

そりゃ、そうですよね。その辛さや恐怖はその子にしか分からないものだけど、そのとき私は『暗殺教室』を撮っていたので、“私も撮影を頑張るから、頑張ってね”というビデオメッセージを送ったんです。

そしたら彼女から“頑張る!”という返事が戻ってきて。

私たちのお仕事って、そうやってみんなを元気にしたり、夢を与えられる素敵なものじゃないですか? それで女優の仕事が好きになったんです」

彼女の芝居は、自らの心に宿った純粋な気持ちに裏打ちされた嘘のないものだから説得力があったのだ。そして、その真摯なパフォーマンスは今後多くの作品でさまざまな経験をして、さらなる進化を遂げるに違いない。

「これからもいただいた仕事は全力でやっていきたいし、ほかの人にはできない自分なりの表現やお芝居ができるようになりたいです。そのためにたくさん作品を観て、勉強をしたいなと思っていますね」

そうきっぱり言い切ってくれた山本舞香。

彼女にまだ出会っていない人は、『桜ノ雨』でまずはその歌声に涙するところから始めてみてください。