2016年2月13日、土曜日、新東名高速道路が開通。この日、web上である小説の連載が開始された。

「幻想交流」。

ゲームデザイナーで作家の芝村裕吏氏の最新作だ。

新東名高速を管理するNEXCO中日本と、webサービスを提供するIT企業の株式会社ドワンゴのモバイル事業部がタッグを組んで立ち上がったプロジェクト『幻想交流』。 新東名高速を題材にした様々なメディア展開を予定しているが、芝村氏はその作品群の中核となる、web小説「幻想交流」 の執筆と世界観・キャラクター設定を担当している。

社会現象を巻き起こした今をときめくブラウザゲーム「刀剣乱舞」の脚本・世界観・監修を務める芝村氏は、作家であると同時に、ゲームデザイナー。小説での代表作「マージナル・オペレーション」が「月刊アフタヌーン」でコミカライズされるなど、近年では漫画原作者としても活躍の幅を広げている多才な人物である。

その芝村氏の最新作となるweb小説「幻想交流」は異世界ファンタジーもので、新東名高速を舞台に繰り広げられる小説に登場する異世界のメインキャラクターには「SA(サービスエリア)」と「PA(パーキングエリア)」が登場するという。昨今、流行の「擬人化」だ。

鉄道、車、工具、駅、文房具、twitter、果てはゲームに登場するモンスターキャラクターをさらに擬人化するというものまで現れて、ややカオスな状況が呈されている擬人化界隈。大がかりなプロジェクトとしては、トヨタによる「プリウス」の部品40個が擬人化されたニュースが記憶に新しい。

…と、こういうと、このプロジェクトに特段目新しさはないようにも見えるが、『幻想交流』にはひとつ、他とは違う手法を取り入れている。それが、「まず、ストーリーありき」という方針だ。

新東名高速開通と同時にweb小説が連載開始となった狙いもそこにある。まず物語を作り、キャラクターに感情移入ができる素地を展開しながら、キャラクターを公開。物語を通じてキャラクターが受容されることで、今までのプロジェクトとは一線を画す深い愛情を、キャラクターと SAPAに注いて頂けることを目指す。コンテンツ制作側としても、新東名高速道路建設に並ぶほどの“大仕事”となる。

そこで、原作として白羽の矢がたったのが、芝村裕吏氏というわけだ。

ゲームソフト開発会社のアルファシステム在籍時より、第5回日本ゲーム大賞優秀賞、第32回星雲賞メディア部門受賞した「高機動幻想ガンパレード・マーチ」をはじめ、「絢爛舞踏祭」や「ガンパレード・オーケストラ」3部作など数多くのゲームを手掛けている芝村氏。ストーリーに張り巡らされた微細な世界観描写。その特異な世界観と研ぎ澄まされたシステムから、氏の作品は「芝村ゲー」と呼ばれており、高い評価と熱狂的なファンを擁している。

今回展開される『幻想交流』は、ストーリー・世界観・設定が作品展開の重要な要であり、これを統括する人物としてはうってつけの人材といえる。

また、いくつかの作品タイトルからも推察できるように、その「技術」に対する造詣の深さも高く買われた。日本が誇る高速道路の技術を表現するにあたって、作中には自然と織り交ぜられることが好ましい。事実、作中には、非常に細かでリアリティ溢れる設定が登場する。

今回の芝村氏の起用から、このweb小説の次の展開はゲームなのか?コミックなのか?はたまたアニメなのか?と、まだキャラクターも出揃っていない時点から、今後に期待が高まる要素ともなっている。

そんな壮大となる(かもしれない?)プロジェクトの根幹のweb小説「幻想交流」は現在第6話「猫」まで公開中。

芝村ファンにはおなじみのクスリと来る要素もちりばめられているので、続きを楽しみに読み進めて欲しい。

●幻想交流 https://genso-koryu.jp/