上場企業の不祥事がマスコミをにぎわしています。その企業を応援している投資家としては、たまったものではありません。そもそも、社内のコンプライアンス(法令順守)や経営体制をチェックする「社外取締役」は機能していたのでしょうか? ある論文を参考に考えてみました。

今月の知りたがりテーマ●社外取締役は単なるお飾り?
上場企業の企業統治に疑問を抱く出来事が続いています。三井住友建設は、横浜市のマンションが傾くなど建築基準法違反。それを販売した三井不動産も株式市場で売りが続いています。東洋ゴムにいたっては3度目の不祥事。防振ゴムの検査データを改ざんしていました。
2015年6月から、「コーポレートガバナンス・コード」が制定され、企業統治の強化に注目が集まっています。この中には、株主に代わって経営者の暴走や経営体制を監視するための社外取締役を備えることが明記されています。
では、これらの不祥事を起こした企業に社外取締役はいなかったのでしょうか?
実は、三井住友建設は1名、三井不動産は4名、東洋ゴムには2名の社外取締役が存在していたのです。社外取締役の存在の有無は、企業統治が強化されているかのひとつのバロメーターと考えている投資家は少なくないはず。
しかし、一部では、「社外取締役は単なる飾りでしかない」と揶や揄ゆされることもあります。今回の事件を見ていると、あらためてそう思う方は少なくないでしょう。
そこで、2012年に発表された実証研究論文「日本企業の取締役会構成の変化をいかに理解するか?」を見てみましょう。ここには、事業セグメントが少なく、無形資産比率が低いなど、ビジネスが複雑でない企業ほど社外取締役の効果は出やすいと書かれています。
理由は、取締役といってもしょせんは社外の人間。事業が複雑すぎる企業では、完全に把握できません。シンプルなビジネスを運営している企業ほど、目を光らせることができるようです。今回の不祥事を起こした企業は、事業セグメントが3つ以上あり、高度技能が事業の要でした。投資戦略を考えるときは、もしもの不祥事に備えて、自分でも理解しやすい企業を第一に選んではいかがでしょうか。

Masumi Sai
崔 真淑Good News and Companies 代表
神戸大学経済学部卒業後、大和証
券SMBC金融証券研究所(現・大和
証券)に株式アナリストとして入社。
入社1年未満で、当時最年少女性
アナリストとしてNHKなど主要メ
ディアで株式解説者に抜擢される。
債券トレーダーを経験後、2012年
に独立。現在は、日経CNBC経済
解説部のコメンテーターとしても活
躍している。


※この記事は「ネットマネー2016年1月号」に掲載されたものです。