第44味 ベトナム
海外からの資金流入で景気は好調だが、経常赤字。リスクオフ対策の外貨準備高は少なめ…

中国リスクの影響を
受けやすい経済構造。
「売られやすい国」
足元のベトナム経済は好調です。四半期ベースのGDP(国内総生産)成長率は、1〜3期6・12%、4〜6月期6・47%、7〜9月期6・81%と加速傾向にあり、今年のベトナム政府の目標6・2%の達成はほぼ確実です。
その背景には、外資系企業の製造拠点の進出やシフト(主に中国やタイから)、外資による出資・不動産購入に対する規制緩和、TPP(環太平洋経済連携協定)交渉の進展やAEC(ASEAN〈東南アジア諸国連合〉経済共同体)への期待など、海外からの資金流入があります。
新興国というと、米国の利上げ観測や中国経済の減速で、「資金が流出するのでは?」という不安から、夏場には通貨や株、債券が売られ「トリプル安」になる場面がありました。ただ、ベトナムVN指数を見ると、リーマン・ショックによる急落後は、着実に上昇基調をたどっています。新興国の中では爐んばっている〞印象です。
しかし、ベトナムは新興国の不安が高まったときに、どちらかというと「売られやすい」側に属する国です。売りの対象として狙われるのは経常収支が赤字、つまり借金が多い国ですが、ベトナムはまさに経常赤字国。「資金が流出↓自国通貨安↓外貨建て債務の返済負担増↓さらなる資金流出」の悪循環というリクツですが、ある程度の外貨準備があれば、こうした事態に耐えられます。
IMF(国際通貨基金)によれば、新興国全体の外貨準備高は過去15年で11倍に増えており、新興国がリスクオフ時の資金流出対策に取り組んできたことがわかります。一般的に、輸入額の3カ月分の外貨準備高があれば、牋豈は安心〞というのが目安ですが、実はベトナムはこの目安に届いていません。
ベトナムにとって中国の景気減速も痛手です。ベトナム経済は中国依存度が高いことや、中国とベトナムの輸出品は似ているものが多く、人民元が切り下がると、中国製品に対して為替競争力がそがれてしまうのです。
今のところは目立った資金流出もなく順調なベトナム経済ですが、不安要素はあるため、過度な楽観は禁物です。

楽天証券経済研究所
シニアマーケットアナリスト
土信田雅之
新光証券などを経て、2011
年10月より現職。ネット証
券随一の中国マニアでテク
ニカルアナリスト。歴史も大
好きで、お城巡りと古地図
収集が趣味。


※この記事は「ネットマネー2016年1月号」に掲載されたものです。