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みなさんは年金と聞いて何を思い浮かべますか。老後の生活の支え、それとも将来もらえるかわからない不安や「消えた年金」を巡る不祥事でしょうか。いずれにしても、このサイトを読んでくださっている方の多くにとっては、ピンとこない遠い先のことかもしれません。かくいう私も20代の学生の頃までは全く考えたこともありませんでした。とある国内の金融機関でインターンを経験するまでは……。

学生の身分でありながら、幸運にも都内にある大手保険会社で月曜から金曜までフルタイムで4カ月間働かせてもらえる機会に恵まれた私は、そこでさまざまなことを学ばせていただきましたが、なかでも最も印象に残ったのが確定拠出年金でした。

この制度がこれからの日本人の老後資産形成に必要不可欠な仕組みになると直感したからです。次回以降で詳しく書きますが、この制度は米国の「401(k)プラン」と呼ばれる先例を参考に、2001年に日本で初めて導入された、個人ごとに持ち運びができる年金制度です。

奇しくもその後、米国401(k)市場のトッププレイヤーである独立系資産運用会社フィデリティの日本拠点に入社することになった私ですが、このコラムでは「グローバル」と「運用会社」という二つの視点を軸に日本の確定拠出年金について迫ってみたいと思います。

○全国民が加入し支え合う「公的年金」

そもそも何だか複雑で難しそうな日本の年金制度ですが、まずは全体像を整理してみましょう。年金制度は大きくは「公的年金」と「私的年金」の二つに分けられます。一般に、「年金」という見出しで新聞やテレビで取り上げられ、時にセンセーショナルな議論を巻き起こすのは多くが公的年金の話です。

なぜそれだけ注目され、世論を動かす影響力があるかと言えば、それは公的年金が社会保険方式という、全国民が加入し、支え合う形の制度だからです。つまり、現役時代には誰もが保険料を納め、誰もが一定以上の年齢になれば給付を受ける仕組みであるため、全ての国民が当事者であり利害関係者になるからです。

この国民皆年金制度は素晴らしい仕組みですが、一方で人口構成の変化の影響を大きく受けるという弱点もあります。時折若い世代から聞こえてくる、「将来年金がもらえるか不安だ」といった声はまさにこの点を危惧してのものと考えられますが、政府は問題を認識した上で制度の維持に向けた手だてを打っているので、年金が全くもらえないということにはならないでしょう。ただし、現在の高齢世代と同じ水準の年金給付を、将来世代も手にし続けることは難しく、給付水準は下がっていくものと思われます。

○積極活用したい「私的年金」

公的年金に期待できる範囲が小さくなるからと言って嘆いていても始まりません。もう一つの柱である私的年金、中でも職場を通じて加入する企業年金について理解を深め、積極的に活用していきましょう。企業年金には確定給付型と確定拠出年金の二種類がありますが、もしあなたの職場に確定拠出年金制度が導入されているのであれば、これを積極活用しない手はありません。なぜなら、あなた自身の使い方次第で、得られるメリットも将来の安心も大きく変わってくるからです。  

日本においては、これまで長く企業年金の主流は確定給付型でした。確定給付型は簡単に言えば掛金の拠出から運用、給付まで全てを企業が丸抱えし、運用利回りが想定を下回れば企業が穴埋めをしてくれる制度です。平たく言えば、老後のお金のことはかなりの程度会社任せにしていればよかったのです。

確定給付型の企業年金は、若い働き手が増え、安定した経済成長・金融市場環境が見込める状況において、日本企業の長期/終身雇用を前提とした人事体系や、主として国内勢との競争を意識した事業環境にフィットしていました。

○「確定拠出年金」の比重を高める企業が急速に増加

しかし、企業活動が一層グローバル化し、競争環境が急速に変化する中、人事および財務戦略上の観点から、確定給付型の企業年金を減らし、確定拠出年金の比重を高める企業が近年急速に増加しています。

財務戦略上の観点とは、会社が年金資金の運用における成果(リターン)と不確実性(リスク)を社員一人ひとりに移すことで、会社の本業以外から生じる業績へのインパクトを軽減しようとするものです。この点をもって、確定拠出年金は運用リスクの社員への押し付けであるといった意見を目にすることがありますが、必ずしもフェアな見方とは言えません。なぜなら、社員に移転されるのは運用に伴う不確実性(リスク)だけではなく、運用が好調であった場合のリターンも併せて移転されるからです。

あまり語られませんが、確定給付型の制度には会社の業績が悪化したり倒産したりした場合に、社員またはOBの年金給付水準が大きく影響を受けるという弱点もあります。

確定拠出年金では、確定給付型の企業年金とは異なり、会社が毎月拠出する掛金は、一定期間後、完全に社員個人の持ち分となるため、会社の業績変動のインパクトを受けにくくなっています。

また、個人の持ち分が明確で転職や離職時の持ち運びも容易であるため、確定拠出年金はポータビリティの高い制度とも言われます。欧米ほどではないにせよ、転職が一般的になるに従って、会社側にとっても優秀な中途入社社員を呼び込む受け皿の一つとして、確定拠出年金を導入するケースも増えています。

次回は、確定拠出年金の普及が進んでいる海外の事例について見てみましょう。

筆者プロフィール:本庄洋介

フィデリティ投信 法人/年金ビジネス本部 シニアマネージャー。

2006年フィデリティ投信入社。確定拠出年金を含む法人/年金業務全般に携わる。2014年にはフィデリティ・インターナショナルのロンドン拠点に駐在し、英国の確定拠出年金市場の調査に従事。京大院卒。公益社団法人日本証券アナリスト協会検定会員。1級DCプランナー。
※写真は本文と関係ありません

(フィデリティ投信 本庄洋介)