認知症が増加している。しかし、米国の疫学研究「フラミンガム心臓研究(FHS)」によると、先進国の認知症罹患率が減少し続けているらしい。

 FHSは1948年に始まった集団健康調査。生活習慣と心血管疾患との関係を延々と追跡したデータによって、高血圧や脂質異常症といった心血管疾患の危険因子が明らかになるなど、世界の診療に大きな影響を与えてきた。

 70年代に第2集団(開始時平均年齢男性37歳、女性36歳)、2005年には第1集団の孫世代に当たる集団(同40歳)に対する追跡調査がスタート。今回の報告は75年に始まった認知症に関する調査データを基にしている。

 研究者は60歳以上の5205人を対象に認知症の罹患率を検討。調査期間を70年代後半〜80年代前半(第1区分)、80年代後半〜90年代前半(第2区分)、90年代後半〜2000年代前半(第3区分)、00年代後半〜10年代前半(第4区分)に分け、それぞれの5年罹患率を計算した。

 その結果、第1区分に比べて、第2区分では認知症の罹患率が22%減少。第3区分では同38%、第4区分では44%も減少していた。

 さらに罹患率の減少は、最終学歴が高卒相当以上の集団でのみ観察されていることがわかった。この傾向は認知症のみならず、心血管疾患や脳卒中でも示されている──ただし、肥満や糖尿病は例外的に増加していた。

 認知症を発症した患者371例の検討では、動脈硬化型の認知症が顕著に減少したのに対し、アルツハイマー型の認知症は横ばい〜多少の減少にとどまった。

 実は、これまでにも先進国で認知症の罹患率が減少しているという報告は複数あったのだが、肝心の医療者が懐疑的で話題にすら上らなかった。今回ようやく権威あるFHSで裏付けられたわけだ。

 認知症が減少している明確な理由はわからないが、研究者は「高血圧や高血糖の是正、脂質異常症の予防で、認知症リスクを軽減できる可能性がある」としている。

 結局、脳・心血管疾患も認知症も生活習慣の改善が予防の鍵らしい。あとは実行あるのみ、である。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)