米国では「モバイルヘルス」は当たり前!?(shutterstock.com)

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 米国では「モバイルヘルス(エム・ヘルスとも呼ぶ)」という言葉が定着するところまで、スマートフォンやタブレットなどのデバイスを用いた健康管理が進んでいる。

 その流れはもはやデータ「管理」にとどまらない。デバイスを用いた「診察」を可能にするアプリの開発も進んでいる。簡単な付属品をつけるだけで、血糖値を測定したり、簡単な心電図などが取れたりするのだ。もちろん、血糖値が高すぎたり低すぎたりすればアプリは警告を発するし、脈に異常に不安を感じれば担当医に心電図を送ることもできる。

 そんな中、米国で最も用いられている血圧測定アプリの信頼性に大きな疑問を投げかけるデータが、電子版「JAMA Internal Medicine」(3月2日)に掲載された。血圧測定アプリは、80%近くの「高血圧」を見逃してしまうというのだ。

41%で自動血圧計の値と15mmHg超の乖離

 今回、問題視されたアプリは、米国AuraLife社が開発した「The Instant Blood Pressure app」。スマートフォンの下サイドを胸につけ人差し指でカメラレンズを抑えると、そこから得た情報を用いて血圧を自動的に「推算」する(AuraLife社の説明)という触れ込みだ。2014年6月5日に販売が始まって以来、15万回近くダウンロードされた大人気のアプリだ。
  
 しかしジョンズホプキンス大学医学部のTimothy B. Plante氏らが、アプリで推算した血圧と通常の自動血圧計で測定した血圧を比べたところ、看過できない不一致が認められた。

 85人で測定した上の血圧(収縮期血圧)を比べると、アプリの値が自動血圧計と5mmHg以内しか違っていなかったのは24%のみ。すなわち、アプリの値の76%は自動血圧計と5mmHg以上もかけ離れていた。また41%では、アプリの値と自動血圧計の差が15mmHgを超えていた。これでは血圧を「推算」しているとは言い難い。

 その結果、アプリの値を信じると「高血圧の77.5%が見逃されてしまう」とPlante氏らは試算している。また降圧薬服用者がアプリの値を信じ、降圧薬の量を自己判断で減らす危険性も、同氏らは危惧している。
 
 なお、このアプリ自体は、理由は不明だが現在は公開が中止されている。しかし同様のアプリが今でも(米国では)ダウンロード可能だ。
モバイルヘルス・アプリ規制の空白を問題視する声

 このような問題が生ずるのは、モバイルヘルスに用いられるアプリが「医療機器」として扱われていないためだ。すなわち、医療機器であれば当然に求められる「正確性の確認(バリデーション)」がないまま、あたかも医療機器のように汎用されている。
 
 この点については既に2014年7月の時点で、南メソジスト大学デドマン法科大学院のNathan G. Cortez氏らが、「New England Journal of Medicine」誌で懸念を表明していた。

 同氏らによると、産業界や議会には、米国食品医薬品局(FDA)によるモバイルヘスル・アプリへの規制は、技術革新を停滞させるとの懸念があり、積極的規制に至っていないという。 しかしFDAが監督すればこそ、モバイルヘルス・アプリに対するユーザーの信頼は高まり、より付加価値の高い技術革新につながるとCortez氏らは主張する。

 そもそもモバイルヘルス・アプリ全般への信頼性が地に落ちてしまっては、ビジネスとして成立しない。モバイルヘルスの波が押し寄せた時、わが国にはどのような枠組みが用意されているのだろうか----。
(文=宇津貴史:医学リポーター)