平沢勝栄公式サイトより

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「これ、ほんとうに女性の方が書いた文章ですかね?」
「(女性が書いたとは思えないほど)日本語としてちょっと汚い」

 またしても安倍政権が馬脚を現した。「保育園落ちた日本死ね」ブログに対し、国会で「一体誰が書いたんだよ、それ!」とヤジを飛ばした張本人・平沢勝栄衆院議員が、本日、『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)に生出演。ヤジの言い訳を延々繰り返した挙げ句、冒頭に挙げたように、待機児童問題で怒りの声をあげている人びとを愚弄する発言を行ったのだ。

 番組を観ていない人のために、本日、平沢議員が何を語ったかを紹介しよう。まず、平沢議員は、ヤジを飛ばしたことについて「誤解されてるから真意を説明したい」と釈明。「ヤジを飛ばしたことには心からお詫びを申し上げたい」と言いつつ、すぐさま「ただしですね」とつづけ、ヤジの理由を滔々と説明した。

 平沢議員いわく、国会質疑の前に行われた理事会で、民主党・山尾志桜里議員から「保育園落ちた日本死ね!!!」ブログの内容を記したパネルを使いたいと申し出があったが、出所が不明なものは使えないというのはルールであり、これには共産党などの野党も含むかたちで理事会の回答はNOだった。なのに、山尾議員は国会質疑で「与党のみなさんがこれをフリップで見せてはいけないと言われた」と発言。このことに平沢議員は怒ったのだという。

「(フリップを出すのを)止めたのは与党だけじゃない。民主党除く野党も止めたわけ。にもかかわらず、与党だってことで攻撃したから、わたしたちはそれは事実とは違うということで、アレしたわけ」(平沢氏)

 つまり平沢議員は、ブログ内容に噛みついたんじゃない、山尾議員の発言にヤジを飛ばしたのだ、と述べたわけだが、それがなぜ「一体誰が書いたんだよ、それ!」というヤジになるのか。手続き上の問題を問うたと言うなら、「野党も合意しただろ!」「与党だけじゃない!」というヤジになるはずだ。

 この苦しすぎる言い訳に、同番組のレギュラーコメンテーターであるテレ朝の玉川徹氏は「あのヤジをして何の意味があるんですか?」と尋ねたが、平沢議員は「中身を言ってるんじゃない」「だからヤジはごめんなさいって謝ってる」「予算委員会の長年のルール(を破ったからヤジを飛ばした)」の繰り返し。ついに業を煮やした玉川氏は、平沢議員に「私が知りたいのは、なぜヤジをしたかなんです」と言い、問題の焦点を突きつけた。

「政治の堕落だと思うんですけど、長い時間かかって国会で待機児童問題ってまだ解決できてないわけですよ。でも、お母さんたちは切羽詰まった状況です。それなのに全然解決できていない。誰に言ったらいい? 市役所に言ったらいいの? 国会に言ったらいいの? どっかの政党に言ったらいいの? 誰に言っても解決できない。『日本死ね』って言い方でしか表現できなかったんだっていうのはわかるって、(国会前に抗議のために集った)みんなおっしゃってますよ」(玉川氏)

 あのブログが共感を呼んだのは、ほかでもない、同じ思いを抱えた人たちが数多くいるからだ。保育所に入れず職場復帰できない母親、家賃よりも高い認可外保育園に預けるしか道がない家庭、その認可外にすら入れないという現実......。女性の活躍を声高に叫ぶ一方、何も解決しない現状に「日本死ね」という絶望の言葉が吐き出された、その意味を平沢議員は何も理解していない。

 現に、平沢議員はきょうの放送で、こう述べた。

「とくにこの『日本死ね』というのはですね、自殺とかいじめとかで使われる言葉なんで。『日本死ね』って言葉はあまりにもちょっと、子どもの教育にも影響があるんじゃないかと」
「この『なんとか死ね』っていうことに市民権を与えることがいいかどうかなんですよ」

 自分たちは汚いヤジを国会で飛ばしておいて、この言い様。母親たちの切羽詰まった怒りをまったく理解していないばかりか、このあと平沢議員は、冒頭のように「これ、ほんとうに女性の方が書いた文章ですかね?」「日本語としてちょっと汚いなって」と言い出したのだ。

 ようするに、平沢議員はヤジを反省するどころか、何が問題になっているかもわかっていない。だから「表現がよくない」と問題の本質をずらし、「『死ね』なんて女は言うべきでない」などというジェンダーバイアスがかかりまくった女性差別発言が出てくるのだ。

 そもそも、待機児童問題に苦しめられているのは母親だけではなく、父親も同じ。実際、保育所を落ちて育休を取ろうとした男性が会社をクビになったケースだって起こっている。仮にこのブログを男性が書いていたとして何が問題なのか。ここからわかるのは、平沢議員が、育児を最初から女性だけの問題と決めつけていることだ。

 さらに、呆れたことに平沢議員は、この生出演のあと、ヘイトスピーチの根絶を検討する「差別問題に関する特命委員会」の会合に委員長として出席し、「ブログに『死ね』という言葉が出てきて、表現には違和感を覚えている」と発言。あたかも「保育園落ちた日本死ね」というのがヘイトスピーチであるかのように語ったのだ。ヘイトスピーチとは、人種や国籍、性別など変更不可能な事柄を理由に暴力や差別的行為を煽動したりする発言のことであり、当然ながら「日本死ね」という政策批判がヘイトスピーチにあたるわけがない。これはヤジ以上に悪質な発言だろう。

 ヘイトスピーチの根絶を話し合う場で、しかもその委員長が、政権に都合の悪い発言は全部ヘイトスピーチとして取り上げる......。平沢議員のヤジの言い訳といい、この問題といい、レベルの低さが明らかになった安倍政権。だいたい、平沢議員はヤジを飛ばしている模様をカメラにばっちりおさめられていたために特定されたが、国会でヤジを飛ばしたのは彼だけではない。少なくともあの日、平沢議員の「一体誰が書いたんだよ、それ」以外にも、「やめろよ、やめろよ、もう」「誰が書いたの? 誰が書いたの!」「本人に会ったのか!?」「出典は? 出典! 出典は何だよ、出典は!」「うざーい!」というヤジが飛び交っていた。一体、何が「うざーい!」なのか、発言者は名乗り出てきて説明すべきだろう。

 そして、もうひとつ。きょうの放送で平沢議員は何度も「待機児童問題は前倒しで、予算もつけてやっている」と強調したが、既報の通り、待機児童は昨年、5年ぶりに増加し、2万3167人も入所できない事態となっている。こうして「やっている」と言いながら、待機児童問題が遅々として進まず、そればかりか安倍政権の新しい子育て支援によって3人以上の子どもを抱える家庭で保育料が多いところで月3万円も増額されるなどの問題が、なぜ起こっているのか。その根底には何があるのかを、じつはきょうの放送で玉川氏が平沢議員に突きつけていた。

「もっとはっきり言いますよ。たとえば、結局こういう待機児童問題っていうのもね、女の人が働くからこういう待機児童問題みたいなのが生まれるんだ、と。逆に言えば、働かないで家を守っていればこんな問題なんかないんだって思いが、根底にありませんか?」(玉川氏)

 この質問に平沢氏は「ないない、まったくないです」と答えていたが、そんなはずはない。平沢氏は安倍首相が会長をつとめる創生「日本」や、神道政治連盟国会議員懇談会、日本会議国会議員懇談会などの極右思想に傾倒した組織に所属するが、それらの組織の主張は"伝統的家族観を守ること"、すなわち"女の役割は家を守ること"といったものだ。経済政策が頭打ちであるため、労働力を捻出すべく「女性の活躍」を謳いはじめたものの、根本的には「女は子育てに専念すべし」という価値観であるため、働く母親の声に真摯に耳を傾けることもなければ、平沢議員の「女性の方が書いた文章ですかね?」という発言に明らかなように待機児童問題を母親だけの問題として捉え、具体的政策としては何ひとつ一向に進まないのだ。

 しかも、これは本丸である安倍首相にも言えることだ。安倍首相は著書『美しい国へ』(文藝春秋)のなかで、少子化対策についてこう述べている。

〈従来の少子化対策についての議論を見て感じることは、子どもを育てることの喜び、家族をもつことのすばらしさといった視点が抜け落ちていたのではないか、ということだ。わたしのなかでは、子どもを産み育てることの損得を超えた価値を忘れてはならないという意識がさらに強くなってきている〉

「子どもを育てることの喜び」や「家族をもつことのすばらしさ」以前に、生活のために子どもを預けて働かざるを得ないこの社会状況を、安倍首相は汲み取ろうとはしない。しかも少子化の原因は「子どもを産み育てることの損得を超えた価値を忘れているからだ」とは......。こんな考えで待機児童を含む子育て支援を真剣に取り組むと言われても、眉唾にも程がある。

 安倍政権の女性・子育て政策とは、詰まるところ「産めよ殖やせよ」の一辺倒でしかない──。この本質は、今後もどんどん露呈されていくだろう。
(水井多賀子)