幹細胞で眼組織を再生する2つの研究が同時にNature掲載、角膜の難病や白内障を低リスクで治療可能に

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白内障の治療を研究している2つの無関係な研究チームからほぼ同時に画期的な研究成果が発表されました。10日付の Nature オンライン版に掲載されます。

2つの成果の打ちひとつは、皮膚の細胞から目に移植可能な様々な細胞組織を作る技術、もう一方は、白内障やその他の眼病から損傷を受けた水晶体を幹細胞を用いて再生させる技術です。最初の研究は、iPS 細胞から人体に移植可能な眼細胞を培養するというもので、大阪大学大学院医学系研究科の西田幸二教授のチームによって報告されました。発表によると、成人の iPS 細胞から円盤状に培養された眼の細胞は角膜、網膜、水晶体、視神経など数種類の組織を形成できたとのこと。そして、その角膜部分を実験用に角膜上皮を損傷したウサギへ移植したところ、視力を回復することができたとしています。

 

オーストラリア・メルボルンの眼科研究センター所長マーク・ダニエル氏は、この研究に対し「目の組織をそっくりそのまま作り上げるというまったくSFのような技術で、ただただ驚くばかり」と Nature にコメントしました。

研究チームは、いずれ人への適用も可能になると考えており、2016年中にも臨床研究の申請をしたいとのこと。さらに角膜上皮だけでなく角膜内皮の臨床研究も、2017年にも申請すべく準備するとしています。また、角膜以外の部分の再生医療にも大きな可能性があるとのこと。


論文は Co-ordinated ocular development from human iPS cells and recovery of corneal function( Ryuhei Hayashi,Yuki Ishikawa,Yuzuru Sasamoto,Ryosuke Katori,Naoki Nomura,Tatsuya Ichikawa,Saori Araki,Takeshi Soma,Satoshi Kawasaki,Kiyotoshi Sekiguchi,Andrew J. Quantock,Motokazu Tsujikawa & Kohji Nishida)

もう一つの研究は、白内障にかかった水晶体を除去する手術の際、その方法をわずかに調整することで、これまで一緒に破壊されてしまうことが多かった水晶体周辺の再生能力を持つ細胞を保存・維持しようとするもの。これによって水晶体の容器となる部分に幹細胞が増殖し、水晶体が再生されるとしています。

この方法はとくに先天的に白内障を持って生まれてきた幼児に有効で、水晶体除去後に発生するかもしれない様々な後遺症の軽減にもつながるとされます。

研究を行った中国・中山大学と米カリフォルニア大学の研究チームは、まずウサギや猿による実験での成功を経て、中国で生まれた2歳までの先天的白内障患者と対象に臨床試験を実施、全員が8か月前後で機能する水晶体を再生できたとのこと。

ただ、この研究は再生能力の低下した大人、特に高齢者に対してはまだ研究途上で、その成功率がどの程度になるかは、今後のさらなる研究を待つ必要がありそうです。

いずれの研究も眼病に悩まされている人にとっては、人工レンズなどを入れずに視力を取り戻せるかもしれない画期的な研究といえそうです。どちらも臨床またはその前段階まで進み、成果も見えてきていることから、すこしでも早く、そして多くの患者を救えるようなるのを期待したいところです。

論文は