80分、宮間のクロスに岩渕が頭で合わせて決勝弾。五輪出場を逃した失意と戦いながら、2試合連続ゴールでチームを勝利に導いた。 写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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 最終戦となった北朝鮮戦、後半頭からピッチに立った岩渕真奈の心には、いろんな感情が渦巻いていた。このメンバーで戦える最後の試合という寂しさ、五輪出場を逃した悔しさと申し訳なさ、そして応援してくれるサポーター、これまで支えてくれた人々への感謝――。だからこそ、刻まれていく時を噛み締めるように、ひたすら勝利だけを追い求めた。

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 0-0で迎えた80分、宮間あやからのクロスに岩渕がヘディングシュートを突き刺し、値千金の決勝弾。ディフェンス陣を含めて最後まで全員で守り切って掴んだ勝利は、改めてなでしこジャパンがあるべき姿を示したという点で大きな意味があるだろう。
 
「とりあえず勝利につながる点を取れて良かったですけど、ナガちゃん(大儀見)が前で潰れてくれてこそ(のゴール)。良いボールを上げてくれた宮間さんに感謝だし、ナガちゃんに感謝です。私はたくさんの人に支えられて、今ここにいる。今日の勝利は、スタッフも含めて勝ち獲った結果だと思います」
 
 岩渕にとって、アシストをしてくれた宮間は特別な存在だ。「若く、やんちゃだった」(岩渕)時から、ピッチ上のみならず、サッカー以外の部分でもずっと面倒を見てもらってきた。初めてなでしこジャパンの合宿に参加した時に同部屋だったのに始まり、代表初ゴール(2010年2月11日/チャイニーズ・タイペイ戦)も宮間のアシストから。節目には必ず宮間との縁が存在する。
 
 五輪出場が消滅し、新たなスタートを切らなければいけない日に、「大好きな先輩」と慕ってきたキャプテンの宮間から次世代を担うべき岩渕への“ホットライン”でゴールが生まれたのも、運命だったのかもしれない。
 
「『こうなりたいな』と思う先輩たちと一緒に、サッカーをしてきました。ここでさせてもらった経験を活かして、私もそういうサッカー選手にならないといけないと思います」
 
 次の五輪は自国開催となる2020年の東京五輪。ホスト国には無条件で出場権が与えられる一方で、予選がないからこそ「やらなきゃいけないことはたくさんある」と岩渕は話す。そして、「どんなチームになるか分からないので、なんとも言えないですけど」と前置きしたうえで、今後のビジョンについてこう言葉を続けた。
 
「(東京五輪は)予選がないから出られるという気持ちで臨むような大会じゃありません。個人的には、出場はもちろん、その先の未来につながるような大会にしたいなと。ゼロからのスタートですけど、しっかり応援してもらえるようなチームを作っていきたいし、ピッチ内外の信頼を得て、チームを引っ張っていける存在になりたい」
 
 予選敗退という現実は変えられない。今後チーム再建に臨むなでしこジャパンにはきっと険しい道が待っているだろう。しかし、過去とは違い、未来は自分たち次第でどうにでも変えられる。再び世界の頂点に上り詰めるために――。憧れの先輩のような選手になるために――。岩渕の覚悟は決まった。
 
取材・文:小田智史(サッカーダイジェスト編集部)

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