8日、サロ・デ・ベニト駐日スペイン大使が日本記者クラブで会見。同国では、積極的な緊縮財政を基軸とする構造改革の進展で、国民の不満が高まり、政権党だった国民党が過半数割れし、左派政党が躍進したため連立政権を確立できない状態が続いていることを明らかにした。

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2016年3月8日、サロ・デ・ベニト駐日スペイン大使は日本記者クラブで会見した。2012年の経済危機を経て、経済状況は好転したと説明。その上で、積極的な緊縮財政を基軸とする構造改革の進展で、国民の不満が高まり、政権党だった国民党が過半数割れし、左派新党が躍進したため連立政権を確立できない状態が続いていることを明らかにした。発言要旨は次の通り。

スペインは2013年には経済危機に見舞われ、同年の国内総生産(GDP)は1.2%のマイナス成長だったが、2015年には好転し、3.0%のプラス成長となった。デフレからの脱却の途上にあるが、失業率が15年で22.5%と非常に高いのが懸念材料である。

2011年には国民党が186で過半数を得ていたが、2015年には国民党が123、社会労働党が90議席、第三党の左派新党PODEMOSが42議席と勢力を伸ばし、第4党のリベラル政党である市民党も40議席に躍進した。このように4つの政党が乱立し、2〜3の政党の連立が必要となっている。首班指名に向けた作業が昨年12月から進められているが、成立に至っていない。

構造改革はEUからも求められ、不可避である。この結果、公共赤字は12年の9%から3年間で6%に減った。公共支出が大幅に抑制され、社会保障の削減により、スペイン国民の不満を背景に反緊縮の動きも活発化している。国民党は第1党であるのは変わりがないが、第2党社会労働党との政策の隔たりは大きい。連立交渉が、不調に終われば、5月から6月に総選挙になる。予算は成立しているので、経済成長を持続できればいいと考えている。

こうした状況は欧州では特殊ではない。スペインでも高齢化が進み、中国、インドなど新興国に追いかけられている中で、構造改革は不可避だが、不満分子を抱える。(経済危機を経験した)ポルトガル、ギリシャでも左翼政党の連立となっている。両国では左右のポピュリズム政党も出現し一定の支持を得ている。

難民問題は欧州連合(EU)としては大きな問題だが、スペインでは深刻な問題にはなっていない。高い失業率故い就職が難しいためだ。それでも、スペイン政府は1800人の避難民の受け入れを決定、まず460人を(先行的に)受け入れることを表明している。ギリシャ、イタリア、トルコに対してEUからシリア難民向け資金として多額の援助を拠出しており、スペインとしても粛々と役割を担っていく。

高い失業率を背景に、スペインからドイツなどへ20〜30万人が移住したのは事実だ。一方で、つながりの深い南米などの人たちを400万人も受け入れてきた。各政党の反応の中に外国人を排斥するような傾向はない。南米、アフリカからも過去に多くの移民を受け入れてきた。

カタルーニア州の独立問題が取りざたされているが、住民投票は憲法上許容していない。同州はGDPの20%を占め、経済的文化的に重要な地域である。スペインはいくつかの王国が統一されて建国した。カタル―ニア州議会で独立派は48%に達したが、分離独立は認めていない。憲法上独立は不可能だ。認めればEUなど国際社会への影響は必至であり、大きな問題に発展する。(八牧浩行)