岩渕真奈(バイエルン)、大野忍、川澄奈穂美、中島依美(いずれもINAC神戸)、横山久美(AC長野)、大儀見優季(フランクフルト)――意地の6発だった。

 試合前、先に行なわれていた中国対韓国の試合に中国が勝利したことで、日本のリオデジャネイロオリンピック出場の可能性は完全に消滅した。残されていたわずかな望みも失った状態で戦ったベトナムとの第4戦。

 佐々木則夫監督は「東京オリンピックにつなげる試合を」と中国戦のスタメンから8名を入れ替えた。ウォーミングアップ時には、主力組がボール拾いに走り、いつもの宮間あや(湯郷ベル)の鼓舞に呼応するように、大儀見、近賀ゆかり(INAC神戸)らもスタメンのアクションに大声で応える姿があった。

 今大会でベトナムはオーストラリアに9失点しているものの、組織化された守備と限りあるカウンターチャンスの1本狙いという明確な意図を貫く。リオ行きを決めた中国に2失点、北朝鮮には最後の最後で1失点を喫したものの、あと少しで引き分けに持ち込めるチームにまで成長していた。近年、ベトナムとの対戦は"得失点差を稼ぐ相手"ではなくなってきている。簡単にゴールを奪える相手ではないが、今のなでしこジャパンにとって、この一戦は、ただの勝利だけで終わるわけにはいかなかった。

 浴びせたシュートは22本。ゴール前を固めるベトナムの守備網を最初に打ち破ったのは岩渕。左サイドからの中島のクロスに、中央の高瀬愛実(INAC神戸)を一枚飛ばして岩渕が合わせた。しかし、その2分後、岩清水梓(日テレ・ベレーザ)がグエン・ティ・ホアの侵入を止めた際にファウルを取られ、まさかのPKを献上。GK山下杏也加(日テレ・ベレーザ)はコースを読んだがフィン・ヌーが決めきった。

 前半終了間際に大野のゴールで勝ち越し、折り返した日本。ベトナムの健闘があるにせよ、この対戦で"競り勝つ"では意味がない。80分の川澄のゴール以降、途中出場した横山、大儀見らのゴールラッシュで圧倒。6−1で今大会初の勝利を手にした。今のなでしこジャパンに必要な形での勝利だった。

 自在な動きでチャンスに絡んでいたのは中島だ。この試合では右サイドバックでスタートしたが、20分過ぎにはボランチへポジションチェンジ。その後も左右のサイドに流れ、幾度となく鋭いクロスでチャンスを作り続けた。83分にはループ気味のシュートがポストに当たり、そのままゴール。日本に4得点目をもたらした。

 今年に入ってから、1月の石垣島、2月の沖縄キャンプで好調をキープしていた中島。緩急を蹴り分けることができるクロスは中島の強みのひとつだ。さらに2列目からの飛び出しは攻撃アクセントになる。だが、変動するポジションに、なかなかその強みを発揮しきれずにきた。

 この予選で途中出場を含め、中島はすべての試合のピッチに立っている。左サイドハーフの起用が2戦続いたが、その後は流動的。ピッチに立てるのなら、ユーティリティも強みと割り切った。格下とはいえ、他国もゴール奪取に手こずったベトナムを相手に中島のプレーは最もエッジが効いていた。

「複数のポジションができるというのは自分のいいところと言っていいのかわからないですけど......。監督に言われたところを責任を持ってやるしかないので、それでこうした結果が出たのはよかった」

 宮間の抱くイメージを理解し、トップに入る大儀見のポジションを予測する。動きながら流れの中で、スピードを落とさずにボールをキープし、前方へラストパスを送れる数少ない選手だ。

 そしてもうひとり、バイタルエリアでコンスタントに絡んでこられるようになったのが横山。この日も後半途中から大儀見とともに得点を挙げるターゲットとして送り込まれた。そこで魅せたのは、90分のゴール。宮間からタテに入ったボールを大儀見がキープし、マイナスへ戻したところを宮間がシュート。GKがはじいたところを狙っていた横山がツメた。このタテの攻撃パターンは彼女たちが求め続けた形。痛快な流れだった。

 中島、横山は東京オリンピック世代。このなでしこにしかない攻撃のリズムをそのどまん中で体感し、反応することができるこのふたりの成長は、この予選において芽生えた未来の希望だ。この予選で日本女子サッカー界が失ったものは計り知れない。けれど、16年前のなでしこたちも同じ経験を繰り返し、そこから這い上がって世界一へとのぼりつめた。だから、強くなれたのだ。次なるステージを目指すものたちは、栄光の数ではなく、その戦う姿を継承していかなくてはならない。

早草紀子●取材・文 text by Hayakusa Noriko