3月6日のびわ湖毎日マラソンでリオ五輪の男子マラソン代表選考会がすべて終了した。男女の日本代表は3月17日に発表されるが、誰が選出されるのか。一足先に予想してみたい。

 リオ五輪のマラソン代表(男女各最大3枠)の選考は、昨夏の北京世界選手権で8位以内に入った日本人最上位者に内定が与えられるも、男子は該当者なし。日本陸連設定記録(男子は2時間6分30秒)を突破した選手もいなかった。

 そのため、福岡国際マラソン(12月)、東京マラソン(2月)、びわ湖毎日マラソン(3月)の国内選考会で日本人3位以内に入った選手の中から、記録、順位、レース展開、タイム差、気象条件などを総合的に判断して、本大会で活躍が期待できるランナーが選考されることになる。各大会で日本人3位以内に入った選手は以下の通りだ。

【福岡国際マラソン】
(3)佐々木悟(旭化成)  2時間8分56秒
(5)高田千春(JR東日本)2時間10分55秒
(7)大塚良軌(愛知製鋼) 2時間12分46秒

【東京マラソン】
(8)高宮祐樹(ヤクルト)  2時間10分57秒
(10)下田裕太(青学大)  2時間11分34秒
(11)一色恭志(青学大)  2時間11分45秒

【びわ湖毎日マラソン】
(2)北島寿典(安川電機) 2時間9分16秒
(4)石川末廣(Honda)   2時間9分25秒
(5)深津卓也(旭化成)  2時間9分31秒
※( )内の数字は全体での順位

 タイムだけを考えると、福岡で2時間8分56秒をマークした佐々木悟(旭化成)、びわ湖で競り合った北島寿典(安川電機)と石川末廣(Honda)がトップ3となる。マラソンは気象条件やレース展開で記録が大きく変わってくるため、タイムだけの単純比較はできない。だが、今回はこの3人でスンナリと決着しそうな雰囲気だ。

 福岡を走った佐々木は、2時間3〜4分台の自己ベストを持つ外国人選手に終盤まで食らいついていたため、レースの評価は高い。タイムも最速のため、真っ先に選出されるだろう。

 びわ湖を2時間9分台前半で走破した北島と石川は、気温が19.8度と暑かったことを考慮すれば2時間8分台の力は十分にある。4選手による30km以降の「日本人トップ争い」も見応えがあり、ともに自分から仕掛けたという点も良かった。特に北島は、40km過ぎで石川を逆転した後に先行していたアフリカ勢をかわし、優勝者に5秒差まで迫った走りは高く評価できる。

 有力選手が集まった東京は、高宮祐樹(ヤクルト)が日本人トップに輝くも、優勝者に4分01秒という大差をつけられたのがマイナスポイント。びわ湖で日本人2位に入った石川を上回るのは難しいだろう。

 現役最速タイムを持つ今井正人(トヨタ自動車)は昨夏の髄膜炎で入院したことが響き、ロンドン五輪(6位)とモスクワ世界選手権(5位)で入賞している中本健太郎 (安川電機)もうまく合わせることができなかった。福岡とびわ湖に出場した川内優輝(埼玉県庁)にはかつてのような勢いはなく、リオ五輪の選考会は有力選手の「自滅」が多かった印象が残る。

 条件に恵まれなかったという側面はあるものの、今回の当確ラインは2時間9分前後という低水準。世界トップは2時間2〜4分台ということを考えると、非常に寂しいタイムだ。五輪選考会で2時間7分台に届かなかったのはシドニー五輪(2000年)以来。最速タイムが2時間8分56秒というのはアトランタ五輪(1996年)の選考時よりも悪い。

 ちなみに石川が選出されれば、リオ五輪を36歳11カ月で迎えることになり、アトランタ五輪に出場した谷口浩美(36歳3カ月)を超え、日本男子マラソンの「五輪最年長代表」となる。そんな石川のがんばりは立派だと思う一方で、「このメンバーで世界と戦えるのか?」という懸念もある。代表メンバーの編成方針は「メダルを含めた複数入賞」を目指すことだが、選手たちは日本陸連が定めた基準を満たしているだろうか?。

 日本人上位3人を選ぶなら、先に挙げた佐々木、北島、石川の3人で異論はないだろう。だが、「メダル・入賞を目指して戦える選手かどうか」という評価もキッチリすべきだ。もし、その基準を満たしていなければ、代表枠を「2枠」もしくは「1枠」に減らすことも考えた方がいい。厳しいジャッジを下すことで、選手たちの意識を「世界」へ向けることができるからだ。

 その結果として男子マラソン枠が削減した場合のみ、今回限定の措置として「東京五輪強化枠」をつくっていただきたい。オリンピックのレース、その重圧はオリンピックでしか経験できない。入賞を狙えない選手にリオ五輪を走らせるより、よっぽど意味のあることだと思う。

 たとえば、22歳の服部勇馬(東洋大)と25歳の丸山文裕(旭化成)のふたりはどうだろう。服部は東京で30kmからの5kmで14分54秒という高速ラップを刻み、丸山はびわ湖で30km過ぎに日本人トップを独走、2時間9分39秒をマークした。

 ともに各選考会で日本人3位以内には入らなかったものの、「東京五輪強化枠」にふさわしい存在感を見せた。服部と丸山はともに今回が初マラソン。ラストスパートでギアの入れ方を間違えたが、世界で戦うんだという「気持ち」は今回の選考会で十分に示している。

 残念ながら、リオ五輪の日本代表選手(候補)では、本番でのメダルは絶望的な状況だと言っていい。それならば、若い力に期待したい。東京五輪というニッポンが世界に誇る超ビッグイベントまで、あと4年半。男子マラソンがメダルをつかむためには、日本陸連の「英断」が必要である。

酒井政人●取材・文 text by Sakai Masato