台湾の台北市内で8日、旧日本軍に随行した従軍慰安婦をテーマとする博物館「おばあさんの家―平和と女性人権館」がオープンした。開館セレモニーには馬英九総統も出席し、日本が台湾人の戦争被害について補償していないのは「不公平だ」と批判した。(写真は中央通訊社の8日付報道の画面キャプチャー)

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 台湾の台北市内で8日、旧日本軍に随行した従軍慰安婦をテーマとする博物館「おばあさんの家―平和と女性人権館」がオープンした。開館セレモニーには馬英九総統も出席し、日本が台湾人の戦争被害について補償していないのは「不公平だ」と批判した。

 馬総統は「従軍慰安婦は強制された性奴隷」との立場で、日本は補償と謝罪をすべきだと主張している。台湾メディアの中央社通訊によると、開館セレモニーでスピーチをした馬総統は、台湾で1947年に発生した2.28事件に巻き込まれて殺害したとされる沖縄出身の青山恵先さんの遺族に対して、台湾の裁判所が、台湾政府は600万台湾ドルの補償金を支払うよう命じる判決を言い渡したことに触れた。

 2.28事件は日本が敗戦した後に台湾に進出した国民党に対する台湾人の武装蜂起だ。1947年2月28日に発生した。蜂起は台湾全土に及んだ。国民党側は大陸から大部隊を送って鎮圧した。国民党支配に反抗的あるいは犯行の疑いありというだけで連行し、裁判なしで殺害した例も多かった。台湾政府は1992年に、同事件の犠牲者は最大で2万8000人との見方を発表した。

 青山さんら事件当時に台湾にいた沖縄人は、国民党側の使う北京語を理解できなかったため、「台湾人」と誤認されて殺害されたとみられている。息子の青山恵昭さんは補償を求めたが、同政府・内政部は「日本政府は、台湾人軍人・軍属への戦後補償や慰安婦への補償を行っていないので、『平等の原則』から賠償は認められない」と拒否した。

 青山さんが訴訟を起こしたところ、裁判所は行政院(台湾政府)に対して、補償金を支払いを命ずる判決を言い渡した。

 中央社によると、馬総統は、「228事件の賠償は台湾人に限定されていない」と、日本政府を批判した。

 さらに、下関条約により日本の敗戦まで台湾人は「日本の臣民」だったと指摘。日本が台湾人慰安婦への補償を行っていないことについて、日本政府は、当時の「臣民」に対する責任を免れることができないと主張した。

 さらに、「われわれは外国人も一視同仁(平等にいつくしむ)に扱う。日本はどうして、本国人に対しても、もっと善意を表すことができないのか? これは、われわれが疑問に思う点である」と論じた。

 馬総統は、「私は反日ではない。日本の(統治時代の)台湾に対する貢献は、同じように記念する」と述べ、「日本は昨年、侵略と植民について謝罪した」と2015年の安倍首相の談話は評価した上で、「しかし慰安婦については、非常に間接的(なロジック)だった」と批判した。

 さらに、元慰安婦や元日本兵の高齢化が進み、人数も減少していることから、「われわれが彼らのために発言する。われわれが発言せねば、だれも彼らの発言を手助けする者はいない」と述べた。

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◆解説◆
 従軍慰安婦の問題については台湾でも異論(李登輝元総統など)があるが、元日本兵の扱いについては、不満の声が多い。終戦にともない日本国籍を失った台湾や朝鮮出身の兵士の中からは、「補償を拒んでいることで日本は信頼を失っています。私は日本を愛しています。だからこそ、日本のために残念に思います」といった声も聞かれる。(編集担当:如月隼人)(写真は中央通訊社の8日付報道の画面キャプチャー)