株で生計を立てる芸人・お笑いトリオ「ザ・フライ」の井村俊哉

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株の運用で年収1千万円超えを果たした、結成7年目のお笑いトリオ「ザ・フライ」のツッコミ担当・井村俊哉。

インタビュー前編(「デイトレで最高1億円を動かす“株芸人”」)では、メンバーの今野和人と雨宮龍也にそのまさかのドケチぶりが暴露されたが、今回の後編ではいよいよ肝心の“絶対にやるべきお得な投資情報”も聞き出したぞ!

―そもそも株を始めたのはいつなんですか?

井村 大学生の時です。元々、お金が好きだったこともあってすんなり入れました。

あと、アンジャッシュさんやおぎやはぎさんに憧れて芸人になりたかったんで、いろいろネットで調べていたら、急なオーディションもあって大変だから株式投資で稼いでる人もいるよと書いてあるサイトがあって。アルバイトより空いた時間でできる投資のほうがいいかと思って。

―なるほど、芸のために株をやろうと! そして現在、株での年間収益は1千万円を越えているそうですが、徐々に上がっていったんですか?

井村 いえ、急にですね。始めて10年ですけど、嫁と出会って結婚したいなと思って本気になったんです。生活費ぐらい稼げるようになろうと。2011年頃、最初は100万から始めたんですけど、持っていたオリンパスの株などが上がってくれて、そこから資産が増えていきましたね。

―2013年には利益が1800万円だと聞きました。

井村 そうですね。アベノミクスもあったしタイミングも良くて、2013年からはコンスタントに4桁はいってますね。

―わずか5年でコンスタントに年収1千万円越え! それだけ儲けたら今や豪遊してんじゃないですか?

井村 いやー、それがあまりいいもの食べたいとも思わないし欲しい物もなくて、最近買ったのは投資用の新しいパソコンぐらいですけど…。でも最近、投資だと思ってマンションを買いました。嫁のローンですが(笑)。インフレ時代だから不動産価格も上昇してますし、おまけに節税にもなるんですよ。

―さすが高額所得者、タックスマネジメントも万全! でも、どういう仕組みなんですか?

井村 今は住宅ローン金利が1%以下まで下がっていて、そこに国の住宅ローン減税でローン残高の1%の税金を還付してくれるんで、借りるとお金が儲(もう)かっちゃうともいえる逆転現象が起こっているんですよ。例えば、住宅ローン金利が0.8%でも1%分の税金を納めなくてもいいことになるので、それでうちの嫁も税金がゼロ円になってます。今、使わないとソンな制度ですよ。

―なるほど〜、攻めの節税も含めて投資だと! でも思い通りにいかずに失敗したこともあるんでは?

井村 1、2日で600万円を損したことがありましたね…。自分が信じたものを曲げられなくて!

―若手芸人の年収の何倍!? それになんだか深いんですけど…。

井村 これには長い物語がありまして…。絶対に上がると思った銘柄を買って、実際に上がったんですけど、ちょっと下がるタイミングもあって。でもその時は、僕の持っているこの金の卵を奪い取ろうとしているだけだって感情的になっちゃって。それで対抗して買い足したんですけど、さらに下がってしまいました。それなのに「うわ、揺さぶってきてるわ! 負けねえ」と気持ちが入ってしまい、また買い足してしまって…悪循環に。

結局、ストップ安になって。1日の取引ではこれ以上値下げできないという限度があるんですよ。そこで売ればよかったんですけど、これだけビビらせるんだから反発ですごく上がるだろうと、また買うんですよね。で、翌日は上がると思ったら、ものすごく下からのスタートだったんです…。

でもその時、思ったのは「まだビビらせるか」と(笑)。「甘いよ! 全然買うわ、バカタレ」と結局、普段の20倍ぐらいの量の株を買ってしまった。

今野 証券会社の人も「まだ買うか、バカタレ」って思ってるよ!

井村 2年前の10月31日なんですけど、その時、日銀の追加緩和があって。追加緩和は「お金を大量に流しこむぞ」という黒田総裁の意思表示なんで、株が一気に上がるんですよ。で、キターと思ったら、まさかのダダ下がり。上がったのは不動産や金融関係だけで、僕の狙ってた新興系の業界の株は逆に資金が流出しちゃって。そこでさすがに売りましたが、たった一度の失敗で年間の利益の7〜8割が飛びました。

―なぜそこまで自分を信じられたんですか!?

井村 そういう時があるんですよ! あまりリスクを取ると冷静さを失って、希望的観測で状況を見るようになっちゃうんで、そうなるともうお終いですね(笑)。投資の世界では下がったら買い足すやり方をナンピン買いと言って「ナンピン買いはスカンピン」という格言もあるぐらいで。今はこれ以上値下がりしたら諦めて売るというふうにリスク管理するようになったので大丈夫…。ただ、実は今日もそれで80万ほど……。

―教訓になってないじゃないですか!

井村 でも、中にはほぼノーリスクでできるものもあるんですよ。

―えっ、ノーリスクで儲かる!? 教えてくださいよ〜!

井村 それは「IPO(新規公開株)」ですね。ひとり1口座で応募ができて、抽選に当たらないと買えないんですけど、まだ市場に出回っていない株なので人気が高く、初日に売ればほぼ確実に儲かります!

―どこで口座を開設すればいいの?

これから口座を開くならおすすめは野村ネット&コール。普通は購入必要額が口座にないと応募できませんが、ここはなくても大丈夫。岡三オンライン証券も無料でできます。申し込むのは無料だし、外れたからといってお金がかかるわけじゃないので、とにかくたくさん応募した方が当たる確率は上がります。

あとはSBI証券もいいですよ。ここは抽選に外れたら「チャレンジポイント」をくれて、貯めたポイントを使って応募すれば当選確率が上がるんです。約200ポイントあれば大物を引き当てられると言われています。

―なるほど〜。ちなみに井村さんはどんな会社で儲けましたか?

井村 去年は郵政三社(ゆうちょ銀行、かんぽ生命、日本郵政)が熱かった! 3社全部にそれぞれ応募したところ、合計40〜50口当たって100万ぐらい儲かりました。しかも株の発行数が多くて、全員プレゼント状態の証券会社もありました。あまりにオススメだったので嫁にも応募させましたし、母にも電話してやり方を教えましたよ!

―家族ぐるみで金儲けを…!

井村 宝くじの当選確率は1位だと1千万分の1(0.0000001%)とか天文学的数字だけど、IPOは1%〜5%で宝くじより断然高いんですよ。それに資産額や経験に関係なく、みんなと同じ条件で始められるからオススメですね。

あとは「株主優待のタダ取り」! 株主優待というのは、会社が株主にくれる自社製品や割引券などのことで自社製品以外にもクオカードやお米のところもあります。株主優待をもらうためには株をずっと持っている必要はなく、「権利確定日」の1日だけ持っていればいいんです。でもみんなそれを知ってるから権利が確定した後は株価が下がってしまう。だから、せっかく株主優待をもらっても株価は下がって収支がトントンになりがち。これを防ぐために「空売り」をするんです。

―「空売り」? そこをもうちょっと詳しく…!

井村 100円の株を買って、110円で売ったら10円儲かるというのが普通の考え方。でも空売りの場合は、何も持っていない状態でも証券会社から100円の株を借りて売ることができるんです。そしてその株が90円に下がった時に買って返せば、差額の10円が儲かる。つまり、値段が下がったら儲かるというのが空売りなんです。

権利確定日前日に「買い」と「空売り」の注文を入れて決済すれば、株価が下がった分も相殺されるので、値動きも気にせず済みます。あとは優待券が家に届くのを待つだけ。(※空売りには信用取引口座が必要)

これをするだけで株主優待がもらえるし、株主総会にも出られます。総会では社員たちがモーゼの十戒のように出迎えてくれて、コーヒーや菓子折りのサービスやビュッフェとかもありますよ。原宿に本店がある人気セレクトショップ、ユナイテッドアローズの総会はいつも渋谷のセルリアンタワーで、シェフがローストビーフを切ってくれ、ワインやビールを飲んで社長さんと一緒に写真を撮ったりとか(笑)。

―ほぼノーリスクでそんなに楽しいことが待っているとは…!

井村 そもそも100年の株の歴史を長い目で見れば、基本的に上がってるんです。日本はバブル期の高値を抜けてませんけど、欧米では去年史上最高値を付けている国もあります。つまり、どこのポイントで買ったとしても、ずっと持っていれば儲かっていたんですよ。

―ホントですか? つまり株価が下がっても売らずに持ち続ける「塩漬け」もOKということ?

井村 まぁそこは濁しますけど(笑)。倒産してしまってはダメですし、最近では東電や東芝、シャープなど信じてた日本企業が大きな不祥事を起こすケースもありましたし!

―しかしそこまでの“株モンスター”になるまでには相当、本とか読んで勉強を?

井村 読みましたね、図書館で借りて(笑)。おすすめはベンジャミン・グレアムという人の本。ウォーレン・バフェットという世界一になったこともある富豪のお師匠さんなんですけど、『賢明なる投資家』では割安な株に投資するスタイルとその判断基準などが書いてあります。あとウィリアム・オニールの『成長株発掘法』とか。僕自身は成長企業を追いかける“オニール・スタイル”でやってます。

―ちなみにスポーツ新聞などにおすすめ銘柄が書いてありますけど、信じてもいいんでしょうか?

井村 ダメだと思います。いや、株価って一時的なものなので、新聞が発行された時点で情報が古くなっているんですよ。ただ、息の長いテーマはありますし、新聞を読んだりして、どのサービスが伸びるかをなんとなく考えるだけでもいいんじゃないでしょうか。

例えば、自動運転システム関連株は注目されてぐっと上がってますし、ライザップの株価も10倍になってますからね。錦織くんが全米オープンに出るとヨネックスの株が上がったり。僕は気になるニュースを見たらいつも「株買えるのかなココ」って繋げます。

―時事問題に強くなりそうですね。では、賑(にぎ)わいそうなネタはありますか?

井村 南米で流行っているジカ熱関連ではマスクや防護服の会社の株が上がるかも…。北朝鮮のミサイル問題では防衛関連の会社とか。民泊関連とかも政府が本気を出したら…。あとはドローンとかオリンピックからも想定できますね。

―なんでも株に繋げられるんですね! やっててよかったと思うことはありますか?

井村 お金が増えて嫁が喜んでくれるのはよかったかな。あと株でいいなと思うのは、バイオ系の新薬開発などの企業の株を買うことは、つまり研究者の夢にかけて投資家が研究費を出すということ。それによって新しい薬が開発されて病気の人が助かるということにも繋がります。…僕は持ってないけど。

今野 じゃあ、ただの金儲けじゃねーか!

井村 金儲け以外の理由で株やってる奴はいないんだよ! ただ結果として社会貢献になってることもあるって話だよ! あと世の中に対しては税金を20%、今年なんてもう数百万払ってますから!

それに金儲けで世の中が動くのは健全だと思う。例えば、昔の独裁政権や共産主義みたいに理想や感情だけで世の中を動かそうとしたらメチャクチャになっちゃうけど、その尺度がお金だったら経済的に発展するし、何よりわかりやすいじゃないですか。それが資本主義のいいところだと思うんですよ!

―ちょっと話が大きくてわからなくなってきましたが…(笑)。

今野 ていうか、単純に収入で人を見るよね。

雨宮 同期でも月に20〜30回もライブに出てるすごい奴もいるんですけど、それでも給料が4万円とかだと「いや〜、ホント大変だよな」って憂うんですよ。俺らは月2回しか出られてないのに何様だよって(笑)。

井村 いや、でもそのビジネスモデルってなんだろうって思っちゃうんですよね…。

雨宮 いやいや、芸人としてまず20回も出てるとこにすごいなって思おうよ! そこがもうなくなっちゃったんですよ、彼は。

井村 お笑い、見るのは好きなんですよね、少なくとも(笑)。

今野 そこは単に「好き」って言ってくれよ!

―では最後に、井村さんにとって株とは何ですか?

井村 自分の知識を総動員して眠っている成長株を探し当てる…いわば宝探しです!

(取材・文/明知真理子 撮影/石川耕三)

 

お笑いトリオ ザ・フライ

井村俊哉 1984年9月10日生まれ 茨城県出身 群馬大学卒 血液型=O型 趣味=財務諸表を読む、決算資料を読む、経済番組・ニュースを見る、株主総会巡り、水泳、節約 特技=デイトレード、長期投資、IPO、株主優待のタダ取り、簡単にできる金儲け 資格=中小企業診断士

雨ちゃん 1986年4月20日生まれ 埼玉県出身 国際動物専門学校中退 血液型=B型 趣味=バイオリン・ゲーム

今野和人 1984年12月7日生まれ 東京都出身 国際基督教大学卒 血液型=AB型 趣味=読書(人文科学系全般) 特技=文学しりとり