審判の判定に異議を唱える行為に日本人はあまり積極的ではない。比較対象は外国人になるが、彼らに比べて品行方正。お行儀がいい。
 
 そうしたムードの形成に大きな影響を与えているのがメディアだ。主審の微妙な判定には突っ込まない。触れない。テレビは、問題の映像をスローで繰り返し流すようなことはしない。そこに何かを求めようとしていない。あっさりしすぎで、しぶとさに欠ける。バランス的に見て問題ありだと僕は思う。 
 
 そうした中、誤審ではないけれど、主審の振る舞いに唖然とさせられるシーンに遭遇した。なでしこジャパンのリオ五輪予選、対豪州戦。先制点を奪われた日本が、2失点目を許したシーンだ。阪口夢穂が蹴った左足のサイドチェンジがイタリア人の主審を直撃。ボールは日本にとって致命的な方向に転がっていったのだが、NHKの実況と解説はこのシーンでさえ、驚異的な我慢強さで冷静を装った。不運の一言で片付けようとした。運動神経をまるで感じさせないその不自然なボールのよけ方について、一切言及しようとしなかった。
 
 ピッチに転がる石と同じだと言われる主審。だが、キックのモーションに入ろうとした瞬間から、女性審判は石になろうとしていた。ぶつかりに行ったとは言わないが、その場で意図的に石になろうとした。直撃を回避する術を考える前に。失態は明らかであるにも関わらず、出演者は揃って石なので仕方がないと割り切ろうとした。
 
 もし、あの1点がなかったら。流れは全く違っていたはず。いま振り返れば、なおさらそう感じる。もし、日本の女性審判が、イタリアでこの手の失態を演じたら、どうなっていただろうか。50%増しで責められているであろうことは本田を取り巻くイタリアメディアの反応を見れば明らかだ。

 また、日本人が当事者ではなく第3者としてこの映像を見たら、もっと単純にビックリしているに違いない。中継がNHKではなくテレ朝で、松木安太郎さんが解説だったら、このシーン、どのような反応を見せていただろうか。思いのほか激高していないように思う。前で例えた日本人の審判を見つめるイタリア人より、優しい反応を示したのではないかと思う。
 
 外国人に弱いから、と言うわけではない。日本のメディアは、日本人の審判が犯した失策にも、滅多に批判しない。先日、出かけたJ1リーグ、川崎F対湘南の一戦でも、目を疑いたくなる判定に遭遇した。川崎が1−0リードで迎えた前半19分、湘南の高山薫が左から上げたセンタリングを、川崎GKチョン・ソンリョンがゴールエリア内でキャッチしようとした瞬間だった。競りかけた湘南CFキリノが、GKに身体をぶつけ、その際、ヒジに頭で衝撃を加えていたことは明らかだった。GKチャージ以外の何ものでもなかったが、ボールがこぼれ、ゴール内に転がると、高山啓義主審は湘南ゴールと判定。スコアは1−1になった。
 
 試合はここから得点の奪い合いになり4−4のスコアで決着した。夜、テレビで見たスポーツニュースは、その乱打戦にエンタメ性を求めようとしていた。問題のシーンは驚くことにカット。世の中に報じることを番組制作者が意図的に避けたのだった。僕の見立てによれば、あれがノーゴールの判定なら、試合は4−4の乱打戦にはならなかった。川崎Fが無難に勝利していた、となるにもかかわらず。
 
 試合の肝は、誤審と言いたくなる主審のジャッジにあり。その2週間前、横浜国際日産スタジアムで行われたスーパーカップ、広島対G大阪戦でも、試合を左右する誤審に遭遇した。柏好文のセンタリングをG大阪DF丹羽が顔面でストップしたシーンだ。主審の飯田淳平氏はこれをハンドと判定。広島にPKを決められG大阪は、その時点で0−2とされたが、あの判定がなければ試合はどうなっていたか分からない。