健康増進法違反で勧告を受けた「トマト酢生活トマト酢飲料」(写真はライオンのHPより)

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 消費者庁は3月1日、ライオンが販売する特定保健用食品(いわゆるトクホ)の飲料「トマト酢生活トマト酢飲料」に対して、誇大表示禁止を規定した健康増進法違反だとして勧告を言い渡した。トクホ製品としては初だ。

 同庁によると、ライオンの昨年9〜11月の新聞広告には、消費者庁から許可を受けたトクホ飲料だと示した上で、「薬に頼らずに、食生活で血圧の対策をしたい」とか、「臨床試験で実証済み! これだけ違う、驚きの『血圧低下作用』」などと表示しており、あたかもこの商品を飲むだけで、薬物治療によることなく血圧を下げる効果があるかのような誤解を消費者に与えているというのだ。

 トクホは、唯一、国からのお墨付きをもらって、健康を保つ特定の効果があることを表示できる食品だ。ただし、この商品の場合でいえば「血圧が高めの人に適している」という内容を逸脱してはならず、「血圧が下がる」といった治療の領域に踏み込んだ文言は禁じられている。

 問題となった新聞広告を見ると、血圧を下げたことが一目瞭然でわかる臨床試験データが載っている。トクホの許可を得るために、企業は、商品を用いたヒト試験でその効果や摂取量などの安全性を科学的に証明しなければならない。

 これに相当な費用と、通常1年以上の時間がかかる。その高いハードルを乗り越えて認められたのだから、商品の効果を示すデータを消費者に見せてアピールしたい気持ちはわかる。

 ただ、ここが二律背反で、評価法は薬のモノサシで行い、効果を証明する臨床試験データを要求するが、あくまでの健常人の健康維持・増進のためで、病気の治療であってはならない、ということになっている。

 しかし、莫大な費用を費やした臨床データには血圧を下げる効果が見えている。開発費の元を取りたいメーカーは、トクホの特権を目いっぱい使おうとして、今回はやり過ぎた。広告担当者の法的知識が乏しかったのかもしれない。
トクホコーラは「脂肪の吸収を抑える」と表示しているが......

 ところで、この臨床データの意義を、もうひとつ別の視点から問うなら、たとえば薬であればランダム化比較試験(RCT)は有効だろうが、食品で綿密なRCTができるのだろうか? 薬のように偽薬を使えるわけでもなく、ましてや人によって栄養摂取の異なる状況で、複合成分である食品の効果を単一成分で計るというのは、なかなか困難ではないか、と素人は考える。

 さらに、単一成分の効果をもってその商品の健康効果を謳う、というのもよくわからない。

 たとえば、トクホコーラは「脂肪の吸収を抑える」と表示して、「若鳥の唐揚げや餃子を食べてもトクホコーラを一緒に飲めば大丈夫!」といったアピールをしているが、その効果の由来は「難消化性デキストリン」、つまり食物繊維で脂肪の吸収を多少抑えるといったものだ。当然、コーラはすべて難消化性デキストリンでできているわけではない。

 ちなみに、トクホには、難消化性デキストリンの効果を謳った商品が山ほどある。つまり、「トクホ」と銘打つためのとても便利な添加物が難消化性デキストリンということになる。そしてその添加物の効果が、国のお墨付きで金科玉条のごとく語られるのにはどうも抵抗がある。

 本来、食品を単一成分の機能性で切り取って、そこだけを強調し、ややもすると「薬」のようにふるまうことは、食品の役割ではない。食品にいろいろな機能性があることは確かなことだが、それをどのように伝えれば消費者が正しく利用できるかを、もう一度考え直してみてもいいのではないか、と思う。

後藤典子(ごとう・のりこ)

ジャーナリスト/一般社団法人日本サプリメント協会理事長/農医連携ユニット理事
同志社大学文学部を卒業後、編集プロダクションを経て、ジャーナリストに。主に政治・経済評論をテーマにした取材、執筆を主軸としてきたが、サプリメントの取材をきっかけに、市場の歪んだ情報の蔓延に義憤を感じ、生活者のための公正中立な情報の必要性を痛感して、2001年、NPO日本サプリメント協会を発足、中立な情報機関として活動を始める。書籍の発刊や、新聞、雑誌、テレビ、ラジオなど、マスメディアにおいて執筆・評論・コメントを行うとともに、生活者や企業を対象とした講演活動を通じて、ヘルス・プロモーションの啓発に努める。現在、農と医をつないで健康と食の問題を検証するプロジェクト「農医連携ユニット」に関わるとともに、「日本サプリメント協会」を通して生活者の健康リテラシーを向上させるための情報活動を行っている。