「よく今まで売れなかったなあと思って」。昨日のR-1ぐらんぷりで優勝したハリウッドザコシショウに対して審査員の一人、清水ミチコがかけた言葉だ。


ハリウッドザコシショウは現在42歳。大阪NSC11期、中川家、陣内智則、ケンドーコバヤシらと同期だ。芸人同期の中でも特にケンドーコバヤシとは仲がよく、ケンコバは「ライバルは?」と聞かれると「ハリウッドザコシショウ」と答えていたという。

最初はコンビ「G★MENS」としてデビューするも、2002年に相方が芸人を辞め、ピン芸人としての道を歩みはじめる。現在の事務所はバイきんぐや今年も敗者復活で上がってきたマツモトクラブの所属するSMA Neet Project。千川びーちぶという劇場をはじめ、都内のライブハウス出演が主な活動。あらびき団(TBS)には初回から出演して「キングオブあらびき」と呼ばれ、2014年には「あらー1ぐらんぷり」で優勝。それでも「あらびき芸」という認識だったせいか、彼がゴールデンタイムに進出することはなかった。

ライブシーンでは常に大爆笑を生み出す男


「ものまね○連発」や「ハンマーカンマー」などのネタはライブシーンでは常に大爆笑を生み、観客のみならず共演者である芸人たちも軒並み笑い崩れるのがいつもの光景だった。イケメンコンビや技巧派漫才師が好きな観客も、ハリウッドザコシショウにだけはどうしても笑ってしまう、そんな存在だった。何年もずっとそうだった。

しかし「R-1ぐらんぷり」ではなぜか、決勝に上がることはなかった。予選ではいつも爆笑をとっていたにもかかわらず、だ。「生で観ると面白いけれど、テレビを通じたら伝わらないと審査員に思われているのだろう」と感じていたお笑いファンも多かったのではないだろうか。そんなハリウッドザコシショウが今年、決勝へ行った。「R-1」の基準が変わったのか、はたまた準決勝の審査員の気まぐれか、それはわからない。とにかく挑戦12回目にして、彼は初めて決勝へと駒を進めた。

テレビとライブの間にあるハードルをぶち壊したザコシショウ


そして昨日、R-1ぐらんぷり決勝戦。ファーストラウンドではザコシショウのネタが披露されたあと、MCの雨上がり決死隊宮迫が笑いすぎて涙を拭き、審査員の一人間寛平は「この後できへんで」と訴え、板尾創路も「もう来週にせえへん?」と話した。そのあとも落ち着かず、しばらくざわざわしていた。

それは、地下の劇場でよく見る光景と同じだった。そこで披露されたネタは、昨年11月「こそこそチャップリン」(テレビ東京)に登場した時とほぼ同じ。その時は観客票が30人中7点しか入らず、不合格となった。もっと言えば、昨年1月の「チーム有吉」ともほとんど変わっていない(その時は有吉やおぎやはぎらが爆笑していたが)。その勢いのまま決勝ラウンドでも爆笑を巻き起こし、ダントツで優勝を飾った。たった4か月のうちに何が変わったのかわからないが、とうとうザコシショウはテレビにも受け入れられたのだ。
「R-1ぐらんぷりでハリウッドザコシショウが優勝しても泣くのは間違っている」とある通り、もちろん私たちが泣く必要はない。きっと観客の代わりに彼を愛してきた仲間の芸人たちが大勢、涙を流しているはずだ。

細部まで気を使っているかもしれない、でもそこは気にしなくていい


観覧ゲストの羽田圭介はザコシショウについてコメントを求められ、「無法者のようにむちゃくちゃ偏った世界観を、いきなりやってきて、受け取る側に有無を言わさず飲み込ませてしまう破壊力がすごい。それってものすごく高い演技性と演出力に支えられている、実はすごい細部まで気を使ったすばらしい作品」と語った。
今年に入ってTwitterで「ドラクエものまね」シリーズを連発し、パンツを黒に変えた。全く同じに見えるネタも、観る者の気づいていないところで、細かな調整が行われているのかもしれない。でも彼に関しては、そんなところを見る必要はない。ただただ目の前のものまねとも言えないようなものまねに笑うだけでいい。

余談になるが、彼のブログに行くと、3月に行われる予定の彼主催のライブの告知がある。前売り900円。ザコシショウを愛し慕う芸人たちがたくさん出演する。ザコシショウという芸人が評価された今、次のチャンピオンがこの中にいる可能性は高い。

(釣木文恵 イラスト/小西りえこ)