2週連続優勝 ロングパターがなくても強さを証明した GettyImages

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 キャデラック選手権は、開幕前も開幕後もパッティングのグリップ方法の話で持ち切りだった。
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 そうなったきっかけは、前週の「ザ・ホンダ・クラシック」でアダム・スコットが優勝したからだ。ロングパターを武器にしてきたスコットがレギュラーパターに持ち替え、クロウグリップの変形のような独自のスタイルを採用して見事に勝利。その衝撃が大きかったせいだろう。ドラルでの話題はパッティングのグリップに集中していた。
 そして、その話に輪をかけたのがローリー・マキロイだった。今週からグリップ方法をいきなり変更し、左手を下にして握り始めた。「左手が、いいガイド役になる」と、マキロイ自身、とてもお気に入りの様子。実際、このグリップでいきなり臨んだ初日は33パットだったが、2日目は23パットと一気に成果が数字に表れ、「left hand low(左手を下)」は、ドラルの流行り言葉のように広まっていた。
 マキロイは周囲から冗談混じりに「ジョーダン・スピースの真似をした」と言われ、マスターズを控えたこの時期のいきなりのグリップチェンジは「冒険がすぎる」とも言われたが、そう言われることは覚悟の上。欧州ツアーデビュー前の2008年にも左手だけで握ってパットする練習を散々行ない、「すごく良く入った」と実感した経験があったため、それなりの自信や確信は持っていた。
 そして成績の波が大きいと感じている昨今は、突然、左手を下にしてパターを握ったところで「良くはなっても悪くはならない」と信じ、新グリップに移行。その成果は明らかに出て、最終日を2位に3打差の単独首位で迎えた。
 しかし、パットのグリップを工夫したのはマキロイだけではなかった。今週、上位に絡んだ選手の多くが個性的なパターの握り方をしていた。ダニー・ウイレットはマキロイ同様、左手を下にした握り方。何に対してもユニークでアグレッシブな変化を求めるフィル・ミケルソンに至っては、「手で操作してしまう動きを抑えてくれる」クロウグリップでショートパットを、「自分のフィールをより一層活かしやすい」コンベンショナルグリップでロングパットを、という具合に距離次第で握り方を変えていた。
 偶然か、それとも必然か、サンデーバック9の優勝争いの顔ぶれは、パターをユニークなスタイルで握る、いやいや「握り始めた」選手ばかりになった。
 パット・イズ・マネーと言うように、パットがスコアリングの決め手になることは疑う余地もない。だが、この4日間の日々の流れ、そして最終日終盤の大詰めに、本当にモノを言ったのは、パットのグリップ方法だったのかと問われれば答えは「ノー」。最後にモノを言ったのは、試合に挑む気持ちだったように思えてならない。
 終盤のリーダーボードの最上段は2013年にオーストラリア人として初のグリーンジャケットを羽織ったスコット。その下のワトソンは2012年と2014年にマスターズで2勝を挙げた選手。ウイレットは今年のマスターズウィークが第1子誕生と重なりそうなため、自身2度目のマスターズを「おそらく欠場する」と今大会で発表したばかり。ミケルソンはマスターズ3勝。マキロイはグランドスラム達成のためにはマスターズ優勝が悲願。
 4月のマスターズに向かって自分なりの走り方をしていきたい――そんな想いを胸に秘めた面々が、3月のこの時期、世界選手権シリーズの大舞台で勝利を競い合ったことは、グリップ方法のおかげもあるにはあったが、彼らの強い戦意がそうさせたのだと思う。
 屈指の難ホール、ドラルの18番。ティショットを大きく右に曲げたスコット。「たくさんの木々がライン上」にありながら、必死の思いでグリーンを狙って打ち出したセカンドショット。彼のボールが池に落ちそうで落ちず、グリーン左の土手に留まったことは「本当にラッキー」(スコット)ではあったが、そこには勝利への執念が漂っていた。
 「初日の途中で、前週の優勝で有頂天になっている自分に気が付き、気持ちを引き締めた。2週連続優勝は信じられない。あと数週間。自分をプッシュし続けていく」
 世界の強者たちが、こぞって自分をプッシュし続けながら向かう先は、シーズン最初のメジャー、マスターズ。自分なりの走り方、プッシュの仕方。一番の燃料となるのは戦意と執念。グリップ方法は、そのための術だ。
文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

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