腰を反らす体操は良いのか? 悪いのか?(shutterstock.com)

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 腰痛を改善するために、さまざまな方法が考案されている。それだけ腰痛に悩んでいる人が多い、ということでもある。

 色々な腰痛に対しての治療法、運動法があるが、今回は「腰を反らす体操は良いのか? 悪いのか?」ということについて解説する。

 ひと昔は「腰を反らすと良くない」と言われてきた。しかし、最近では「腰を反らす運動は腰痛に効果がある」ということも言われている。一体どちらが正しい情報だろうか?

 実は、この「腰を反らす運動」は、専門家の間では「マッケンジーエクササイズ」として有名だ。ニュージーランドの理学療法士、マッケンジーが考案し、その名が由来となって知られるようになった。

なぜ腰を反らす運動が腰痛に必要なのか?

 本来、脊柱(頚椎、胸椎、腰椎、仙椎から構成されている)は、前から見るとまっすぐだが、横から見ると湾曲している。腰椎においては35〜60度の前弯が正常とされている。つまり、腰が少し反っている姿勢が正常ということである。

 しかしながら、現代社会では、生活習慣から背中を丸めるような屈曲姿勢をとることが多くなってきているといわれている。必然的に腰を反る動作を行うことが少なくなっていることを意味する。

 ぎっくり腰などで腰を痛めてしまった場合、多くの人が腰を動かすことを避けて、過度に安静にしてしまう。また、動くようになったとしても「腰を反らす」という一見すると怖く危ないように感じる「動作」は、ますます行わなくなる傾向が強い。

 本来、損傷したあとは、膝であれ、肘であれ、そのままにしておくと固まってしまうというのはなんとなく想像ができると思う。そのため、理学療法などで可動域練習を行い、固くなったしまった関節の動きを取り戻すのが通例であるが、腰痛に関しては、なかなかそのことができていない。

 そのために「腰を反らす」というのは、日常生活の中でなかなか行わなくなってしまっている腰椎の伸展方向の運動を行い、周辺の組織をストレッチングし、負荷の少ない本来の腰椎前弯の形状を取り戻す、というのが一つの目的となる。
マッケンジーエクササイズは椎間板ヘルニアに効果的

 マッケンジーエクササイズの伸展運動(腰そらし運動)は、さまざまなタイプの腰痛に効果があることが報告されている。特に椎間板ヘルニアに有効だとされている。

 椎間板ヘルニアは発症すると下肢のしびれを伴う腰痛であり、これは椎間板がなんらかの原因で破損し、その中にある髄核が飛び出してそれが神経にぶつかってしまうために起こる。神経は椎間板の後方に位置しているので、髄核が後方に飛び出すことで椎間板ヘルニアの症状が起こってしまう。

 マッケンジーエクササイズは、腰を反らすことによって、椎間板の前面が広げられて椎間板内が陰圧にあり、それにより後方に飛び出している髄核が前方に戻ってくる、という理論のもとに椎間板ヘルニアに効果があるとされている。

 その方法は、とてもシンプルだ。

,Δ弔屬擦某欧董⊃分安静にして全身をリラックスさせる。
△修両態から両肘を立てて、上半身を起こす(お腹は床についたまま)。
5分程度そのままの姿勢を維持する。
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ズ討嗄症を立て、その状態からさらに肘も伸ばし、腰を反らす角度を大きくする。
δ砲澆なければ、その状態で5分程度維持する。
Г罎辰りとうつぶせに戻る。

 以上が、マッケンジーエクササイズの伸展運動である。これを1日に数時間おきに行うことが推奨されている。

 そのことにより、腰部の伸展方向の可動域を回復させ、自然な彎曲を取り戻す助けとなるし、上記の述べたような理由で椎間板ヘルニアにも有効だとされている(マッケンジーエクササイズは腰そらし運動だけではなく、曲げる運動もあるのだが、今回は混乱を避けるために反らす運動だけを紹介する)。

 今回はマッケンジーエクササイズの腰そらし運動を紹介した。腰を反らす運動というのは、医学的にも根拠があるが、大事なことは「適切な運動を選択する」ということを忘れないでほしい。やみくもに行うのではなく、自分の症状に当てはまる場合に行うのが理想だ。

 そのためにまずは医療機関にて、医師や理学療法士に診てもらい、正しいエクササイズを処方してもらうことが必要である。運動も薬と同じで、適切なものを処方するのが何よりも大事なことである。


三木貴弘(みき・たかひろ)
理学療法士。日本で理学療法士として勤務した後、豪・Curtin大学に留学。オーストラリアで最新の医療、理学療法を学ぶ。2014年に帰国し、現在は東京都で理学療法士として医療機関に勤務。その傍ら、一般の人に対しても正しい医療知識をわかりやすく伝えるために執筆活動にも力を入れている。執筆依頼は、"Contact.mikitaka@gmail.com"まで