韓国のネット上で最近、「ヘル朝鮮」という言葉が目立つ。「地獄のような韓国」を意味し、韓国社会を覆う閉塞感、特に若者の絶望感を色濃く投影している。写真は韓国ソウル

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2016年3月5日、「ヘル朝鮮」。韓国のインターネット上で最近、この言葉をよく見かける。ヘル(HELL)は英語の「地獄」。「地獄のような韓国」を意味し、自国を見下すなど自虐的に使われる。これが目立つ背景には韓国社会を覆う閉塞感、特に若者の絶望感が色濃く投影している。

韓国メディアによると、ネット上に「ヘル朝鮮」が登場したのは昨年夏ごろから。一部のメディアが「流行語になるのでは」と取り上げ、若者を中心に広まったという。

「ヘル朝鮮」は、どんな場面で用いられるのか。例えば、聯合ニュースが先ごろ伝えた韓国保健社会研究院の「韓国では個人の努力で社会的・経済的地位を向上させることができると考えている人が毎年減っている」との報告書。これに対するネットユーザーのコメントとして、「努力が報われない社会ということだ」などと並んで、「これがまさにヘル朝鮮たるゆえんだ」と書き込まれた。

韓国統計庁によると、昨年の15歳以上の人口は4301万7000人、経済活動人口(学生や定年退職者を除く、有給の労働者及び無給の家事労働に従事する主婦など)は2691万3000人、雇用率は60.3%で、失業率は3.6%だった。一方、若年層の雇用率は41.5%、失業率は9.2%で過去最悪となった。全体の失業率に比べ、若年層の失業率の高さが際立っている。

米有力紙ワシントン・ポストも「ヘル朝鮮」に注目。韓国・KBSによると、「儒教的な階級秩序を重んじる朝鮮王朝を想起させる言葉だ」と前置きし、「背景にはつらい労働や低所得、不安定な雇用に苦しむ若者の哀歓がある」と指摘した。韓国の現状については、中央日報も昨年末のコラムで「果たしてわれわれは今、幸せなのだろうか。世界最高の自殺率と高齢者貧困率、世界最低の出生率は何を意味しているのか。大学を卒業しても良い職場に就職するのは非常に難しい」などと嘆いている。

希望を失っているのは若者たちだけではない。聯合ニュースによると、現代経済研究院が行った電話調査では、韓国国民が経済的幸福を達成するための最大の障害に「老後の準備不足」を挙げる回答が多かった。60歳以上は60.2%、50代は35.6%と年齢が高いほど、準備不足を心配しているという。

2月中旬、日本のネット上に「保育園落ちた。日本死ね」との匿名の投稿があり、波紋を呼んだ。「1億総活躍社会じゃねーのかよ」「国が子ども産ませないでどうすんだよ」などと不満をぶちまけた投稿者(母親?)にとっては「ヘル」そのものだろう。

韓国が置かれている状況は、日本とも共通する。表向きの失業率は改善しつつあるが、非正規雇用の割合は4割を超えた。少子高齢化が進む中、年金など将来への不安もある。日本のネット上に「ヘル日本」が飛び交う日がこないとは限らない。(編集/日向)