米国人の医師デイビッド・B・エイガス氏の著書『ジエンド・オブ・イルネス』(日経BP社刊、2013年)には、26の病気の発症に遺伝要因と環境要因がそれぞれどのくらい影響するかを%で示した円グラフが掲載されている。

 エイガス氏の発表したデータで遺伝の影響が最も少なかったのが肺がん(14%)と胃がん(28%)。一方、26の病気の中で、最も遺伝の影響する割合が高いと示されたのが87%とされた緑内障だった。

 こうした遺伝子検査は民間レベルでも浸透しつつある。米国では2006年創業の「23&ミー」が遺伝子検査サービスを通じて、世界で85万人もの遺伝情報を集めたことで注目された。同社の遺伝子検査を3年前に体験した在米ジャーナリストの武末幸繁氏がいう。

「顧客の唾液などから遺伝子情報を解析し、250もの病気のリスクを判定できるサービスを提供しています。価格を99ドルまで引き下げたことで、飛躍的に広まりました」

 同じような取り組みは日本でも広がりを見せている。2年前にIT業界から参入したDeNAはその代表格だ。販売する検査キットは、遺伝子の統計データと比較してどれだけ病気のリスクがあるかを280項目にわたってチェックできる(税別2万9800円)。

 増加するシニア層のリクエストに応えて、これまではWebでしか検査結果が見られなかったが、2月からは紙のレポートも始まった。DeNAライフサイエンスの大井潤社長が説明する。

「病気のリスクについての問い合わせは、遺伝カウンセラーや専門医に直接つながるようにして、サポート体制を整えています」

 ゲノム医科学が専門の東京大学の菅野純夫教授は、こうした遺伝の研究が世界中で進められている理由を解説する。

「遺伝と病気の関連性を研究する最大の目的は、統計的にデータを作ることではありません。ほとんどの病気は遺伝要因や環境要因が複雑に絡み合って発症します。だからこそ、自分が遺伝的にリスクがあるかもしれないと知ることで、病気になる前の段階から意識的に生活を改善するマインドを生むことに意味がある」

 研究の世界は日進月歩。今後さらに「遺伝」との関連性が明らかになるだろう。

※週刊ポスト2016年3月11日号