国連で30年以上勤務した忍足謙朗氏が、日本記者クラブで講演。「世界で8億人が飢餓状態にあり、栄養不良のため死亡する5歳以下の子どもは1日当たり8500人に達する」と指摘。紛争により、避難している人は5950万人に上るとして、「紛争の根絶」を訴えた。

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2016年3月3日、国連世界食糧計画(WFP)アジア地域局長など、人道支援の現場を中心に国連で30年以上勤務した忍足謙朗氏が、日本記者クラブで講演した。「世界人口の9人に1人に相当する8億人が飢餓状態にあり、栄養不良のため死亡する5歳以下の子どもは1日当たり8500人に達する」と指摘。紛争により、シリア難民など避難を余儀なくされている人は5950万人と第2次大戦後最も多い水準に達しているのは残念として、「紛争の根絶」を強く訴えた。

WFPは飢餓状態にある人々に、年間300万トンの食糧を届ける世界最大の人道支援機関。忍足氏は35年間国連に勤務、WFP駐スーダン代表、 WFPアジア地域局長などを歴任し、昨年退職した。発言要旨は次の通り。

貧困と飢餓状態にある人に紛争、地震、津波などが人々を襲う。日本では社会保障があり東日本大震災でも、十分ではないにせよ人が飢えることはありえない。しかし世界では社会保障が整っていない国が多い。WFPなどが入り、崖から落ちる人たちのセーフティーネットになっている。

国連憲章は「食料安全保障」を謳い、すべての人たちに「健康で安全な生活」を保障しているが、実際は世界人口の9人に1人に相当する8億人が飢餓状態にある。自然災害より紛争で避難を余儀なくされている人たちが圧倒的に多い。WFPは10%ぐらいの人に年間300万トンの食料を出している。

栄養不良のため死亡する5歳以下の子どもは年間300万人もいる。一日あたり8500人。今も世界で子どもたちが次々に命を落としている。1時間に350人。われわれは「サイレント・エマージェンシー」「報道されない緊急事態」と呼んでいる。そのセーフティーネットが必要だ。一方で、食べられるのに廃棄される食料(フードロス)は膨大で、日本だけで年間600万トンに達する。

国連予算を最も多く使っているのは、PKO(国連平和維持活動)で約80億ドル。紛争地で仕事し、社会の安定を実現する。2番目がWFPで約40億ドル。世界最大の人道支援団体といわれる。その中でも最も多く使われているのは、シリア難民、南スーダン、イエメン、アフガニスタンなど紛争関連である。

2014年時点で、紛争により、避難を余儀なくされている人は5950万人。第二次大戦後最も多い。シリアの内外に難民などになって避難している人に対し、12億ドルを援助する計画で、その割合はWFP予算の4分の1以上に達している。

人道援助は必要だが、人がつくった人災である紛争で援助が行われるのは、残念だと思っていつも仕事をしてきた。紛争は政府側や反政府が対立しているが、我々の仕事で大事なのは中立性。飢餓状態にある人々に食料を輸送するのが使命だ。

WFPは大きな輸送集団でもあり、毎日航空機50機、船舶30隻、トラック5000台ぐらいが稼働し、300万トンの食料を届けている。紛争地が多いので、危険で、過去に職員約120人が命を落としている。紛争の根絶こそが重要だと思う。(八牧浩行)