途中出場から再三鋭いドリブル突破を見せた岩渕。しかし、ラストパスの精度、フィニッシュの精度に欠け、厳しい結果となってしまった。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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 プレスをかける、球際に飛び込む、気持ちを前面に押し出す。五輪出場へ負けが許されない状況下で、本来日本がしなければいけなかったプレーだ。しかし、ピッチでそれを体現していたのはむしろ中国のほうだった。日本は相手の素早い寄せにビルドアップを乱され、安易なボールロストを連発。球際で躊躇し、ポゼッションを許してしまう場面も少なくなかった。

【女子リオ五輪予選 PHOTOハイライト】日本 1-2 中国

 14分の失点は、中国のプレッシャーに川村がバックパスを選択したところを狙われたもの。川村の判断ミスと言うのは簡単だが、その後の対応もDF田中とGK福元が「他人任せ」な間合いを取ってしまったことで、中国のFWジャン・ルイに飛び込む隙を与え、みすみすシュートを、そしてゴールを許している。
 
 もし、韓国戦のキャッチミスでの失点がなければ、福元は自らが飛び出してバックパスをクリアしていたのではないか――。勝負事に「たら」「れば」は禁物なのは承知だが、思わずそう考えてしまうほど、どこか縮こまっているように見えた。
 
 58分にミドルシュートを許してしまった鮫島の対応然り、である。近賀も「気持ちの面が一番大きいと思う。失点の場面もいつもの自分たちなら(防げていた)……」とアプローチの仕方を悔やんだ。
 
 また、そういった意思疎通の欠如は、攻撃面でも顕著だった。中盤ではコンビネーションで崩そうとしてもパスのわずかなズレで攻撃のギアが上がらず、前線も崩しのイメージを共有できず。攻守の切り替えからFW大儀見がフリーランニングを始めても、逆方向にパスが出てボールを奪われ、天を仰ぐシーンが何度も見受けられた。
 
 横山のミドルシュートで1点こそ返したものの、横山の個の力頼みで「相手を崩しているシーンはほとんどない」(宮間)。3試合連続1得点と複数ゴールを奪えない状況は、「深い課題と感じた。また見つめ直さなきゃいけないし、今後のなでしこの将来を見た時に大きな取り組みになる」(佐々木監督)のは間違いないだろう。
 
「私自身はこの試合に負けたらどうなるか理解していたが、すべての選手が理解していたかと言えばそうではない。ピッチに立つ以前のところで負けていた」
 
 大儀見は試合後、涙を浮かべながらそう言葉を絞り出したが、昨年引退した澤穂希さんも警鐘を鳴らしていた「気持ちが足りない」部分を、中国戦でも埋め切ることができなかったのだ。五輪出場を懸けた舞台では、もはや“致命傷”と言うしかない。全員が同じ方向に、同じ気持ちで向かっていくことで不可能を可能にしてきた、なでしこジャパンだからなおさらである。
 
「死に物狂いでやっているつもりですけど、足りないということ」(宮間)
 
 4大会連続5度目の五輪出場は絶望的となったなか、大会はまだ2試合残っている。日本女子サッカーの未来にタスキをつなぐためにも、残された戦い・時間を無駄にしてはいけない。
 
取材・文:小田智史(サッカーダイジェスト編集部)