小松未可子 いつだって自然体!みかこしのルーツをたどった先にあるものは…?
「おはようございますっ!」明るく元気な声が現場に響き渡る。声の持ち主は“みかこし”こと、小松未可子。少年から大人の女性まで幅広い役柄を演じわける、若手実力派の声優だ。彼女のまわりは、つねに笑い声が絶えない。屈託のない笑顔、チャーミングな人柄、そして自然体な姿は、まわりの人をハッピーな気持ちにさせてくれるのだ。みかこしのハッピーの源がどこにあるのか知りたくて、おてんばだったという子ども時代の話から聞いてみた。

撮影/アライテツヤ 取材・文/花村扶美 ヘアメイク/横山雷志郎(Yolken)

芸能界を目指したのは不純な動機だった!?



――今日は小松さんのお話をいろいろお伺いできればと思います。小さい頃はどんな子どもだったんですか?

ひとことで言うと“おてんば”。休み時間は男子と一緒に、毎日ドッジボールをしてました。そのへんの男子よりも強くて、即戦力として重宝されていたみたいです。「おい、行くぞ!」「よっしゃー!」って感じで(笑)。

――活発な子だったんですね。部活も運動系でした?

バスケ部や陸上部でしたね。男兄弟のなかで育ったからか、男友だちと遊ぶことが多かったです。女子に見られていないというか、まったく女の子扱いされていなかった(笑)。アニメは当時から大好きで、学校でも女友だちと『名探偵コナン』の話ばかりしてました。

――コナン好きというのは、ほかのインタビューでもよくお話されてますよね。

ふふっ。私の人生はコナンで構築されてると言っても過言ではないです(笑)。

――芸能界に興味を持ち出したのはいつ頃からですか?

中1くらいかな? 『名探偵コナン』の主題歌を歌っていた倉木麻衣さんのことが大好きな私を見て、母親が、芸能界に興味があるならオーディションを受けてみたら?って。いま思えば、“倉木さんに会えるなら!”という不純な動機で受けていたところがありましたね(笑)。

――軽いノリで受け始めたつもりが、だんだん気持ちに変化が生じてきた?

最終選考で落ちることが続いたんですけど、それを悔しいと感じるようになりました。もうこれで最後にしようと思って受けたのが、藤井隆さんの妹分を決めるというオーディション。それに受かったのがキッカケで、15歳のときに芸能界に入りました。

――「いもうと」という女の子4人組のアイドルグループを結成されたんですよね。

はい、4年間くらい活動していました。そのあいだにメンバーそれぞれが、自分のやりたいことや目標を見つけていったんですけど、私は自分のやりたいことがわからないままで…。このままでいいのかなって悩んで、一度、芸能活動から退くことにしたんです。

――普通の大学生に戻ったんですね。

でも大学生活を送っていくうちに、お芝居をやってみたい!という気持ちが芽生え始めました。それで、オーディションを探して受けて、自分の力で一歩踏み出したんです。ちょうど大学2年のときでした。



初めてのアフレコ現場で受けた衝撃



――いまの事務所に決まってからは、順風満帆だったんでしょうか?

いえ、ドラマやCMのオーディションを受けたりと自分探しの旅は続きました(笑)。そんなある日、私がアニメやマンガが好きだってマネージャーさんに話していたら、「声優のオーディションがあるんだけど受けてみない?」って言ってくれて。

――それが『HEROMAN』の主人公、ジョーイですね。

『HEROMAN』のオーディションキャラは、男の子と女の子の2役あったんですけど、普段私がしゃべっている声を聞いていたマネージャーさんが、男の子の役のほうで挑戦してみたら?って。少年の声が合ってるって思ったみたいです。

――マネージャーさんの采配が的中したわけですね!

ホントに! きっと私、女の子っぽいしゃべり方をしていなかったんでしょうね…(笑)。

――養成所にも通ったことがなかったから、いきなり男の子のお芝居をするなんて大変だったんじゃないですか…?

それまで見てきたアニメの男性キャラの記憶を思い出し、試行錯誤しながら練習をして、オーディション会場に向かっていました(笑)。受かったときは本当にうれしかったんですけど、どうしたらいいのか右も左もわからない状態でした。それで、同じ事務所の小見川千明ちゃんのアフレコ現場を見学させてもらったんです。

――実際のアフレコ現場を見てみてどうでした?

まず、自分が普段見ているアニメの完成された絵じゃなくて、それより前の段階、絵コンテみたいなものに声をあてていることにビックリ。しかも無音! 音もなければ、キャラの表情もわからない、そんな状態で演じていることが衝撃でした…。

――『HEROMAN』のアフレコが始まってからはどうでしたか?

キャスト、スタッフのみなさんに助けていただきました。めったにないことなんですけど、『HEROMAN』の現場は私以外にもアニメに初挑戦の方がいたこともあって、本番前にリハーサルをしてくださったんです。

――それは心強かったですね。

私の親友役だった木村良平さんもリハーサルにつきあってくださって。『HEROMAN』でアフレコの基礎を教えていただきました。

――放送中の海外ドラマ『SUPERGIRL/スーパーガール』では、主人公のスーパーガール、カーラ・ゾー=エル役の吹き替えを担当されますね。

彼女は誰もが知っているあのスーパーマンの従姉です。自分も困っている人を助けたいという思いからスーパーガールに変身するんですが、なにせ新米なので、街のいろんなものを壊したり、やることすべてが裏目に出ちゃう…ちょっとドジな子です(笑)。

――スーパーガールに共感できるところはありましたか?

昼間はOLさんなので、職場の女上司が出てくるんですけど、そこから「女の幸せとは?」というテーマも見えてきたりして…。同世代の女性として、仕事や恋愛に揺れ動く気持ちに共感しますね。

――実写映画の吹き替えは、アニメのアフレコとは違う難しさがありそうですが…

アニメと違ってナチュラルなお芝居を求められます。生身の人間と、アニメのキャラクターとではしゃべり方が全然違うので、息の使い方などを注意深く聞くようにしています。



“自分らしさ”って一体なんだろう…?



――今年で声優デビュー6年目。いま改めて、声優のお仕事のどんなところが魅力だと思いますか?

普段の生活では絶対に出会わないような濃いキャラクターと出会えたり、人間じゃない生き物になったりできることです。

――これまでにも、宇宙海賊やネコになったりしてますもんね!

はい(笑)。あと、アニメの声だけじゃなくて、舞台やラジオ、洋画の吹き替えやナレーション、ときには歌って踊ることもあります。いろんなチャンスがあるのが楽しいですね。ただ、お仕事の幅が広いぶん、苦手分野も出てきちゃって…。

――小松さんの苦手分野というのは…?

しゃべることが難しいなって思います。

――えっ! その答えに驚きました…(笑)。小松さんのお話、とてもお上手だし惹きこまれますよ。

ありがとうございます(笑)。自分ひとりでしゃべるだけならまだいいんですけど、ゲストをお迎えしてお話を聞いたりするのが、いまだに苦手なんです。

――でも、そのラジオのおかげで、憧れの倉木麻衣さんとお会いすることができたんですよね?

そうなんです(笑)。私がやっていた『リッスン?〜Live 4 Life〜』というラジオ番組にゲストで来ていただいて。倉木さんことが好きすぎるあまり、倉木さんからお話を聞くというよりも、自分が倉木さんに伝えたいことばかり話してしまいました…(苦笑)。

――憧れの人を目の前にすると誰しもそうなるかと…(笑)。

自分でもしゃべりながら“あ、これはいけない!”って思ってはいたんですけど、止められませんでした…。すごくうれしかった半面、反省することも多くて、パーソナリティーの難しさを思い知りましたね。

――2012年に歌手デビューされましたが、歌を好きになったのも倉木さんの影響ですか?

はい! 倉木さんみたいになりたい!→そうだ、倉木さんの歌を歌い込もう!という感じで…(笑)。ずっと倉木さんをイメージして歌ってきたので、デビューが決まって“小松未可子”として発信する側になったら、どういうふうに歌えばいいかわからなくて、すごく悩みましたね。

――キャラクターソングと違って、“小松未可子らしさ”を全面に出さないといけませんもんね。

そうなんです。自分らしさって一体なんだろうって…。でも、私、詞を書くのはすごく好きなんです。高校のときも日記の代わりに、詞を書いていたくらいですから(笑)。

――今も読み返したりするんですか?

パソコンに打ってたんですけど、データをなくしちゃったんです…。暗黒時代の私ですが(笑)、17歳の私がどんなことを思っていたのか気になりますね。