男子テニス国別対抗戦デビスカップ・ワールドグループ(※以下WG)1回戦「日本対イギリス」が、3月4〜6日にイギリス・バーミンガムで開催される。
※出場国はグループ分けされており、上位16カ国を「ワールドグループ」とし、トーナメント戦で頂点を競う。試合は第1日目にシングルス2試合、第2日目にダブルス1試合、第3日目にシングルス2試合で行なわれ、3勝した方が勝利国となり、準々決勝に進出する。敗れると、世界各地のひとつ下のグループ「ゾーンI」の優勝国と入れ替え戦に回る。

 日本(ITF国別ランキング14位、以下同)は、初戦でいきなり2015年の優勝国であるイギリス(1位)との対戦になり、世界の注目が集まっている。かつてイギリスはデビスカップ強豪国だった。1930年代には、フレッド・ペリーらの活躍によって9回の優勝を誇ったが、それ以降イギリス男子は低迷し、優勝から遠ざかっていた。しかし、昨年はアンディ・マリーの大活躍によって、79年ぶりとなる10回目の優勝を見事に飾り、王国復活を印象付けた。

 また、イギリスはデビスカップの第1回大会から参加している古い伝統を持つ。1900年にアメリカ・ボストンで、インターナショナル・ローンテニス・チャレンジとして、イギリスとアメリカの2カ国だけで第1回デビスカップが開催され、イギリスは0勝3敗で敗れ、準優勝に終わったのだった。

 一方、日本は1921年に初出場で決勝進出を果たし、アメリカに0勝5敗で敗れたものの準優勝だった。1930年代には佐藤次郎らの活躍があったが、その後、日本男子はWGに届かない冬の時代が続いた。だが、錦織圭の活躍によって、2012年に悲願のWG復帰。13年に一度降格したが、14年以降はWGを維持している。WGで迎えるシーズンとして6回目で、錦織のいるチームとしては4回目(2012、14、15、16年)となる。

 100年以上続くデビスカップの歴史の中で、日本が第1回大会から参加しているイギリスと対戦するのは、日本テニス史上において、語り継がれるべき歴史的出来事であると言っても過言ではないだろう。

 両国は1931年に1度だけ対戦したことがある。イーストボーンのグラスコートで、フレッド・ペリーらを擁するイギリスが、佐藤らがいる日本を5勝0敗で破った。1981年以降の世界16ヵ国で構成される現行WG制になってからは、初対戦となる。

「すごく光栄なことだと思いますね。ラッキードローとは言えないですけど。やっぱりアンディがいて、ダブルスも強いので、タフな試合になるでしょうし、たぶん今までで一番強い相手なんじゃないですかね。(シングルス、ダブルスのATPランキング)トップ10がいる国とそんなにやったことはないので、すごくいいチャレンジですし、楽しみにしています」

 このように語った錦織は、気持ちの高ぶりを抑えられないような表情を見せた。また、デビスカップ日本代表の植田実監督は、名誉であると同時に、気を引き締めなければいけない対戦であると戒めた。

「(イギリスは)近代テニス発祥の国ですから、歴史的な対戦に関われることは誇りです。でも、そう思い過ぎて、(日本が)ダメだった歴史もある。選手たちの思いは、どうやって暴れて、どうやって勝つかという気持ちが優先している」

 今回、日本は3回連続でアウェーでの試合となる。バーミンガムにあるバークレイアリーナのインドアハードコートが戦いの場となり、両国のベストメンバーが顔をそろえた。

 イギリスは、アンディ・マリー(ATPランキング2位、2月29日付け、以下同、28歳)、キル・エドムンド(83位、21歳)、ジェイミー・マリー(ダブルス2位、30歳)、ドミニク・イングロト(ダブルス32位、29歳)が招集された。

 マリーは、グランドスラムで2回の優勝を誇るイギリスの絶対的エース。今シーズンもオーストラリアンオープン(全豪)で準優勝して、好調をキープしており、日本にとって大きな壁になるのは間違いない。また、アンディの兄であるジェイミーは先の全豪のダブルスで、初のグランドスラムタイトルを獲得して勢いに乗っており、長年ダブルスが課題とされている日本にとっては強敵となる。また、初日の結果次第では、アンディがダブルスに出場してくる可能性もある。

 日本は錦織圭(6位、26歳)、ダニエル太郎(87位、23歳)、西岡良仁(124位、20歳)、内山靖崇(257位、23歳)という若いチームになった。

 錦織はデビスカップのシングルスで通算16勝2敗、現在マッチ9連勝中で、日本に大きく貢献している。マリーに対しては過去1勝5敗だが、何とか錦織がシングルスで2勝を挙げることが、日本勝利への条件になるだろう。

 だが、植田監督はランキング上の強さだけでは測れないものが、デビスカップに存在すると指摘する。

「ランキングで言えば、トップのふたりは同じようなものですが、ダブルスではイギリスにスペシャリストがいるので、彼らにアドバンテージがあるかもしれない。でも、今までランキングを越えたところで、デビスカップの勝敗が決してきた歴史を考えると、それほど相手にアドバンテージがあるとは考えていない。相手のほんのわずかな隙、集中力を欠く瞬間を、われわれがどれだけ見つけ、そこに集中できるかにかかっていると思う。それが、チーム戦の面白さでもある。試合ごとに流れが変わる中、研ぎ澄まして流れをつかんでいきたい」

 何が起こるかわからないといわれるデビスカップでは、ダニエルが1勝をもたらすかもしれないし、イギリス優勢といわれるダブルスで、番狂わせが起こるかもしれない。さらに、錦織もダブルス出場の可能性を示唆している。

 また、昨年のコロンビア戦に続き、錦織が日本代表の最年長者となった。世界のトップ10で活躍する彼が、チームの中でどれだけリーダーシップを発揮できるかも注目のひとつとなる。

「前(15年コロンビア戦)もこのメンバーだったので、だいぶ慣れてきました。自分も自覚をもっています。(年齢が)一番上ですし、チームをまとめていきたいと思います」

 最年長の錦織が牽引する若い日本代表が、ディフェンディングチャンピオンのイギリスに対してどう戦うのか、非常に興味深い一戦となりそうだ。

神仁司●文 text by Ko Hitoshi