写真提供:マイナビニュース

写真拡大

●「著作権侵害」は身近に起こりうる
アドビ システムズは3日、最新のAdobe Stockに関するサービスに関する記者説明会を開催した。同社のストックフォトサービス「Adobe Stock」の最新アップデート内容やデモンストレーション、「ストックフォト」サービス全般についての紹介のほか、弁理士・栗原潔氏(テックバイザージェイピー)による「素材写真利用における著作権法上の留意点」についての講演が行われた。ここでは、会場での様子をレポートする。

○「著作権侵害」は身近に起こりうる

説明会の冒頭に行われたのは、ITや知財関連に詳しい弁理士・栗原潔氏(テックバイザージェイピー取締役)による「素材写真利用における著作権法上の留意点」と題された講演だ。栗原氏は「著作権法」について「SNSなどに写真などを掲載する場合など日常生活においても身近な存在でありながら、その中身は非常に複雑でかつ罰則も厳しいものだ」と述べた。

著作権侵害をすると、差し止めや損害賠償、刑事罰を受けることになり、損害賠償は著作権法独自の損害推定規定により高額になるケースがあるという。刑事罰についても、10年以下の懲役または1000万円以下の罰金(あるいはその両方)が課せられるという重い罪となるので(法人の場合は3億円以下の罰金)、決して軽く考えてはいけないとのことだ。

その一方で、著作者に許諾を得ずに使用できるケースもあり、日本の場合は「著作権法に規定されているかどうか」がポイントとなる。とても明確であるが、世の中の変化に追随しにくいのが問題だ。一方、アメリカの場合は「公正な利用(フェアユース)」であるかどうかで判断され、グレーゾーンの場合は裁判で争われるということだ。

また、「写真」が著作物であるかどうかについて、「著作権法では写真を著作物のひとつとして例示されている」と述べた。素人のスナップ写真やブツ撮り写真であっても、裁判では著作物とされるケースがほとんどだという。なぜなら、構図や照明などの決定、シャッターのタイミング等に撮影者の個性が発揮されるためだ。

ただし、すべての写真が著作物というわけではなく、機械的に複写しただけの写真(例えば、防犯カメラの映像や自動撮影の証明写真など)は基本的に著作物にはあたらないとのことだ。一方、著作物である写真を自由に使えるケースとして、「私的使用目的複製」(個人的や家庭内など限られた範囲内での使う場合には使用者自身が複製可能)、「引用」(報道や批評、研究などの正当な範囲)、「検討の過程」(ライセンス検討の過程において必要と認められる限度においての利用)、「報道目的」(時事の事件を報道する場合)の4つを挙げた。

写真の著作権侵害が問題となった事例として、昨年の「五輪エンブレム事件」でのコンペ資料において海外ブログの写真の無断利用が発覚し、結果的に佐野研二郎氏サイドに対する信用が失墜させ、それが五輪エンブレム採用の取り消しにつながったことを挙げた。「社内限定使用の資料だった」という言い訳が通じるかという問題については、この場合は業務上の複製であるため、「私的使用目的複製」ではないとするのが多数派だという。栗原氏は「社内のみの利用において著作物利用の許諾を取るケースが一般的であるかどうかは別として、法律的には違法」と述べた。

また、ふたつめの事例として、某ストックフォト販売会社が著作権を有するWeb素材を許諾なしで利用していた法律事務所を提訴した事件を紹介。このケースでは著作権侵害による差し止めに加えて、損害賠償請求についても認められたという。法律事務所側の「無料素材としてアップされていたので許諾は不要と思っていた」という言い訳が認められず、「ある程度の経験を持つWeb制作者であれば、利用する素材が著作権許諾を得たものであるかどうかの一定の注意義務を負うべき」との判断が下されたということだ。

これらのことから、権利処理を行っていない素材写真の利用はリスクが高く、たとえ社内限定であっても違法性が高いことや、これまで問題とされなかったので大丈夫だろうという安易な発想は危険だと述べた。さらに、素性の怪しい"無料サイト"の利用について、その危険性を注意喚起したのに加え、Web上の個人の写真を使う際は撮影者に了解を得るだけでなく、写真の著作権者が本当にその人物であるかの注意義務は果たす必要があると語った。結論として、「ストックフォトサービスの活用を積極的に推進すべき」と語り、講義を締めくくった。

●そもそも、ストックフォトとは?
○ストックフォトは、「画像」そのものでなく「使用する権利」を購入

次に、アドビ システムズの青野薫子氏が登壇し、「ストックフォト」サービス全体についての紹介となった。ストックフォトには、手頃な価格で価格交渉も容易な「マイクロストック」(ロイヤリティフリー)と、価格は高いが独占契約も可能な「マクロストック」(ライツマネージ)の2種類があることや、「画像を買うのではなく使用する権利(ライセンス)を買うものである」という説明がなされた。

「ロイヤリティフリー」は、使用期間や地域の制限がなく、デザインとしての使用が可能(著作権は制作者にあるため、ロゴやトレードマークとしては使用不可)なライセンス形態のことで、「通常ライセンス」と「拡張ライセンス」の2種類あると紹介された。

「通常ライセンス」は、マーケティング用、広告用、販促用、プレゼンテーション用といった商用利用が可能で、印刷部数(コンテンツを印刷または表示できる回数)が50万部以下に制限されるという。

一方の「拡張ライセンス」では、50万部以上の印刷・表示が可能(テレビ放送や映画で使用された画像の視聴者数にも適用される)で、その画像をマグカップやTシャツなどに印刷した商品販売などの利用も可能とのことだ。

ちなみに、「人物写真」に関しては「性風俗関係」や「タバコ広告」、「政治色の強いもの」、「モデルが誤解を招くもの」などの用途では使用できないということだ(Adobe Stockで販売されている写真の場合)。

○Adobe Stockが3つの進化- 検索性の向上と4K動画、拡張ライセンスの販売

続いて、アドビ システムズの栃谷宗央氏が登壇し、同社のストックフォトサービス「Adobe Stock」についての紹介となった。同サービスは昨年6月に登場して以来、さらに進化し、昨年11月の時点で4,500万点のロイヤリティフリー素材を提供しているという(昨年6月は「4,000万点」とされていた)。

また、Photoshop CCやIllustrator CCなど、アドビの主要アプリと密接に連携した唯一のストックフォトサービスであることにも言及。Creative Cloudデスクトップアプリ内で直接Adobe Stockの画像を検索、試用、購入できるのと同時に、同社のモバイル用アプリとも連携することや、組織・企業内で画像を共有できる点についてアピールした。さらにエンタープライズ向けとして、企業内でライセンス画像管理をスマート行える機能や独自のAdobe IDを作らなくても企業のドメインを使ってCreative Cloudを活用できる「シングルサインオン」にも対応している点についてもポイントであると語った。

また、ここ最近のアップデートにより「検索性の向上」、「4Kビデオ素材の提供」、「拡張ライセンスの提供」という3つの新機能およびサービスが追加されたことが紹介された。

「検索性の向上」は、写真を探す際に、Webブラウザ上で検索条件を絞り込める「検索設定」メニューが追加されたことを指す。これにより、より短時間で精度の高い素材検索が可能になったとしている。絞り込み条件には、画像の方向(縦長、横長、正方形、パノラマ)、セーフサーチ、人物が含まれているかどうか、カラーの指定、カテゴリを指定することが可能だ。

また、「4Kビデオ素材の提供」は、2月5日より開始された高精細な4Kビデオ素材の販売についてだ。これにより、企業内での利用やビデオ、CM、テレビ番組、Webサイトでの商用利用するためのビデオクリップとして活用できるようになった。ちなみに、4Kビデオ素材は1点につき2万4,980円にて販売されている。

「拡張ライセンスの提供」は、2月22日より、写真、ベクトル画像、イラストについて、前述した「拡張ライセンス」の販売がスタートした件だ。拡張ライセンスを購入すると、通常ライセンスと同等の権利のほかに、50万回以上のコンテンツの印刷・表示に対応するほか、素材を使用し販売・配布を目的とした製品やサービスを制作することが可能となる。拡張ライセンスの販売価格はコンテンツ1点につき7,980円となっている。

○デスクトップアプリやモバイルアプリとの連携の良さを披露

最後に、同社のCreative Cloudエバンジェリスト・仲尾毅氏が登壇し、Adobe Stockとアドビ製アプリとの連携についてのデモンストレーションへと移った。Adobe StockのWebサイト上で写真をキーワード検索したのち、新たに追加された「検索設定」オプションから「カラー」で特定の色を指定すると、その色を基調とした画像がリストアップされる様子が披露された。また、ライセンス購入時に「拡張ライセンス」を選択できるようになっていることや、ビデオ素材の検索結果に「4Kビデオ」が含まれること、HDと4Kの両方が用意されているビデオ素材ではどちらをかを購入するかを選択できることについても触れた。

続いて、いくつかのプレビュー画像をCreative Cloudライブラリに保存したのち、アプリケーションからのAdobe Stockの連携方法が紹介された。「ライブラリ」パネルに並ぶプレビュー画像はCreative Cloudライブラリに保存されているものが読み込まれており、ほかのデバイスからアクセスした場合にも同じプレビュー画像が表示されるということ、さらに「共同利用」も可能であることなどが紹介され、アプリのライブラリパネル内からも、Adobe Stockの素材を検索できる様子などが披露された。

さらに、iOS用モバイルアプリ「Creative Cloud」からAdobe Stockの画像を検索、ダウンロードできることや、iOS用アプリ「Adobe Comp CC」上からCreative Cloudライブラリ上の画像を読み込んで配置して作成したカンプを、「Creative Sync」によってデスクトップ版「Illustrator CC」上で開ける様子などを披露。Adobe Stockとデスクトップアプリ、あるいはモバイルアプリとの連携がより強化されたことを強調した。

○Creative Cloudの契約をやめても購入素材は使用可能

最後に再び栃谷氏が登壇し、Adobe Stockの製品ラインナップと価格について紹介された。まず栃谷氏がよく質問されるという「Creative Cloudのサブスクリプションを解約した場合、Adobe Stockで購入した画像はどうなるのか?」という件に対しての回答として、「Adobe Stockの場合はあくまでもライセンスを購入するものなので、Creative Cloudを解約した場合でもダウンロードした画像は永続的に使用できます」と説明した。

Adobe Stockのライセンス価格は、単品購入の場合は1枚 1,180円だが、Adobe Creative Cloudのメンバー(すべてのプランが対象)なら、10点の画像を3,480円/月(年間プラン、月々払い)で購入できる定額制プランを利用できる。同プランでは、11枚目からは1枚当たり348円で追加購入可能。(Creative Cloudの非メンバーは5,980円/月、追加画像は598円/枚)。ちなみに、同プランでは使用枚数が10枚に満たなかった場合、最大120枚まで繰り越せる。このほかにも、大量の素材を扱うユーザー向けに、750点の画像を2万4,980円/月(年間プラン、月々払い)、もしくは2万9,980円(月々プラン)で利用できるプランも用意されている。

また、新たに提供を開始した「拡張ライセンス」は7,980円/点、単品HDビデオは7,980円/点、単品4Kビデオは2万4,980円/点となっている。

なお、アドビ システムズは現在、Adobe Stockが1ヶ月分無料になるキャンペーンを実施している。Creative Cloud 個人版ユーザー向けには、Adobe Stock(年間プラン)を購入すると1ヶ月分(画像10点)が無料(購入後にAdobe Stockの初月料金の3,480円が自動返金)、Creative Cloud グループ版ユーザー向けには、10点画像が無料で利用可能な「Adobe Stockお試しキャンペーン」を実施しているということだ。

(早川厚志)