アニメ映画「同級生」が2月20日から公開している。キャッチコピーは「まじめに、ゆっくり、恋をしよう。」──まさにこのフレーズの通りの作品だ。

バンド活動を行う金髪天然パーマの草壁光。
優等生で知られる黒髪眼鏡の佐条利人。
2人は男子校の同級生だが、これまでほとんど接点がなかった。しかし、高校2年生の夏の放課後、草壁は佐条が合唱祭の歌を「カゲレン」しているのを見かける。佐条は音楽が苦手で、授業中にわからなくて歌えなかった部分を、1人で練習していたのだ。
「みてやろっ か
これから うた 合唱祭まで」
思わずそう口にした草壁。佐条は意外にも承諾し、2人の秘密の時間が始まる──。


男子と男子の、限りなくピュアな恋愛作品


「男子校」と書いてあるように、草壁も佐条も男。「同級生」の原作は中村明日美子の同名漫画で、2008年に発売されて以降、BL漫画のオールタイムベストとしてBL読者から愛され続けている。
では「同級生」は、BL読者だけに勧めたい作品なのか? いやいや、そんなことはありません!

草壁と佐条は、周りから「ジャンルが違う」と言われるほど正反対。本来なら属するグループ(カーストと称してもいいかもしれない)が違う相手が出会い、お互いに惹かれ合い、恋に落ちる。
「まったりゆっくりした、派手なことは起きない日常感のある作品をずっとやりたいと思っていたところに今回のお話をいただけて本当に幸運だったと思います」(中村章子/監督)
監督が語るように、何か大きな事件が起こるわけではない。
勘違いをしたり、お互いの違いにぶつかり合ったり、恋のライバルが現れたり、ネガティブが暴走してしまったり、やきもちを焼いたり、仲直りしたり……。
「ふつう」の、でも大好きな相手がいるから「特別」になる日々。恋と青春のキラキラしている部分が、映画「同級生」には詰まっている。

同性愛を扱った作品というと、「禁断」や「障害」といったイメージがあるかもしれない。そういった作品は確かに多いが、「同級生」は少し違う。2人の行く道には苦難もあるかもしれないが、作品内では強調されて描かれない。『美術手帖』BL特集で中村明日美子はこのように語っている。
「『同級生』は青春っぽいイメージが強いので、そういう(注:これからの苦難)面を描くなら別の作品で描くほうがいいという気がしています」
「『同級生』シリーズで描きたかったことは、人それぞれいろんな生き方があって、どうやって生きても得るものはあるし、失うものもあるということでしょうか。生きていくことって、幼いころは選択肢が無限にあるけど、それを一個ずつ選んで、しぼっていくことで道になる。そうやって進んで、最終的に幸せになるといいなと」
『同級生』はBL入門として勧められることが多い作品。このテーマが、BLに馴染みのない読者にも愛されやすいからだろう。映画「同級生」でもそれは同じだ。

原作者・中村明日美子の世界を完全再現した1時間


中村明日美子の絵やカラーは繊細で独特。映画「同級生」ではそれが驚くほどに再現されている。
「映像を見て驚きました。中村明日美子先生の世界に色を付けて、動かしたらまさにこうなるだろうという映像が出来上がっていましたから」(神谷浩史/草壁光役)
声の出演は、以前ドラマCDになったときと同じ布陣。作画監督や演出で活躍している中村章子が初の監督を務め、キャラクターデザインには林明美、美術監督には中村千恵子と、ベテランの女性スタッフが揃っている。音楽は押尾コータローと尾崎雄貴だ。

パンフレットの制作陣の言葉をいくつか引用したい。
「(原作は)あまりにもピュアでときめいて、すぐに章子さん(中村章子監督)に感想のメールを送りました(笑)。絵もすごく綺麗ですし、ピュアな世界観に『キュン』ときましたね。人物像や言葉のやり取りもリアルで、恋愛に行き着くまでの段階も良かったです」(中村千恵子/美術監督)
「お互いが『打算や虚飾をしない(できない)』という不器用な恋愛が、もどかしくもありつつ魅力なのだと思います。アニメの中でもその空気を、監督はじめスタッフの皆さんがとても大事に織り上げてくださってますので、ぜひ、ご自身の初恋のようにドキドキしていただければ……」(藤田亜紀子/音響監督)
「絶対いいものになるという根拠のない自信がありました。実際、フラットな気持ちで見てもらえる、まったくの青春アニメになっていると思います」(野島健児/佐条利人役)

原作をしっかり理解し、愛している制作陣が作る1時間。
草壁と佐条が目線を交わすたび(もしくは目を伏せるたび!)息を飲み、キスをしたらクネクネと悶えたくなるのを必死で抑える。ラブラブカップルの壮大なノロケを超絶クオリティで見せられ続けている気分だが、それが気持ちいい……。
スタッフロールが終わり、館内の電気がついたあと、思わず「はあ……」と息を漏らしてしまった。溜息というより、1時間「ふぁっ!」と肺に溜めていた空気をようやく外に出せたという感じだった。

甘酸っぱくきらめいている恋の幸せをおすそ分けしてもらえるような映画「同級生」。魂が洗濯されて世界に感謝したくなる。
ちなみに、原作はこのあと『卒業生』『空と原』(スピンオフ)『O.B.』と続く。この布陣で、ぜひ続編も映画化してください!

映画「同級生」オフィシャルサイト 予告編 第2段PV
原作『同級生』
(青柳美帆子)